金縛りの夜

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■概要
人数:2人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
零士(れいじ)

■台本

零士(N)「それは寝苦しい、真夏の夜のことだった」

零士「……」

零士(N)「ふと、目を覚ました俺は、金縛りにかかっていた」

零士(N)「まったく動けん。……いや、最近、疲れているせいだよな。それか、逆に寝すぎか? 今日は10時間くらい寝てるからな。よく、金縛りは幽霊の仕業、なんて言うやつがいるけど、あれは睡眠障害の一つで、寝ているときに脳が覚醒しただけ……」

ガサガサと何かが動く音。

零士「……」

零士(N)「……なんだ? 今の音は? 俺は一人暮らしだぞ。こんな深夜になんで物音がするんだ? ……いや、気のせいか。気のせいだよな。きっと、お隣さんが出した音だ。ここ、壁薄いから」

もう一度、物音がする。

零士「……」

零士(N)「いやいやいや。待て待て。今の音、絶対、隣からじゃない。てか、すげー近くからだぞ。え? え? え? なんで? 俺、呪われるようなこと、したっけ? ……あれか? この前、肝試しに行ったときに憑いて来たのか? 待てよ。俺は残って車で寝てただろ。仕方なかったんだよ。レポート間に合わなくて、徹夜してたんだからさ。そもそも、行った方に憑りついてくれよ。なんで俺なんだよ。あれか? 心霊スポットに行ったのに、寝るなんて失礼だったか? それなら謝る。だから、憑りつくのはやめてくれ」

そのとき、エアコンからゴーっと風が吹く。

零士「……」

零士(N)「いやいやいやいや。なんで? 何で、エアコン付いているの? 俺、消したよね? てか、今日はつけてないよね? そりゃ暑いよ? でも、今月はピンチだから、節約したいんだよ。だから、付けなかったんだが」

エアコンの風の音。

零士(N)「あれか? 暑かったのか? 幽霊さんは暑がりなのか? 人のことは寒くできるけど、本人は暑いのか? ……いや、待て。まだ、幽霊の仕業と考えるのは早い。もしかすると、俺が暑くて、無意識にスイッチを押した可能性もワンチャン……」

女の声「ん……」

零士「……」

零士(N)「終わった。確実に、今の女の声だ。しかも部屋の中にいるわ。いや、マジで、なんなんだよ。くそ。こんなことなら、ちゃんと戸締りしとけばよかった。隆司に不用心だからちゃんと玄関の鍵閉めろって言われてたもんな。……今度からちゃんと閉めるから、今日のところはお引き取りください」

女の声「暑い……」

零士(N)「あー、はいはい。わかったわかった。もう少し温度下げていいから。大サービスだぞ」

ピッとボタンが押される音。

エアコンの風が強まる。

零士(N)「通じたようでなによりだ。それにしても今どきの幽霊はスゲーな。普通にポルターガイストみたいなこと、できるのか」

女の声「……喉乾いた」

零士(N)「えー……。ちょっと、図に乗ってませんかね? 今度は喉乾いたって……」

ガサガサと何かが動く音がする。

零士(N)「あああああー! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! 冷蔵庫に入っている飲み物、なんでも飲んでいいから」

足音がして、冷蔵庫が空く音。

零士(N)「ははは……。もう、なんでもありだな」

女の声「ねえ、お兄ちゃん。コーラ飲んでいい?」

零士「お前かよ!」

ガバっと起きる零士。

零士(N)「あっ、金縛り解けた」

終わり。

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