カラオケ勝負

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
渡瀬 詩音(わたせ しおん) 17歳 高校生
進藤 風音(しんどう かざね) 17歳 高校生
千尋(ちひろ) 17歳 高校生
真奈美(まなみ) 17歳 高校生
司会 ※年齢および性別自由
アナウンス 女性の声(年齢的には20~30歳くらい)
武美(たけみ) 32歳 主婦

■台本

ステージの上。

大勢の観客の拍手が巻き起こっている。

司会「渡瀬詩音ちゃんでした。いやあ、本当に素晴らしい歌でしたね。次は、なんと今の詩音ちゃんのお友達だそうです。それでは進藤風音ちゃん、どうぞ!」

観客たちがパチパチと拍手をする。

場面転換。

公園。

詩音と風音は8歳。

詩音「あーあ。また引き分けか―」

風音「大体、引き分けってなによ、引き分けって。ちゃんと白黒つけてのコンクールでしょ」

詩音「風音に勝って優勝したかったなぁ」

風音「こっちの台詞だから! 次は絶対に詩音に勝って優勝してやるんだから」

場面転換。

9年後。詩音と風音が17歳。

カラオケボックス。

そこには詩音と風音を含めて5人が座っている。

詩音「(歌を歌っている)~♪」

歌が終わると、みんなが拍手する。

真奈美「うわー。さすが、詩音。プロ顔負けじゃん」

詩音「へへへ」

そのとき、カラオケの採点機能が起動する。

アナウンス「あなたの今の歌は……97点です」

千尋「おおー! すごい!」

詩音「ちょっと待って! 3点マイナスはどこよ!」

アナウンス「マイナス点を画面に表示します。丸の部分が半音ズレていました」

詩音「うそー」

風音「へー。今の機械って凄いのね。こんな細かく採点してくれるなんて」

アナウンス「ありがとうございます」

風音「え? 今、返事した?」

千尋「なんか、ここのカラオケの採点システムってAIを使ってるんだってさ」

風音「ふーん。面白いじゃない。じゃあ、今度は私の番よ!」

音楽が流れ始める。

風音「(歌を歌う)~♪」

場面転換。

町中(カラオケの帰り)。

5人で歩いている。

風音「あのAI、絶対に壊れてるって」

詩音「そうだよ! 絶対、私の方がミス少なかったよね」

風音「へー、面白いこというじゃない」

詩音「なによ?」

千尋「まあまあ」

真奈美「それにしても、全部、同じ点数って、ホント、あんたたちは仲が良いわね」

詩音・風音「よくない!」

千尋「あはははは」

真奈美「けど、まあ。歌が上手いのは確かだよね。二人ともプロ、目指すの?」

詩音「え? うーん。どうだろう? 風音はどうする?」

風音「へ? あー、うん、私も深く考えてなかった。私は詩音より上って証明されれば、それでいいかな」

詩音「なによそれー!」

千尋「二人とも、そんなに歌が上手いのにもったいないなー。あ、そうだ! 今度のコンテスト出てみたら?」

詩音「コンテスト?」

千尋「そう。素人ののど自慢コンテストなんだけど、噂だと優勝者はプロからスカウトがあるらしいよ」

風音「へー」

真奈美「ちょっと、千尋! あのコンテストはダメだって」

千尋「え? ……あっ! そうだった!」

詩音「なになに? どういうこと」

千尋「あー、ごめん。忘れて」

風音「そこまで言われたら逆に気になるって」

真奈美「えーとね、そのコンテストなんだけど、たぶん、絶対王者が出てくると思う」

詩音「絶対王者?」

千尋「なんでも、10年連続、優勝してるんだってさ」

詩音「へー。面白いじゃん」

風音「だね」

千尋「ちょっと! ホント、止めなって!」

詩音「そう言われるとますます燃えるって」

風音「そうそう。その絶対王者と詩音に勝って、優勝してみせるわ」

詩音「それは、こっちの台詞!」

風音「なにをー!」

詩音「なによ」

真奈美「もう……だから言ったのに」

千尋「ごめん……」

場面転換。

カラオケボックス。詩音一人で練習している。

詩音「(歌を歌っている)~♪」

曲が終わる。

アナウンス「今の歌は……99点です」

詩音「えー、まだ、ミスってるところあるの?」

アナウンス「ここの部分が0.3秒遅かったです」

詩音「うう……。もう一回よ、もう一回!」

場面展開。

カラオケボックス。風音一人で練習している。

風音「(歌を歌っている)~♪」

曲が終わる。

アナウンス「今の歌は……99点です」

風音「うっそだー! 今のは完璧だったって」

アナウンス「ここの部分が0.3秒遅かったです」

風音「あー、もう! もう一回よ、もう一回!」

場面転換。

コンテスト会場。

観客や出場者が続々と会場に集まってきている。

詩音「ふふふ。ついにこの時が来たわね」

風音「私が詩音に勝つ日が……」

詩音「こっちの台詞!」

場面転換。

ステージ。

司会「えー、それでは第15回、のど自慢コンテストを開始いたします。なお、今回からは、前回の反省を活かして、採点にはAIを用います。これで今年こそは絶対王者の牙城を切り崩してくれると信じております」

会場から拍手が沸き上がる。

司会「それで1番の方どうぞ!」

場面転換。

ステージ上。

詩音「(歌を歌っている)~♪」

曲が終わると同時に盛大な拍手が巻き起こる。

アナウンス「今の歌は……100点です」

司会「すごい! すごい! 出ました! 100点です! 素晴らしい!」

詩音「ありがとうございました」

詩音がステージ裏に下がる。

詩音「……ふふ。勝ったわね」

風音「どうかしら?」

場面転換。

ステージ上。

風音「(歌を歌っている)~♪」

曲が終わると同時に盛大な拍手が巻き起こる。

アナウンス「今の歌は……100点です」

風音「よし!」

司会「な、な、なんと! まさかの100点が二人目です! これは……どうなるんでしょうか。とりあえずは、絶対王者の結果を見てからにしましょう」

風音と入れ替わりに武美がやってくる。

武美「ふふ。よろしくお願いしますわ」

司会「そ、それでは絶対王者に歌ってもらいましょう。どうぞ!」

曲が始まる。

武美が大きく息を吸って。

武美「(歌を歌う。その歌声は――酷い)♪」

司会「うっ! うう……」

会場から悲鳴が上がる。

司会「採点! もう出して! 点数出して!」

すると警告音がビービービーと出る。

アナウンス「システムエラー! システムエラー! ただちに歌うのをやめてください!」

武美「(酷い歌声)♪」

アナウンス「わかりました! もう、あなたの勝ちでいいです! 勝ちでいいですから! 止めてください!」

武美が歌うのを止める。

武美「ふう……」

司会「な、なんと……。例年と同じ結果になってしまいました。……今年も絶対王者の牙城は崩せませんでした!」

それをステージ裏から見ている詩音と風音。

詩音「……帰ろっか」

風音「そうだね……」

終わり。

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