また明日

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■概要
人数:2人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
真一(しんいち)
千歳(ちとせ)

■台本

千歳「また明日ね」

真一(N)「千歳はいつも、別れるときにそう言う。じゃあね、でもなく、バイバイでもなく、また明日。俺はずっと、この意味を考えようとはしなかった」

場面転換。

病室。

ガラガラとドアが開く音。

真一「千歳」

千歳「あ、真一くん」

真一が千歳のベッドの横に椅子を置き、座る。

真一「どうだ? 具合の方は?」

千歳「うん。今日は大分、気分がいいかな」

真一「メロン買ってきたんだけど、食べれるか?」

千歳「食べるー」

真一「じゃあ、今、切るよ」

真一が立ち上がり、ガサガサと袋を漁り、メロンを出し、洗面所の方で切り始める。

千歳「気を付けてよー」

真一「だーいじょうぶだって……いてっ!」

千歳「もう! 看護師さん呼ぶ?」

真一「いや、カスっただけだから平気平気」

千歳「血は出てない?」

真一「うん。出てない」

真一がメロンを持ってくる。

真一「ほら」

千歳「うわー! なんか贅沢―」

真一「そういえば、お前、子供の頃はメロンを丸々一個、一人で食べることが夢って言ってたよな」

千歳「うん。あとはホールケーキを一人で食べることもね」

真一「手軽な夢だなぁ」

千歳「あははは。そうだね。でも、一番の夢は叶いそうにないかな」

真一「……一番の夢?」

千歳「真一くんと一緒に年をとって、おばあちゃんになること」

真一「……」

千歳「あはは。ごめん。なんか、湿っぽくなっちゃったね」

真一「……なあ、千歳」

千歳「真一くん、覚えてる?」

真一「……」

千歳「私のことは、ずーっとずーっと、覚えててほしいって」

真一「……忘れるわけないだろ」

千歳「ならよし。真一くんが私のことを覚えててくれるなら、私は思い残すことはないよ」

真一「……」

千歳「あ、そうだ。今年の結婚記念日はどうしよっか?」

真一「ん? 外出できるのか?」

千歳「いや、できないけど、病室で何かしたいなって」

真一「じゃあ、ケーキでも買ってくるよ」

千歳「えー! 10年目だよ? いつもと違うことしてよー」

真一「ははは。わかった。先生に、相談してみるよ。病室で出来そうなこと」

千歳「うん! 期待してる」

場面転換。

話し込んでいる真一と千歳。

千歳「……あれ? そろそろ、面会時間終わりだ」

真一「え? もう、そんな時間か。じゃあ、そろそろ帰るよ」

千歳「うん」

真一が立ち上がり歩き出す。

千歳「あ、真一くん」

真一「ん?」

千歳「また、明日ね」

真一「ああ。明日また来るよ」

ドアが閉まる音。

真一(N)「その日の夜。容態が急変し、千沙登はその日のうちに亡くなった……」

場面転換。

病室。

真一「う、うう……。どうして? また明日って言ったじゃないか……。うう……うおおおお!」

場面転換。

病院の屋上。

風が吹いている。

真一が歩き出し、フェンスを登る。

真一(N)「千歳がいない世界で、俺は生きていける気がしなかった。それなら、いっそ、千歳の元に……」

千歳の声「また、明日ね」

真一「あっ……」

真一(N)「俺はようやく気付くことができた。どうして、千歳が、いつもまた明日と言うのか。それは……明日会う約束だったんだ。生きて、明日を迎えるための約束。千歳がいなくなっても、俺は一人でも明日を迎えなくちゃならない。……それが、千歳との約束だ」

フェンスを降りる音。

真一「千歳。……また明日」

歩き出す音。

真一(N)「俺はこれからも生きていく。天国に行った千歳に、また明日と言うために」

終わり。

 

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