はりせんぼん
- 2023.09.11
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
雄大(ゆうだい)
美蘭(みら)
正則(まさのり) 17歳
女子1~2 17歳
■台本
雄大と美蘭が4歳の頃。
雄大・美蘭「ゆーびきりげんまん、うそついたら、はりせんぼんくーわす! ゆびきった」
美蘭「じゃあ、雄大、約束だからね」
雄大「おう、わかってるって」
場面転換。
雄大が17歳になった頃。
雄大(N)「子供の頃の約束。子供というのは、無邪気に約束なんてものを、すぐにしてしまうものだ。あのとき、美蘭とした約束の内容は、どんなものだったかは思い出せない。でも一つだけ覚えていることがある。それは、その約束はちゃんと守ったことだ」
場面転換。
学校の教室。休み時間。
正則「あーあ。まーた、今年もこの時期がやってくるのか」
雄大「ん? この時期って?」
正則「おいおい。そうやって、興味ないフリするのって、逆に格好悪いぞ」
雄大「いや、マジでわからんのだが……」
正則「ヒント。今月は何月だ?」
雄大「2月……あっ!」
正則「気づいたか?」
雄大「どうせ、今年も0だって。諦めろ」
正則「うっせー!」
雄大「たかだか、チョコだろ? そんなに食いたきゃ買えばいいじゃん」
正則「お前、分かってて言ってるだろ? 女子から貰うことが重要なんだよ、女子から」
雄大「はいはい」
正則「いいよなー、お前は絶対に1個もらえるんだから」
雄大「母さんは、そういうのしないタイプだぞ」
正則「……違うって。美蘭ちゃんだよ。ったく、そうやってわかっててボケるのがまたムカつくな」
雄大「なんで、美蘭の名前が出てくるんだよ?」
正則「幼馴染なんだろ?」
雄大「はあ……。お前、幼馴染に幻想を抱き過ぎだっつーの。チョコを貰うのはおろか、ここ2年くらい話もしてねーよ」
正則「そうなのか?」
雄大「クラスも違うしな」
正則「すまん! 友よ! これで、仲良く二人で0だな」
雄大「それはそれでムカつくな」
場面転換。
学校の放課後。
玄関。
靴を履き替えている雄大。
そこに美蘭がやってくる。
美蘭「あれ? 雄大?」
雄大「……ん? ああ、美蘭か」
美蘭「今、帰り?」
雄大「まあ、見た通り」
美蘭「久しぶりに一緒に帰らない?」
雄大「……まあ、いいけど」
場面転換。
通学路。2人で歩く。
美蘭「そういえば、もうすぐバレンタインデーだね」
雄大「お前もか」
美蘭「なにが?」
雄大「あー、いや、今日、クラスのやつとその話したからさ」
美蘭「男子も、やっぱり、この時期は気になるのかー」
雄大「まあな」
美蘭「雄大は? 貰えそう?」
雄大「言わせるなよ」
美蘭「そっか……」
雄大「お前は? 誰かに渡すのか?」
美蘭「ううん。別に。チョコ作るのとか面倒くさい」
雄大「おいおい。それが女子高生のセリフか?」
美蘭「偏見―」
雄大「あー、すまんな」
美蘭「そういえばさ」
雄大「ん?」
美蘭「こうして、一緒に帰るの、久しぶりだね」
雄大「だな」
美蘭「いつまで、一緒に帰ってったっけ?」
雄大「んー。せいぜい、小学生くらいまでじゃね?」
美蘭「……思い出してきた。いつも、一緒に帰るって約束してたんだよね」
雄大「……そうだったな」
美蘭「毎日、指切りしたんだったよね」
雄大「毎回、お前はハリセンボンを食わすって脅してきたんだよな」
美蘭「ひっど。脅してないし」
雄大「いや、お前、マジで食わせようとしただろ」
美蘭「まあね」
雄大「……それが怖くて、約束しなくなったんだよなぁ」
美蘭「え? そうなの?」
雄大「……普通は怖いだろ」
美蘭「そんなもんかなぁ?」
雄大「自覚ないのが、余計怖いな」
美蘭「でもさ、今じゃ後悔してるでしょ?」
雄大「は? なんでだよ?」
美蘭「だってさ。あのまま、ずーっと私と帰ってれば、彼女出来てたかもしれないんだよ?」
雄大「お前と付き合うってか? はは。ないない」
美蘭「なによそれ。あんたなんか、私が付き合ってあげなきゃ、一生、彼女なんてできないんじゃない?」
雄大「アホか」
美蘭「なによ。現に、あんた、今、彼女いないじゃん」
雄大「あのなぁ。いないんじゃなくて、作らないだけだっつーの。本気出せば、すぐできるよ、彼女なんて」
美蘭「はいはい。わかったわかった。そうですね」
雄大「なんか、ムカつくな」
美蘭「じゃあさ、バレンタインデーの日、1個でもチョコ貰ってみてよ」
雄大「は?」
美蘭「本気出せばすぐできるんでしょ? なら、チョコの1つくらいすぐ貰えるんじゃないの?」
雄大「……」
美蘭「あー、ごめんごめん。無理なこと言っちゃったね。今のなしでいいよ」
雄大「乗った」
美蘭「え?」
雄大「チョコなんざ、すぐに貰ってみせるっつーの」
美蘭「じゃあ、指切りしよっか」
雄大「指切り?」
美蘭「小指出して」
雄大「……」
美蘭「バレンタインデーに1つ以上、チョコ、貰うってことでいいのよね?」
雄大「ああ」
美蘭「指切りげんまん、嘘付いたら、ハリセンボンくーわす。指切った」
雄大「……」
美蘭「言っておくけど、マジでやるからね」
雄大「お、おう……」
場面転換。
教室内。
女子1「いやいや。チョコくれって言われても」
雄大「なんとかお願いできないか?」
女子1「他の人に勘違いされても困るし」
雄大「そっか……」
場面転換。
女子2「あははは。無理無理。ないよ」
雄大「うっ、そ、そっか……」
場面転換。
教室内。
雄大「くそー、ダメだ。このままではハリセンボンだ」
正則「変な約束したもんだな、お前もさ」
雄大「うるさいな」
正則「けどさ、普通、飲ます、じゃないのか?」
雄大「へ? なにが?」
正則「ハリセンボン」
雄大「あれ? そうなのか?」
正則「まあ、どうでもいいけどな。それよりさ、もしかして、美蘭ちゃん、それを見越してるんじゃないのか?」
雄大「どういうことだ?」
正則「つまりはさ、お前がバレンタインデーにチョコを貰えませんでした。で、ハリセンボンだーってなったときに、美蘭ちゃんがチョコを渡すんだよ。そうすれば、約束を破ったことにならないだろ?」
雄大「な、なんでそんなことをする必要があるんだよ?」
正則「またまた。わかってるんだろ? 美蘭ちゃんの気持ち」
雄大「……」
場面転換。
インターフォンの音。ガチャリとドアが開く。
美蘭「いらっしゃい」
雄大「おう」
美蘭「で、どうだった? チョコ、もらえた?」
雄大「そ、それが……1個も貰えなかった」
美蘭「あー。ついに、約束破っちゃったかー」
雄大「……」
美蘭「じゃあ、指切り通り、やってもらうね」
雄大「え?」
美蘭「なによ?」
雄大「お前がくれるんじゃないのか?」
美蘭「はあ? んなわけないでしょ。ほら、早く中、入って。用意はできてるんだから」
雄大「……」
場面転換。
ドンとテーブルに皿が置かれる。
雄大「……これは?」
美蘭「ハリセンボン……のお刺身」
雄大「お刺身?」
美蘭「ハリセンボンは毒がないんだって。しかも食べれるんだよ」
雄大「……」
美蘭「ほら、約束なんだから食べてよ」
雄大「お、おう……」
ハリセンボンを食べる雄大。
雄大「あ、美味い……」
美蘭「私さ、思い出したんだよね」
雄大「なにが?」
美蘭「あんたと、やたらと指切りしてたでしょ?」
雄大「ああ」
美蘭「あれって、ハリセンボンは美味しいんだよ、って教えたかったんだ」
雄大「……それなら、最初から、そう言えよ。回りくどいな」
終わり。