怖い話

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■概要
人数:2人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
亨(とおる)
茉莉(まり)

■台本

茉莉「ねえ、怖い話してあげようか?」

亨「急だな」

茉莉「もう、夏も終わりだし、最後ってことでどう?」

亨「そうだな。じゃあ、お願いしようかな」

茉莉「これは私が小学生のときの話」

亨「え? 実際の話なのか?」

茉莉「小学生の時に聞いた話」

亨「……」

茉莉「クラスの中に、割と貧乏な家の女の子がいたの」

亨「……もしかして、イジメられてた、とか?」

茉莉「ううん。逆に避けられてたの」

亨「それはそれで、イジメっぽいけどな」

茉莉「避けられてた理由は貧乏ということじゃなかったの」

亨「というと?」

茉莉「その子、いつも白いワンピースを着てたのよ」

亨「白いワンピースなんて、珍しくもないだろ」

茉莉「それがね、ノースリーブ型のワンピースだったのよ」

亨「……普通だろ」

茉莉「いつも、着てたの」

亨「だから、普通だろ」

茉莉「冬も」

亨「……いや、それ、怖い話じゃなくて、寒い話だろ」

茉莉「なによ!? その言い方だと、私が滑ったみたいじゃない!」

亨「滑ったんだよ。盛大に」

茉莉「まあ、ここまでは前菜よ。いわばジャブね」

亨「……別に、そういうのはいらないんだけどな」

茉莉「冬にノースリーブのワンピースを着てることもそうなんだけど、他にも避けられてる理由があったの」

亨「……なんだ?」

茉莉「そのワンピースなんだけど、いつも真っ白なの」

亨「だから、普通だろ」

茉莉「カレーうどんを食べても、雨の日に泥の道を通っても、怪我をして血が出たときも、真っ白だったのよ」

亨「……それは、なんていうか、汚れを避ける能力が高いとかじゃないのか?」

茉莉「ううん。それがね、服が汚れたのを確認した子がいるんだけど、いつの間にかその汚れがなくなってるんだってさ」

亨「いつの間にか?」

茉莉「そう。カレーが付いた時も、泥が付いた時も、血が付いたとも、気づいたら白くなってたらしいの」

亨「……すぐに洗ったとか、じゃないか?」

茉莉「それなら、服が濡れてたりするだろうし、なにより、血とかカレーとか、ちょっと洗っただけで汚れが取れると思う?」

亨「……確かに、難しいな」

茉莉「だからね、クラスの人たちは、その子が幽霊なんじゃないかって噂を始めたの」

亨「……いやいや。だって、学校のクラスメイトだろ? 昼に学校にいるなら、幽霊じゃないだろ」

茉莉「まあ、ね。考えれば、わかりそうなことだけど、小学生だからね。面白がってっていうのもあるけど、とにかく、幽霊じゃないかって噂はなかなか消えなかったの」

亨「……まさか、この話にオチがなくて、怖いとか言うんじゃないよな?」

茉莉「ああ、大丈夫。安心して。あるとき、クラスメイトの一人がその理由を突き止めたのよ」

亨「へー。なんだったんだ?」

茉莉「それはね……」

亨「……(ゴクリ)」

茉莉「同じ服を持ってたんだって」

亨「……は?」

茉莉「だから、同じノースリーブの服を持ってて、汚れたら着替えてたってわけ」

亨「なるほど……。って、あれ?」

茉莉「どうしたの?」

亨「これのどこが怖い話なんだ? どちらかというと、クイズっぽい感じじゃないか?」

茉莉「大丈夫。ちゃんとオチがあるって言ったでしょ」

亨「なんだ?」

茉莉「あのね、その子……同じ服を持ってたって言ったけど、2枚とか3枚とかじゃないのよ」

亨「……何枚なんだ?」

茉莉「100枚」

亨「……す、すごいな」

茉莉「ここで思い出して欲しいんだけど、その子の家、貧乏なのよ」

亨「……あっ!」

茉莉「貧乏なのに、同じ服を100枚買ったってこと。冬だって、そのワンピースを着てたくらいよ」

亨「……確かに怖い話だな」

茉莉「でしょ?」

終わり。

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