夏が好き

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■概要
人数:4人
時間:5分

■ジャンル
舞台・ドラマ、現代、コメディ

■キャスト
彩人(あやと) 小学5年生
優成(ゆうせい) 小学5年生
玲央(れお) 小学5年生
母親 38歳

■台本

〇空
太陽がギラギラと輝いている。

〇木
木の辺りからセミのミーンミーンという鳴き声が聞こえている。

〇通学路
彩人と優成と玲央が歩いている。
三人ともランドセルを背負っている。

優成「あー、もう。4時なのに、まだ暑ぃ」
玲央「ホントだねー。嫌になるよ」

三人とも額から汗が流れている。

彩人「……」

歩きながら彩人がランドセルの中からタオルを出す。
そして、顔を拭く。

彩人「ふう……」
優成「相変わらず、お前は用意万端だな」
彩人「ああ、これ(タオル)? お母さんが入れてくれるんだよ」
玲央「いいなー。お前んちのおばさん。美人で優しくて、色々、用意してくれるなんて」
優成「そうだぞ。お前はめっちゃ恵まれてる! 代わって欲しいくらいだぜ」
彩人「……あー、いや。そんなにいいもんじゃないよ……」

彩人が引きつった笑顔を浮かべる。

優成「おまっ! その感じムカつく!」

優成が彩人をヘッドロックする。

彩人「いたいいたいー」

優成「贅沢を言う、頭はこれか!」

彩人の頭をギリギリと締め上げる優成。
彩人が優成の腕をパンパンと叩く。

彩人「ギブ! ギブ!」

優成がパッと手を放す。

優成「お前なぁ。自分がどれだけ恵まれてると思ってるんだよ」
彩人「は、ははは……ごめん」
玲央「あーあ。早く夏、終わんないかなー」
優成「だよなー。暑いだけで、ホントなんも良いことねーし」
彩人「そうかな? 夏は冷房もあるし、快適でいいじゃん」
玲央「それをいうなら冬だってコタツとか暖房あるだろ」
彩人「いや、それが余計に地獄なんだよ」
優成「……地獄?」
彩人「あーあ。冬になるのは嫌だなー。ずーっと夏だといいのに」
玲央「なんで、そんなに冬が嫌いなんだ?」
彩人「暑いから」
優成「……何言ってんだ、お前?」
彩人「いや、それがさ……」

回想。
〇彩人の部屋(冬)
目覚ましが鳴り、彩人が止める。

彩人「ふわー」

欠伸をしながら起き上がり、外を見る。
窓から見える人たちは冬なので、マフラーやコートなど、厚着をしている。

彩人「……(その人たちを見て)

〇リビング
パジャマ姿のままの彩人が入ってくる。

彩人「おはよー」
母親「おはよう……。って、ちょっと、何その恰好!?」
彩人「え? なにって、パジャマだけど……」
母親「もう、何やってるのよ。あんた、体弱いんだから、そんな格好じゃ風邪ひくじゃない」
彩人「そ、そんなことないって」
母親「口答えしない! この前だって、そう言って熱出したんだから!」
彩人「いや、それはお母さんが……」

母親がギロリと彩人を睨む。

彩人「ご、ごめんなさい……」

〇リビング
母親が股引きやヒートテックのシャツなど、たくさんの着る物を並べている。

彩人「お母さん。さすがに暑いって」
母親「いいから、ちゃんと着る!」
彩人「……わかったよ」

彩人が重ね着をしていく。
ドンドンとモコモコになっていく彩人。

母親「あ、そうそう。また学校で脱いだりしたらダメだからね!」
彩人「うう……」

〇通学路
モコモコの彩人が歩いている。
重ね着をし過ぎて暑い状態。

彩人「はあ、はあ、はあ……。うう、暑い」

額から汗を流している。

〇教室
授業を受けている彩人。
他の生徒は普通の格好だが、彩人だけ明らかにモコモコしている。
暑くて、意識が朦朧としている彩人。
額から汗がダラダラと吹き出している。

彩人「……うう」

ガタンと椅子から倒れ、気絶してしまう彩人。

〇彩人の部屋
ベッドで寝かされている彩人。
母親が彩人の額のタオルを代えている。

母親「もう、だから言ったじゃない。あんたは体が弱いんだから、気を付けないとって。あー、また服、買い足さなくっちゃ」
彩人「(つぶやくように)もう、勘弁して……」

回想終わり。
〇通学路

彩人「……ってわけ」
優成「そ、そうなんだ」
玲央「それは大変だな……」
彩人「それに比べて、夏は薄着ができる! なんて素晴らしいんだ!」

彩人が空に向って手を広げる。

優成「……ジュースでも奢ってやるか」
玲央「……そうだね」

終わり。

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