はりせんぼん

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■概要
人数:5人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
雄大(ゆうだい)
美蘭(みら)
正則(まさのり) 17歳
女子1~2 17歳

■台本

雄大と美蘭が4歳の頃。

雄大・美蘭「ゆーびきりげんまん、うそついたら、はりせんぼんくーわす! ゆびきった」

美蘭「じゃあ、雄大、約束だからね」

雄大「おう、わかってるって」

場面転換。

雄大が17歳になった頃。

雄大(N)「子供の頃の約束。子供というのは、無邪気に約束なんてものを、すぐにしてしまうものだ。あのとき、美蘭とした約束の内容は、どんなものだったかは思い出せない。でも一つだけ覚えていることがある。それは、その約束はちゃんと守ったことだ」

場面転換。

学校の教室。休み時間。

正則「あーあ。まーた、今年もこの時期がやってくるのか」

雄大「ん? この時期って?」

正則「おいおい。そうやって、興味ないフリするのって、逆に格好悪いぞ」

雄大「いや、マジでわからんのだが……」

正則「ヒント。今月は何月だ?」

雄大「2月……あっ!」

正則「気づいたか?」

雄大「どうせ、今年も0だって。諦めろ」

正則「うっせー!」

雄大「たかだか、チョコだろ? そんなに食いたきゃ買えばいいじゃん」

正則「お前、分かってて言ってるだろ? 女子から貰うことが重要なんだよ、女子から」

雄大「はいはい」

正則「いいよなー、お前は絶対に1個もらえるんだから」

雄大「母さんは、そういうのしないタイプだぞ」

正則「……違うって。美蘭ちゃんだよ。ったく、そうやってわかっててボケるのがまたムカつくな」

雄大「なんで、美蘭の名前が出てくるんだよ?」

正則「幼馴染なんだろ?」

雄大「はあ……。お前、幼馴染に幻想を抱き過ぎだっつーの。チョコを貰うのはおろか、ここ2年くらい話もしてねーよ」

正則「そうなのか?」

雄大「クラスも違うしな」

正則「すまん! 友よ! これで、仲良く二人で0だな」

雄大「それはそれでムカつくな」

場面転換。

学校の放課後。

玄関。

靴を履き替えている雄大。

そこに美蘭がやってくる。

美蘭「あれ? 雄大?」

雄大「……ん? ああ、美蘭か」

美蘭「今、帰り?」

雄大「まあ、見た通り」

美蘭「久しぶりに一緒に帰らない?」

雄大「……まあ、いいけど」

場面転換。

通学路。2人で歩く。

美蘭「そういえば、もうすぐバレンタインデーだね」

雄大「お前もか」

美蘭「なにが?」

雄大「あー、いや、今日、クラスのやつとその話したからさ」

美蘭「男子も、やっぱり、この時期は気になるのかー」

雄大「まあな」

美蘭「雄大は? 貰えそう?」

雄大「言わせるなよ」

美蘭「そっか……」

雄大「お前は? 誰かに渡すのか?」

美蘭「ううん。別に。チョコ作るのとか面倒くさい」

雄大「おいおい。それが女子高生のセリフか?」

美蘭「偏見―」

雄大「あー、すまんな」

美蘭「そういえばさ」

雄大「ん?」

美蘭「こうして、一緒に帰るの、久しぶりだね」

雄大「だな」

美蘭「いつまで、一緒に帰ってったっけ?」

雄大「んー。せいぜい、小学生くらいまでじゃね?」

美蘭「……思い出してきた。いつも、一緒に帰るって約束してたんだよね」

雄大「……そうだったな」

美蘭「毎日、指切りしたんだったよね」

雄大「毎回、お前はハリセンボンを食わすって脅してきたんだよな」

美蘭「ひっど。脅してないし」

雄大「いや、お前、マジで食わせようとしただろ」

美蘭「まあね」

雄大「……それが怖くて、約束しなくなったんだよなぁ」

美蘭「え? そうなの?」

雄大「……普通は怖いだろ」

美蘭「そんなもんかなぁ?」

雄大「自覚ないのが、余計怖いな」

美蘭「でもさ、今じゃ後悔してるでしょ?」

雄大「は? なんでだよ?」

美蘭「だってさ。あのまま、ずーっと私と帰ってれば、彼女出来てたかもしれないんだよ?」

雄大「お前と付き合うってか? はは。ないない」

美蘭「なによそれ。あんたなんか、私が付き合ってあげなきゃ、一生、彼女なんてできないんじゃない?」

雄大「アホか」

美蘭「なによ。現に、あんた、今、彼女いないじゃん」

雄大「あのなぁ。いないんじゃなくて、作らないだけだっつーの。本気出せば、すぐできるよ、彼女なんて」

美蘭「はいはい。わかったわかった。そうですね」

雄大「なんか、ムカつくな」

美蘭「じゃあさ、バレンタインデーの日、1個でもチョコ貰ってみてよ」

雄大「は?」

美蘭「本気出せばすぐできるんでしょ? なら、チョコの1つくらいすぐ貰えるんじゃないの?」

雄大「……」

美蘭「あー、ごめんごめん。無理なこと言っちゃったね。今のなしでいいよ」

雄大「乗った」

美蘭「え?」

雄大「チョコなんざ、すぐに貰ってみせるっつーの」

美蘭「じゃあ、指切りしよっか」

雄大「指切り?」

美蘭「小指出して」

雄大「……」

美蘭「バレンタインデーに1つ以上、チョコ、貰うってことでいいのよね?」

雄大「ああ」

美蘭「指切りげんまん、嘘付いたら、ハリセンボンくーわす。指切った」

雄大「……」

美蘭「言っておくけど、マジでやるからね」

雄大「お、おう……」

場面転換。

教室内。

女子1「いやいや。チョコくれって言われても」

雄大「なんとかお願いできないか?」

女子1「他の人に勘違いされても困るし」

雄大「そっか……」

場面転換。

女子2「あははは。無理無理。ないよ」

雄大「うっ、そ、そっか……」

場面転換。

教室内。

雄大「くそー、ダメだ。このままではハリセンボンだ」

正則「変な約束したもんだな、お前もさ」

雄大「うるさいな」

正則「けどさ、普通、飲ます、じゃないのか?」

雄大「へ? なにが?」

正則「ハリセンボン」

雄大「あれ? そうなのか?」

正則「まあ、どうでもいいけどな。それよりさ、もしかして、美蘭ちゃん、それを見越してるんじゃないのか?」

雄大「どういうことだ?」

正則「つまりはさ、お前がバレンタインデーにチョコを貰えませんでした。で、ハリセンボンだーってなったときに、美蘭ちゃんがチョコを渡すんだよ。そうすれば、約束を破ったことにならないだろ?」

雄大「な、なんでそんなことをする必要があるんだよ?」

正則「またまた。わかってるんだろ? 美蘭ちゃんの気持ち」

雄大「……」

場面転換。

インターフォンの音。ガチャリとドアが開く。

美蘭「いらっしゃい」

雄大「おう」

美蘭「で、どうだった? チョコ、もらえた?」

雄大「そ、それが……1個も貰えなかった」

美蘭「あー。ついに、約束破っちゃったかー」

雄大「……」

美蘭「じゃあ、指切り通り、やってもらうね」

雄大「え?」

美蘭「なによ?」

雄大「お前がくれるんじゃないのか?」

美蘭「はあ? んなわけないでしょ。ほら、早く中、入って。用意はできてるんだから」

雄大「……」

場面転換。

ドンとテーブルに皿が置かれる。

雄大「……これは?」

美蘭「ハリセンボン……のお刺身」

雄大「お刺身?」

美蘭「ハリセンボンは毒がないんだって。しかも食べれるんだよ」

雄大「……」

美蘭「ほら、約束なんだから食べてよ」

雄大「お、おう……」

ハリセンボンを食べる雄大。

雄大「あ、美味い……」

美蘭「私さ、思い出したんだよね」

雄大「なにが?」

美蘭「あんたと、やたらと指切りしてたでしょ?」

雄大「ああ」

美蘭「あれって、ハリセンボンは美味しいんだよ、って教えたかったんだ」

雄大「……それなら、最初から、そう言えよ。回りくどいな」

終わり。

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