計画はちゃんと立てましょう

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■概要
人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
充(あたる) 9歳
母親 35歳
綾音(あやね) 9歳

■台本

充の部屋。
ベッドで寝転がりながら、漫画を読んでいる充。

充「あははは。最高!」

ガチャリとドアが開く音。

母親「充、漫画ばっかり読んで! 夏休みだからってダラダラし過ぎよ」
充「うるさいなぁ。今、読み始めたばっかりだよ」
母親「嘘ばっかりついて。そろそろ、宿題やっておかないと、いつもみたいに手伝ってって言っても、お母さんは手伝わないからね」
充「大丈夫だって。今回はちゃんと計画してやるから」
母親「はあ……。いつもそう言ってるじゃない」
充「今回は本気だもーん」
母親「ったく。誰に似たんだか」

ガチャリとドアが閉まる音。

充「ったく。お母さんは口うるさいんだから。今日は15日だから、まだまだ夏休みは……あああっ!」

充がガバっと起き上がり、ドタドタと壁のカレンダーを見る。

充「しまったっ! 明後日は綾音ちゃんの誕生日だった!」

すぐに机に向かい、引き出しを開けて財布を出す。

充「……残りのお小遣い、257円。……ううっ! こうなったら、最後の手段だ!」

ガシャンと机の上の貯金箱を割る。

充「えっと、いくら貯まってるかな?」

貯金箱の破片をどけて、硬貨を集めていく。

充「……58円。ええー! なんで? なんで、これだけしか貯金箱に入ってないの!? ちゃんと計画してたのに! ……って、貯金箱にお金入れた記憶ないし、当たり前か。しょうがない。こうなったら最後の手段だ!」

場面転換。
母親がリビングでテレビを見ている。
ガチャリとリビングのドアが開く音。

充「あ、あのさー、お母さん」
母親「んー? なに?」
充「なにか、手伝ってほしいことない?」
母親「なに、急に?」
充「ほら、お風呂洗ってとか、買い物行って来てとか」
母親「色々やって欲しいことあるけど、お小遣いはあげないわよ」
充「ええー! なんで!?」
母親「やっぱり。あんたねぇ。こんなときばっかり手伝うって言うなんて、調子が良すぎるのよ」
充「えー、だってぇ」
母親「そんなことより宿題やんなさい」
充「宿題やったらお小遣いくれる?」
母親「馬鹿言わないの」
充「お願い! 少しでいいから!」
母親「ダーメ!」
充「じゃあさ、来月のお小遣い、前借する!」
母親「ダメ!」
充「どうして?」
母親「子供の頃からそんなことしてたら、借金する癖が付いちゃうでしょ」
充「今回だけ! お願い!」
母親「あんたは無計画にお金を使うからよ。今度からはしっかり、計画立てて使いなさい」
充「次から! 次からそうするから、お願い! 今回だけ!」
母親「……はあ。何に使うの? それによっては考えてあげるけど」
充「明後日が、綾音ちゃんの誕生日なんだ」
母親「……はあ。そんな大切な日なのに忘れたの?」
充「ちゃんと、カレンダーには書いておいたんだよ!」
母親「それで、忘れてたら意味ないじゃない」
充「お願い! この通り!」

パンと両手を合わせてお願いする充。


母親「……誕生日プレゼントは何を買うつもりなの?」
充「え? いや、決めてない。なるべく高い物を買おうかなって思ってるけど」
母親「あんたはホント、ダメねぇ」
充「なにが?」
母親「プレゼントは値段じゃないの。どれだけ、相手のことを思ってるかが重要なのよ」
充「どういうこと?」
母親「適当に選んだものより、安くても心がこもったプレゼントの方が嬉しいものよ」
充「そうなの?」
母親「そりゃそうよ」
充「……どんなのがいいかな?」
母親「そうね……。手作りの物なんかどう? きっと他の子たちは買ったものだと思うから、目立つんじゃない?」
充「……手作りかぁ」
母親「喜ばれると思うわよ」
充「でも、今から作って間に合うかな?」
母親「少しくらい遅れてもいいわよ。逆に時期がズレるくらいの方が印象に残るかもよ」
充「……そっか。じゃあ、ブローチとか作ってみる」
母親「うん。それが良いわ。1000円上げるから、材料、買ってきなさい」
充「え? 1000円も?」
母親「……材料以外を買ってきたら、承知しないからね」
充「わ、わかってるよ……」
母親「いい? ちゃんと考えて作るのよ。計画立ててね」
充「わかってるって!」

場面転換。
お店の中。
夏休み中で賑わっている。

充「うわー。凄いな。これが手作りで作れるなんて……。手作りセットなら、僕でも作れそうだな。あとは、もっと色々、飾りを付けたいから、それも買おっと」

場面転換。
部屋で作業している充。

充「えーっと、これが、こうで……。こうかな? 真ん中には9歳の誕生日おめでとうって書いて、と」

キイとわずかにドアが開く音。

母親「ふふ。今回は真剣みたいね」

場面転換。
ガチャリとドアが開く音。

充「お母さん! 夏休みの宿題、手伝って!」
母親「もう! だから言ったじゃないのよ! 計画はどうしたのよ!」
充「ブローチ作ってたら、時間が無くなっちゃったんだよ!」
母親「嘘おっしゃい! ダラダラ寝てばっかりだったじゃない」
充「あれは休憩してたんだってば!」
母親「……それはそうと、プレゼントは完成したの?」
充「いや、まだだけど……」
母親「誕生日過ぎて、何日経ったと思ってるのよ。さすがに遅すぎるんじゃない?」
充「その分、心を込めてるんだからいいんだよ!」
母親「……あ、そう」
充「それより、宿題手伝ってよー!」
母親「ダーメ!」
充「そんなぁ」

場面転換。
充の部屋。
ブローチを作っている。

充「うーん。なんか、違うんだよな。もっと、こうして……。うーん。違うなぁ」

ガチャリとドアが開く音。

母親「あれ? 充、今日、友達の家でクリスマスパーティーするんじゃなかったの?」
充「あ、そうだった! ヤバい! 準備してないや。遅刻しちゃう」
母親「まったく。だから、ちゃんと計画立てて動きなさいって言ってるでしょ」

場面転換。
充の部屋。
ブローチを作っている。

充「なーんか、ここが納得できないなぁ」

ガチャリとドアが開く。

母親「充、なにやってるの?」
充「いや、ちょっと……」
母親「ふーん。春休みは宿題がないからって、遊びすぎちゃダメよ」
充「わかってるって」

場面転換。
充の部屋。
外からはセミの鳴き声が聞こえてくる。
ブローチを作っている充。

充「できた! ついにできたー! よし、さっそく!」

場面転換。
インターフォンを押す、充。
ガチャリとドアが開く。

綾音「あら、充君、いらっしゃい、どうしたの?」
充「綾音ちゃん、これ! 誕生日プレゼント!」
綾音「え? ……誕生日は明日だけど」
充「へ? ……あっ!」
綾音「ブローチ? もしかして、手作りかな?」
充「あ、う、うん……」
綾音「わー、すごいね。綺麗!」
充「えへへへ」
綾音「あ、でも……ここに9歳って書いてある。……明日から、私、10歳だけど……」
充「あああ! しまったぁ!」

終わり。

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