激戦の痕
- 2023.10.27
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:2人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
彩香(あやか)
匠(たくみ)
■台本
朝。通学路。
匠と彩夏が歩いている。
彩香「匠―。なにダラダラ歩いてるの。遅刻するでしょ」
匠「うるさいぞ、彩香。僕の身体はボロボロなんだ。少しは労われ」
彩香「ボロボロ? あー、ついに糖尿病にでもなった?」
匠「内臓がボロボロなわけじゃない! 筋肉痛だ、筋肉痛」
彩香「……うーん。ついに、自分の身体を支えるのすら、辛くなっちゃったのか」
匠「ちげーよ! 大体、僕はデブじゃない! ぽっちゃりだ!」
彩香「まだデブだなんて言ってないじゃない」
匠「まだって……。やっぱり、言う気満々だったってことじゃないか」
彩香「それにしても、筋肉痛だなんて、怠惰なあんたにしては珍しいわね」
匠「ふん。僕だって、戦うべきときは、戦うさ」
彩香「小学生とカードの取り合いとかしたの?」
匠「彩香……。お前とは一度、じっくり話をつけないといけなさそうだな」
彩香「子供相手にイキるのやめた方がいいよ。もう高校生なんだから、痛いだけだって」
匠「だから違うと言ってるだろうが!」
彩香「はあ……。はいはい。で、なにがあったの?」
匠「ふっふっふ。やはり気になるようだな。僕の激闘の話を聞きたいんだな?」
彩香「じゃあ、先に行くね」
匠「あ、ごめんなさい。聞いてください」
彩香「手短にね。三文字で」
匠「三文字!」
彩香「はい。終わり」
匠「昨日、俺はゲーセンに行ったんだ」
彩香「……始まっちゃったし」
匠「本当は脱衣麻雀をしたかったんだよ、僕は」
彩香「……そういうこと、堂々と女の子の前で言わないでくれる?」
匠「だが、お目当ての台は撤去されていた。はあ……。本当に、世知辛い世の中になったものだ」
彩香「今まで堂々と置いてたのが、おかしいと思うんだけどね。あそこって、親子で来る人も多いし」
匠「で、だ。せっかく来たから、違うゲームをしようと思って、店内をウロウロしてたんだ」
彩香「……早く本題に入ってくれない?」
匠「そしたら、小学生が高校生に絡まれてたんだよ」
彩香「えー……。それはちょっと引くね。あんたよりも引くわ」
匠「だから、僕が止めに入った」
彩香「うそ! あんたが?」
匠「小学生が今にも泣きそうだったからな。そこで、僕が人肌脱いだというわけだ」
彩香「やるじゃない。3ミリほど見直したわ」
匠「……それってあんまり見直してなくないか?」
彩香「で? それからどうしたの?」
匠「もちろん、僕が相手してやったのさ」
彩香「……はー。なんだ、妄想の話か」
匠「なんでだよ! 現実の話だよ、ちゃんと」
彩香「そんなわけないでしょ。それなら、なんであんたの顔がボコボコになってないのよ」
匠「……なんで、僕がやられる前提なんだよ」
彩香「当たり前でしょ。あんたの腕力は小学生1年生以下なんだから」
匠「ふざけるな! 3年生くらいはあるわ!」
彩香「とにかく、あんたが勝てるわけないのに、ボコボコになってないのがおかしいのよ」
匠「彩香。お前には黙っていたが、僕は割と強いんだぞ。この辺でも有名なんだ」
彩香「……いやいや、嘘でしょ?」
匠「ふふ。本当だ。まあ、信じられなくても無理はないだろうな」
彩香「……うん。信じられないな」
匠「で、その戦いのせいで、今日は筋肉痛ってわけだな」
彩香「……なにか証拠はないの?」
匠「そうくると思ってたぞ。……これが証拠だ!」
バッと手を広げて、彩香の前に出す。
彩香「……手がなんなのよ?」
匠「よく見ろ。ここ。中指と薬指の間のところにタコが潰れた跡があるだろ」
彩香「あー。うん。あるね。……で、これが証拠?」
匠「はー。わかってないな。いいか? レバーはこうやって中指と薬指の間に挟むんだ。こうやって、動かしてると、タコができて、それが潰れるとこうなるんだよ!」
彩香「……」
匠「どうした?」
彩香「ゲームの話かよ!」
終わり。