勉強
- 2023.10.28
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:2人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
彰(あきら)
渚(なぎさ)
■台本
彰の部屋。
問題用紙を前に、唸っている。
彰「うーん……」
そのとき、家のインターフォンが鳴る。
彰「お、来たか」
彰がスマホを手に取り、電話を掛ける。
数回のコール音の後、相手が出る。
渚の声「もしもし?」
彰「開いてるから、入ってきてくれ」
渚の声「あのねっ!」
彰はそれだけ言って、ブツっと切る。
その後、乱暴に玄関のドアが開き、階段を登ってくる音。
そして、バンとドアが開く。
渚「電話じゃなくて、ちゃんと、玄関まで出なさいよ!」
彰「面倒くさい」
渚「人を呼びだしておいて、良い度胸じゃない」
彰「なんだよ。鍵は開けておいたんだから、いいだろ」
渚「そう言う問題じゃない! てか、不用心でしょ!」
彰「じゃあ、なにか? お前にうちの合鍵を作って渡せっていうのか?」
渚「冗談! そんなの恋人みたいでキモイ」
彰「だろ? じゃあ、いいじゃねーか」
渚「私は、呼び出したんだから、あんたがちゃんと玄関まで出迎えろって言ってんの!」
彰「それより、頼みがある」
渚「……あんた、ホント、良い度胸ね」
彰「勉強を教えて欲しい」
渚「……え?」
彰「なんだよ、その顔は?」
渚「いや……。まさか、あんたの口から勉強なんて単語が出てきたのが衝撃的で……」
彰「今回ばかりは本気を出さないとな」
渚「どうしたの? まさか、先生に留年するぞって脅された?」
彰「あー、それはもう、土下座したから大丈夫だ」
渚「全然、大丈夫じゃないと思うんだけど」
彰「金がかかってるんだ」
渚「お金?」
彰「いい点取ったら、小遣いが貰えるんだよ」
渚「あー、なるほど。おばさんも考えたわね」
彰「来月、欲しいゲームが出るんだよ。ってことで頼む」
渚「うーん。動機が不純だけど、まあ、いいか。なんにしてもやる気出してるんだから、この機会を逃す手はないわね。しょうがない。ここは人肌脱いであげる」
彰「お前に脱がれても嬉しくない」
ボコっと殴る音。
渚「殴るわよ」
彰「殴ってから言うなよ!」
渚「……で? なにがわからないの?」
彰「数学なんだけど……」
ペラっと紙を渡す彰。
渚「どれどれ? ……って、なんで、手書き?」
彰「ホントはパソコンで作りたいところなんだけど、今、プリンターのインクが切れてるんだよ」
渚「ちょっと待って。そもそも、この問題って、どこから出てきたのよ?」
彰「この問題集の、ここの問題の数値だけ変えたんだ」
渚「……なんで、そんなことしてるの? 普通に、その問題集の問題、解けばいいじゃない」
彰「いや、この問題集の問題はもう全部解いてあるんだよ」
渚「……なら、数値を変えても解けるんじゃないの?」
彰「違う違う。俺じゃなくて、違うやつが解いたんだよ」
渚「ちょっと待って。意味がわからないんだけど」
彰「だから! この問題集を解いちゃったから、新しい問題を作ろうとして、数値を変えようとしたんだけど、数値を変えたら、答えがわからないから、お前を呼んだんだよ」
渚「待って待って待って! 状況が飲み込めない。ちゃんと説明して」
彰「えっと、親戚の子が、今、勉強で伸び悩んでるから教えてやって欲しいって、その親戚の親が言ってきたんだよ」
渚「なんであんたに?」
彰「その子は中学生だからな」
渚「……ああ。高校生のあんたなら、中学生の勉強を見れると思ったわけね」
彰「そうそう。そういうこと」
渚「なるほどなるほど……って、明らかにあんたの方がバカなのに、教えられるわけないでしょーがっ!」
終わり。
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