記念日

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■概要
人数:2人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、恋愛

■キャスト
結翔(ゆいと) 15歳 中学2年生
望(のぞみ) 15歳 中学2年生 結翔の彼女

■台本

結翔(N)「望ちゃんは記念日が好きだ。僕と出会った日、僕と初めてしゃべった日、僕と初めてアドレスを交換した日、僕と初めて遊びに出掛けた日、そして、僕が望ちゃんに告白した日。ぜーんぶ、望ちゃんは覚えている。だから、僕はいつも今日が何の日って聞かれると焦るのだ。……今日はなんの日だろうと」

場面転換。

夕方。

結翔と望が通学路を歩いている。

望「ねえ、結翔のクラスはもう、何するか決めたの?」

結翔「うーん。一応、案は出たんだけど、まだ決定はしてないかな」

望「あんたのクラスはいっつも、そうね。まあ、決まったら、凄い勢いで用意するんだろうけど」

結翔「はははは。そうだね。うちのクラスはいつもはズボラなのに、いざってときは団結力が凄いから」

望「羨ましいような、恐ろしいような不思議な感じね」

結翔「まあ、体育祭の時はギリギリまでどの種目に出るかとか決めなくて、ボロ負けしたからね」

望「結翔がリレーのアンカーなんて、ビックリしたわよ」

結翔「うう……。あのときのことは言わないでよ」

望「何言ってるのよ。あの日は、結翔がアンカーを走って、5人に抜かれた記念日じゃない」

結翔「そんなの記念日にしないでよー。恥ずかしいんだからさ」

望「あのね、結翔。人生って言うのは、良いことばかりじゃないの。悪いことだってあるんだから」

結翔「それはわかるけど……」

望「悪いことだって、結翔の人生の一部なの。なら、記念日にしないと」

結翔「言いたいことはわかるけどさ……。僕はあの思い出は忘れたいんだよ。記念日にしちゃったら、忘れられないよ」

望「私は嫌」

結翔「え?」

望「結翔のことは、良いことも悪いことも、ぜーんぶ、覚えていたいの。だから、リレーのアンカーで5人抜きされた記念日は取り下げないよ」

結翔「……わかったよ。恥ずかしいけど、受け入れる」

望「ふふふ。よろしい。でも、まあ、悪い思い出なんて、時間が経てばいい思い出になるものよ」

結翔「そうかなぁ……」

望「ねえ、結翔。初めて、私のスマホに電話を掛けた記念日のこと、覚えてる」

結翔「ああ……。うん、覚えてるよ。望ちゃんのお母さんが出たんだよね」

望「あれはホントに、私の失敗の記念日でもあったわ。だって、結翔がスマホで初めて会話したのが私じゃなくて、お母さんなんだもん」

結翔「僕も、あれはちょっとしたトラウマだよ」

望「でも、あの記念日のおかげで、親公認になったんだよね」

結翔「そうだったね。あの一件から望ちゃんと遠くに出掛けることも許してもらえるようになったんだった」

望「たまに、お小遣いもくれたりさ。結翔と美味しい物でも食べなさいってさ」

結翔「そう考えると、悪い記念日ってわけでもないね」

望「でしょ? そういうもんだよ、思い出ってさ」

結翔「うん。そうだね」

望「あ、そうだ。今度の土曜日なんだけど……」

結翔「土曜日……。えーと、えーと……あっ! 望ちゃんと初めて手を繋いだ記念日だね」

望「ふふふふ。覚えてたんだ! 偉い偉い」

結翔「うん。あのときは、凄いドキドキしたからね。今でも覚えてるよ」

望「そっか。……でさ、お祝い、なんかする?」

結翔「うーん、そうだなぁ。あ、じゃあ、僕、家でクッキー焼くよ」

望「ホント? やったー! 結翔のクッキー、すごい美味しいから好き!」

結翔「じゃあ、用意しておくよ」

望「ふふ。楽しみだなー」

結翔「僕も、望ちゃんの喜んでくれる顔を見るのが楽しみだよ」

望「……ねえ、結翔」

結翔「なに?」

望「今日は何の日だ?」

結翔「え? ……えーっとえーっと……」

望「……」

結翔「うーん。……ごめん。わかんない」

望「正解は、なにもなかった日です」

結翔「ええー、そんなのズルいよ。記念日じゃないんだもん」

望「そんなことないよ」

結翔「え?」

望「こうやって、結翔と並んで歩いて、普通にお話して、いつもと同じ時間を過ごした日」

結翔「……」

望「結翔と一緒にいられるだけで、私には記念日になるんだよ」

結翔「……望ちゃん」

結翔(N)「こうして僕たちはこの先も、ずっと記念日を作っていく。良いことがあった日も、悪いことがあった日も、普通の日も。僕たち2人にとっては記念日になるのだ」

終わり。

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