あの子の正体は
- 2023.10.26
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
ルーク
リリーナ
ボブ
執事
■台本
ルーク(N)「僕のクラスに最近、転校してきたリリーナという、学校を休みがちな女の子がいる。色が白くて、とてもキレイで、クラスのみんなからはお嬢様みたいだと人気がある。……でも、僕は騙されない。あの子の正体を暴いて見せるんだ」
場面転換。
学校の教室。
ルークが木を削っている。
ボブ「よお、ルーク。朝から、なに作ってるんだ?」
ルーク「十字架……」
ボブ「は? お前、キリスト教だっけ?」
ルーク「うん。今日、一日だけね」
ボブ「何言ってんだ、お前」
ルーク「ねえ、ボブ。まだ、外曇ってる?」
ボブ「ん? ああ、雨が降るほどじゃないけどな」
ルーク「……じゃあ、今日は来るかも」
ボブ「なにがだ?」
ルーク「リリーナさん」
ボブ「どうだかな。リリーナさんは結構、休みがちだぞ。今日、来るとは限らないんじゃないか?」
そのとき、ガチャリと教室のドアが開く音。
リリーナ「みなさん、おはよう」
教室内がワッと盛り上がる。
ボブ「おお……。すごいな、お前。よくリリーナさんが来るの、当てられたな」
ルーク「うん。だって……」
ノートを出して、ペラペラとめくる音。
ルーク「リリーナさんは曇りの日にしか、学校に来ないんだ!」
ボブ「えー。お前、リリーナさんが来た日をメモってるのか。気持ち悪いな」
ルーク「そ、そんなんじゃないよ!」
ボブ「日付と天気ねぇ。で、それがどうしたんだよ」
ルーク「僕はある仮説を立てたんだ」
ボブ「仮説?」
ルーク「最近さ、クラスで休む人、多くない?」
ボブ「んー? まあ、言われてみるとそうだな。風邪でも流行ってるのか?」
ルーク「違うんだ。休んだ人に話を聞いたら、朝、すごい貧血の状態になったんだって」
ボブ「それが?」
ルーク「きっと、リリーナさんの仕業だ」
ボブ「はあ……。付き合いきれん」
スタスタとボブが行ってしまう。
ルーク「……絶対に尻尾を掴んで見せる」
リリーナ「……」
場面転換。
放課後の教室。
ボブ「ルーク、帰りにサッカーしてこうぜ」
ルーク「ごめん! 今日はちょっと、用事があるんだ」
ルークが走っていく。
ボブ「……なんだあいつ?」
場面転換。
道を隠れながら移動するルーク。
リリーナ「……」
ルーク「よし、まだ、リリーナさんに見つかってないな」
物陰に隠れて進むルーク。
ルーク「それにしても、クラスメイトの家の場所を教えてくれないなんて、先生もケチだよね。個人情報とかなんとか言ってたけど、そんなの関係ないと思うんだけどな」
リリーナがスタスタと歩く。
ルーク「あれ? リリーナさん、森の方へ行ったぞ」
場面転換。
森の中。砂利道を進むルーク。
前をリリーナが平然と歩いている。
ルーク「……まさか、こんなところに家があるのか?」
リリーナがピタリと立ち止まり、門を開けて入っていく。
ルーク「うわー。でっかい。お城みたいな家だな。……でも、やっぱり、僕の仮説は合ってたみたいだ。リリーナさんは……」
後ろから話しかけられる。
リリーナ「私が、なに?」
ルーク「ひゃああ!」
リリーナ「なに? 私になにか用?」
ルーク「り、リリーナさん。どうして?」
リリーナ「私の家の近くに、私がいたら変?」
ルーク「いや、今、家の方に……」
リリーナ「それより、ルークくんだっけ? こんなことして、ただで済むとは思ってないよね?」
ルーク「ううっ……。ほ、本性を現したな! これでも、くらえ!」
ルークがポケットから十字架を出す。
リリーナ「……なにそれ?」
ルーク「え? いや、その……十字架だけど」
リリーナ「私が聞きたいのは、そんなものを出して、何してるのってことなんだけど」
ルーク「なんで? なんで効かないの?」
リリーナ「効かない?」
ルーク「だ、だって、リリーナさんはバンパイアなんでしょ?」
リリーナ「……なんでそう思ったの?」
ルーク「晴れた日は絶対に学校に来ないでしょ。それに、美人で肌も白い。意外と力持ちで、牙もある。それと、コウモリを飼っているでしょ?」
リリーナ「あれ? コウモリを飼ってるの、良く知ってるわね」
ルーク「ペットショップで餌を買ってるのを見たんだ」
リリーナ「へー。……それにしても、よく、私のこと見てるのね」
ルーク「(ドキッとして)そ、それは仮説を立てるためで……」
リリーナ「ふふ。ルーク君にそこまで見られてたなんて、恥ずかしいわ」
ルーク「べ、別にやましい気持ちで見てたわけじゃないよ!」
リリーナ「私のこと、好きだとか?」
ルーク「ち、違う!」
リリーナ「あら、残念。それに、外れよ」
ルーク「なにが?」
リリーナ「まず、私が晴れの日に学校に行かないのは、そういう病気なの。肌が弱くて、日の光で火傷しちゃうのよ」
ルーク「……え?」
リリーナ「日に当たらないから、肌も白い。変じゃないでしょ?」
ルーク「言われてみれば……」
リリーナ「意外と力があるのは、家で運動してるから。学校を休んだ日は暇だから、運動するようにしてるのよ」
ルーク「じゃあ、歯は?」
リリーナ「このくらいは普通じゃない? ほら」
ルーク「うーん。そう言われると……」
リリーナ「コウモリを飼ってるのは、今、ブームなんだよ。知らないの?」
ルーク「そ、そうなの?」
リリーナ「あと、美人なのはお母さん譲りかな。写真見る?」
ルーク「う、うう……」
リリーナ「ふふ。バンパイアじゃなくて、残念だったかな?」
ルーク「……」
リリーナ「だから、この十字架も……」
ルーク「あっ!」
リリーナがルークから十字架を取り上げる。
リリーナ「ほら、この通り、効かない」
ルーク「あ……。その……疑ったりして、ごめんなさい」
リリーナ「ふふ。素直に謝れるのはいい男の証よ。あなたの血はとても綺麗そうね」
ルーク「じゃあ、僕、帰るね」
リリーナ「うん。さよなら。明日も曇りなら学校で会いましょう」
ルーク「バイバイ」
リリーナ「さようなら」
ルークが行ってしまう。
そこに執事が現れる。
執事「……リリーナ様、良いのですかな?」
リリーナ「大丈夫よ。ちゃんと信じてたみたいだし」
執事「リリーナ様、手を治療しませんと」
リリーナ「え? あ、火傷してる。あの子もやるわね」
執事「まさか、あのような子に見破られるとは」
リリーナ「意外とああいう子が敏感なのよね。それじゃ、また、転校の手続き、しておいてくれる?」
執事「はっ。かしこまりました」
終わり。