あの子を振り向かせろ

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
漫画原作・舞台、現代、コメディ

■キャスト
勇仁(ゆうじん)
国広(くにひろ)
聡(さとし)
霧山 紗耶香(きりやま さやか)
観客1~4

■台本

教室内。

ジッと紗耶香を見ている勇仁。

勇仁「……」

聡「勇仁。なーに、紗耶香ちゃんを見てるんだ?」

勇仁「聡、何言ってるんだよ。ただ、ボーっとしてただけで、霧山さんを見てたわけじゃないよ」

聡「ほー。なるほどなるほど」

勇仁「な、なんだよ、そのジト目は?」

聡「お前さ、今まで誰かに告白したことってあるか?」

勇仁「あるわけないだろ」

聡「じゃあ、誰かと付き合ったことは?」

勇仁「……わかってて言ってるだろ?」

聡「お前さ。このままだと、お前の想いは伝わらないで終わるぞ。それでいいのか?」

勇仁「……」

聡「お前さ、失敗することばっかり考えてるけど、もっと自分に自信持った方がいいって」

勇仁「……そうは言うけど」

聡「ま、お前の人生だ。お前で決めろよ」

勇仁「……」

場面転換。

学校のコート。

紗耶香が部活でテニスをしている。

それを外からジッと見ている勇仁。

勇仁「……」

テニスで勝って、笑っている紗耶香。

勇仁「……好きです。……なんて、言えるわけないよなぁ」

場面転換。

町中で店の階段のところに座って、ボーっと行き交う人を見ている勇仁。

ふと、カップルが目に入る。

勇仁「……羨ましくないって言ったらウソだけど。……無理だよなぁ」

いきなり、ポンと肩に手が置かれる。

国広「はっはっはっは! 少年! 恋をしてるな?」

勇仁「わわわ! な、なんですか、あなたは?」

国広「私は悩める者を導く者だ! さあ、少年! 私に悩みを話すがいい!」

勇仁「いえ、いいです……」

勇仁が立ち上がり、そそくさと歩き出す。

が、がっちりと肩を掴まれる。

勇仁「ひっ!」

国広「少年。そうやってすぐ逃げていいのか? 想いは伝えないと伝わらないぞ! 少年はずっと孤独でいいのか?」

勇仁「……」

回想。

聡「お前さ。このままだと、お前の想いは伝わらないで終わるぞ。それでいいのか?」

回想終わり。

勇仁「……実は」

場面転換。

公園。

ブランコに並んで勇仁と国広が座っている。

勇仁「……というわけなんです」

国広「ふむ。なるほどなるほど」

勇仁「……」

国広「よし、告白しよう」

勇仁「話、聞いてました? 俺じゃ無理ですよ」

国広「なぜだい?」

勇仁「え? それは、俺なんて取り柄もないし、普通だし……」

国広「ふむふむ。おかしなことを言うな、少年は」

勇仁「……どういうことですか?」

国広「少年は世の中にたった一人しかいないんだぞ? なんで、それが普通なんだ? 少年はここに存在しているだけでオンリーワンだ」

勇仁「……そ、それはそうかもしれませんけど」

国広「どうやら、少年は自分に自信がないようだな」

勇仁「……人に誇れることなんてないですから」

国広「よし! ちょうど、今度の日曜に大会がある。見にきてくれ」

勇仁「大会?」

場面転換。

ボディービルの大会。

壇上では様々なマッチョがポーズを取っている。

国広もポーズを取り、そこに観客たちから歓声が上がる。

観客1「おおおおお! ナイスマッスル!」

観客2「背中が鬼の顔!」

観客3「キャー! 素敵―!」

観客4「その胸筋に抱かれたい!」

その様子を見ている勇仁。

勇仁「すごい。……モテモテだ」

場面転換。

会場の外。

国広が帰っていく人たちに挨拶している。

それを見ている勇仁。

そして、国広がやってくる。

国広「どうだい? 少年」

勇仁「すごかったです」

国広「だろう? そして、それは少年にもできることだ」

勇仁「本当ですか?」

国広「私に任せなさい!」

場面転換。

公園。

ポーズの練習をしている勇仁と国広。

勇仁「こ、こうですか?」

国広「んー。もっと、肘は、こう!」

勇仁「こうですか?」

国広「もう2センチ内側に曲げて」

場面転換。

公園。

ポーズの練習をしている勇仁と国広。

場面転換。

雨の日の公園。

ポーズの練習をしている勇仁と国広。

場面転換。

公園。

ポーズの練習をしている勇仁と国広。

ポーズを取る勇仁。

親指をグッと立てる国広。

場面転換。

教室内。

勇仁「……聡。俺、霧山さんに告白するよ」

聡「おお、ついにか」

勇仁「それでさ、聡には陰で見ててほしいんだ」

聡「おう、わかった。ま、骨は拾ってやるよ」

勇仁「大丈夫。きっと、成功するから」

聡「お前、変わったな。自信満々だな」

場面転換。

学校の裏。

立っている勇仁。

それを陰から見ている聡と国広。

聡「……」

国広「……」

聡「……おっさん、誰?」

国広「少年の師匠だ」

紗耶香がやってくる。

紗耶香「えっと、お話ってなに?」

勇仁「……霧山さん」

紗耶香「なに?」

勇仁「見て!」

勇仁がマッスルポーズを取る。

紗耶香「……」

勇仁「……俺、霧山さんのこと……」

紗耶香「ぷっ! あははははははは」

勇仁「へ?」

紗耶香「変わったポーズだね。面白ーい。あ、もう部活始まるから、行くね、バイバイ」

紗耶香が行ってしまう。

勇仁「……」

国広と聡が出てくる。

聡「勇仁……」

国広「少年……」

勇仁「聡、師匠……」

国広「少年。さっきのポーズだが、足の角度が3度内側に閉じていた」

勇仁「そっか! だからダメだったんだ」

国広「うむ! だが、いい線いってたぞ! 頑張れば完璧に身に付けられるはずだ」

勇仁「はい!」

聡「いやいやいやいや……。そうじゃないって」

勇仁「俺ならできる! そうですよね?」

国広「もちろんだ!」

勇仁「うおおお! やるぞー! 絶対に霧山さんを振り向かせてみせる!」

国広「その調子だ、少年!」

聡「……自信持ちすぎるのも問題だな」

終わり。

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