王子様のキス
- 2023.06.22
- ボイスドラマ(10分)
■関連シナリオ
<狼男>
■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、コメディ
■キャスト
ライアン 20歳くらい
ミーシャ 20歳くらい
母親 38歳くらい
■台本
部屋の一室。
本を読んでいるミーシャ。
そこにライアンがやってくる。
ライアン「おはよー、ミーシャ」
ミーシャ「んー(空返事)」
ライアン「何読んでるの?」
ミーシャ「白雪姫」
ライアン「へー。随分、メルヘンなの読んでるね」
ミーシャ「似合わない?」
ライアン「そそそんなこと言ってないじゃないか」
ミーシャ「ホントに?」
ライアン「ホントホント」
ミーシャ「そういえばさ、この白雪姫なんだけど、サキュバス説があるの知ってる?」
ライアン「ええっ! まさかー。そんなの聞いたことないよ」
ミーシャ「だよね。私も母さんから聞いて、ホントかなぁって思って、こうやって読み返してたわけ」
ライアン「ふーん。で? その説はどう? ありそうなの?」
ミーシャ「んー。まあ、ぶっちゃけて言うと……あると思う」
ライアン「いやいや。ないでしょ。おとぎ話に僕たちみたいなのが出てるなんておかしいよ」
ミーシャ「そうかしら?」
ライアン「え?」
ミーシャ「美女と野獣」
ライアン「ああー。確かに、あれって、元は僕の祖先の話ってあるよね」
ミーシャ「でしょ? 呪いで野獣になるなんてあり得なくない? まだ、ライカンスロープでしたって言われた方が納得できるわよ」
ライアン「……言われてみると、そうだね」
ミーシャ「で、改めて白雪姫を読み返したんだけど、結構、有力かも」
ライアン「どんなところが?」
ミーシャ「まず、白い肌」
ライアン「……ああ。なるほど」
ミーシャ「白い肌は太陽の光を浴びない、ドラキュラやサキュバスの特徴でもあるわ」
ライアン「うんうん。そうだね。確かに、太陽の光を浴びない一族はみんな、肌が白いね」
ミーシャ「あと、絶世の美女っていうのも何となく納得できるわ。サキュバスは人間の精を吸う存在よ。で、人間を誘うのに、容姿に特化してる一族なわけ」
ライアン「ああ……うん。なるほど……」
ミーシャ「なによ? なんか奥歯に詰まったような言い方ね?」
ライアン「そそそんなことないよ! ミーシャは凄い美人だと思う」
ミーシャ「ありがと。あとは、このエロい体つきにも特化してるのよね。……誰かさんが服を破りたくなるくらいに」
ライアン「……話が逸れてるよ?」
ミーシャ「あら、そうだったわね。話を戻すわ。次に、白雪姫を狩人が森で始末しようとして見逃すって話よ」
ライアン「それが何か変なの?」
ミーシャ「だってさ、娘を殺せって命令するくらいの残虐な王妃よ? そんなのにただの狩人が逆らうと思う?」
ライアン「嘘つくくらいならするんじゃない?」
ミーシャ「バレたら死刑なのに?」
ライアン「うーん……」
ミーシャ「それよりもさ、こう考えた方がしっくりこない? 殺したと思ったのに、死んでなかった」
ライアン「……あっ!」
ミーシャ「ね? 狩人は何発も白雪姫を撃ったのよ。人間なら確実に死ぬくらいにね」
ライアン「でも、サキュバスならそれじゃ死なない……」
ミーシャ「そういうこと」
ライアン「なるほど……」
ミーシャ「で、次に小人たちの家に転がり込んだところね」
ライアン「そこでも何かあるの?」
ミーシャ「だって、タダメシ食らいよ? そんなの7人全員が、養うことをサラッと了承すると思う? きっと、サキュバスの能力を使って、小人たちを骨抜きにしたのよ」
ライアン「あああー! それはわかる! やりそうだよね!」
ミーシャ「……なんで、そこだけ異常に同意するのよ?」
ライアン「あ、いや、何でもない……」
ミーシャ「極めつけはキスで目覚めるところよ」
ライアン「……それがなに?」
ミーシャ「いや、だって、キスだよ? キスで人が生き返ったりする? 変じゃない?」
ライアン「あー……。確かに言われれば変な気がする。……どうして、今まで気にしたことなかったんだろ?」
ミーシャ「それが童話の恐ろしいところよ。ごり押しってやつね。でも、このキスで目覚めるのも、白雪姫がサキュバスだとしっくりくるわ」
ライアン「なんで? ……ああっ! まさか!」
ミーシャ「そう、そのまさかよ」
ライアン「キスしたときに、王子の精を吸い取った?」
ミーシャ「正解。眠っているのをいいことに、スケベ心でお姫様にキスしようなんてするから、白雪姫がガッツリ精を吸い取ってやったんだわ、きっと」
ライアン「……そう聞くと、白雪姫って、全然ロマンチックじゃないね」
ミーシャ「……そうね。なんていうか、見方が180度変わったわ」
場面転換。
ミーシャの家。
ミーシャ「っていう話をしたのよ」
母親「ふふ。面白い解釈ね」
ミーシャ「え? お母さんも同じ考えで、白雪姫がサキュバスの説を言ってたんじゃないの?」
母親「そうねぇ。途中までは一緒ね」
ミーシャ「途中まで?」
母親「最後のキスで目を覚ますところの解釈は違うかな」
ミーシャ「お母さんの解釈は?」
母親「きっと、周りは気づいてたんじゃないかしら。白雪姫がサキュバスだってこと」
ミーシャ「え? どういうこと?」
母親「継母は置いておいて、少なくても小人たちは一緒に住んでるんだから、気づくと思うのよ」
ミーシャ「……まあ、そうね」
母親「で、白雪姫が倒れているところに王子が通りかかるわよね?」
ミーシャ「うん。それで、スケベ心でキスをしたんじゃないの?」
母親「小人たちはそれを黙って見てると思う? だって、相手は一国の王子なのよ?」
ミーシャ「……あっ! 何かあったらヤバいか……」
母親「そうよ。キスをしようものなら、精を奪われます。そう、助言したんじゃないかしら」
ミーシャ「それでも王子は白雪姫にキスをした」
母親「自分の寿命が削れてもいいと覚悟してね」
ミーシャ「……」
母親「ちなみに、小人たちはそれがわかっていたのに、誰もキスをしようとはしなかったのよね。そう考えると王子の決意は凄いと思うわ。だって、一目会っただけの女の子に、自分の寿命をあげちゃうんだもの」
ミーシャ「……また、私の中で白雪姫の見方180度変わったわ。……本当にロマンチックな話なのね、白雪姫って」
母親「ええ。そう思うわ」
終わり。
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