【ラジオドラマ短編シナリオ】河童らってこい!~ある夏の出来ごと~

■概要
主要人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
水谷 真也 (6) 小学生
カッパ   (?) 子供のカッパ
宮沢 美乃利(6) 真也のクラスメイト

・こちらの作品はボイスドラマ作品になっております。
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■台本

○ シーン1

真也(N)「それは暑い夏の日のことだった……僕はこの日、忘れられない体験をすることになったんだ……」

○ シーン2
通学路。
水谷真也がテクテクと歩いている。
後ろから美乃利が走ってくる。

美乃利「こらー、真也、待ちなさいよ」
真也「み、美乃利(みのり)ちゃん……」
美乃利「もう! 今日、掃除だから待っててって言ったじゃない」
真也「あー……。うん……。ごめん……」
美乃利「まあいいわ。じゃあ、はい。カバン持って」
真也「ええ? ……今日も?」
美乃利「当たり前じゃない。レディに荷物もたせたままなんて、あんた男失格よ」

美乃利が真也にカバンを渡す。

真也「うう……重い」

真也と美乃利が歩く。

美乃利「そういえばさ、そろそろだよね」
真也「え? 何が?」
美乃利「ほら、三ヶ月前に学校で植えたじゃない」
真也「美乃利ちゃん、ずっと楽しみにしてるもんね」
美乃利「うふふ。どうやって食べようかしら。真也は? どうやって食べるの?」
真也「うーん。僕は漬物にしてかなぁ」
美乃利「あんたは、相変わらずジジィっぽいわね。私はやっぱり、シンプルに焼いてかしら」

真也が深く息を吐く。

真也「うう……重いよぉ」
美乃利「あれぇ? 真也、凄い汗よ。大丈夫?」
真也「あはは。心配してくれてありがとう」
美乃利「カバン落としたら罰ゲームだからね」
真也「うう……」

真也と美乃利が歩く。

真也「(呟くように)もう限界……。(立ち止まって)あ、あの、美乃利ちゃん」
美乃利「何よ?」
真也「ぼ、僕、用事があって、こっちに行くから……その、カバンは……」
美乃利「……そっちって森しかないじゃない」
真也「うっ! いや、こっちからじゃないと行けないんだよ」
美乃利「(怪しんで)まさか、あんた、私のカバンを持ちたくないから、適当なこと言ってんじゃないわよね?」
真也「(ギクっとして)ま、まさか」
美乃利「……嘘だったら、分かってるでしょうね?」
真也「ぼ、僕が美乃利ちゃんに嘘つくわけないじゃない……」
美乃利「(ニッコリと)そう。じゃあ、また明日ね」

美乃利がカバンを受け取って走り去っていく。

真也「えっと……どうしよう。このまま帰って美乃利ちゃんに見つかったら……」

森の方に歩く真也。

真也「少し森で時間つぶして帰ろうっと」

奥まで歩いていく。
すると川の音が聞こえてくる。
川に走り寄る真也。

真也「わぁ、川だぁ。水、綺麗だなぁ」

真也(N)「すぐに帰れば良かったんだ。美乃利ちゃんに見つかっても。まだ罰ゲームの方が良かったのかもしれない。だって……僕は出会ってしまったんだ……」

横の方で、何者かが川から上がってくる。

カッパ「いやー、かなわんわぁ。水、温くて」

真也(N)「カッパに……」

〇 シーン3
川辺。
真也の方にカッパが歩いてくる。

カッパ「おう! 坊主、何見とんねん。見世物ちゃうぞ」
真也「……カッパだ」
カッパ「カッパがそない珍しいんか? ああっ?」
真也「……」
カッパ「何とか言えや!」
真也「あ……あの、こ、こんにちは」
カッパ「え? あ、どうも」

少しの沈黙。

カッパ「ちゃうわ! なんで挨拶やねん」
真也「ひっ! ごめんなさい」
カッパ「(ニヤっとして)なあ、坊主」

ペタペタと真也の方に歩いてくるカッパ。

カッパ「(真也の肩に腕を乗せて)おっちゃんな。今月、ピンチやねん」
真也「……は、はあ」
カッパ「そんでな。少ーし、お小遣い貸して欲しいんやけど」
真也「で、でも……」
カッパ「グダグダ言うとらんで早よ出せや!」
真也「は、はい。ごめんなさい」

真也がポケットから小銭を出す。

カッパ「……なんじゃい、こりゃ」
真也「ひっ! ごめんなさい」

真也が千円札を出す。

カッパ「……」
真也「本当にそれが全部です。月のお小遣いの千円……」
カッパ「……誰がこんな紙切れ出せ、言うた」
真也「え?」
カッパ「(激怒して)お前、紙食えるんか! 食うてみぃ、こら!」
真也「た、食べれません。ごめんなさい」
カッパ「変なボケはいらんから、早よ出せ」
真也「えっと、何をですか?」
カッパ「(ため息)これだから田舎者は……出せ、言うたらキュウリに決まってるやろ。常識やで」
真也「も、持ってません。……キュウリないです」
カッパ「(愕然として)……一本もか?」
真也「はい」
カッパ「なんてこっちゃ。えらい貧乏なヤツ捕まえてしもうたがな」
真也「……ごめんなさい」
カッパ「まあ、ええわ。無いもんはしゃーないしな」
真也「……ほっ」
カッパ「じゃあ、盗って来いや」
真也「え?」
カッパ「めっちゃ腹減ってん。早くな」
真也「……でも、僕」
カッパ「(叫んで)ええから、早よ行けや!」
真也「は、はい!」

走り出す真也。

カッパ「あっ、ちょい待て」
真也「……?(立ち止まる)」
カッパ「逃げようなんて考えるなよ」
真也「え?」
カッパ「もし、逃げたりしたら、皿に塩を塗るからな」
真也「皿……?」
カッパ「(ドスの効いた声で)脅しやないで」
真也「は、はい! 行ってきます!」

走っていく真也。

〇 シーン4
道を歩く真也。

真也「……どうしよう。キュウリなんて家にあるかなぁ……。あっ! そうだ、学校!」

走り出す真也。

〇 シーン5
学校の裏。ビニールハウス。
野菜が生っている所を歩く真也。

真也「えっと……これはトマトだし……こっちはヘチマかぁ。インゲン豆もあるけど、キュウリがない……」

カラスが鳴いている。

真也「……どうしよう。もうすぐ夜になっちゃう。……よし! これでなんとか誤魔化しちゃおう」

ある野菜をもいで、持っていく真也。

〇 シーン6
森の中の川。
真也が走ってくる。

真也「すいません。お待たせしました」
カッパ「遅いで!」
真也「これ、持ってきました」

バッと野菜をカッパに渡す。

カッパ「……なんやねん。これ?」
真也「キュウリです」
カッパ「嘘付け」
真也「しっ、新種なんです」
カッパ「これが……か? 色もちゃうぞ」
真也「新種ですから」
カッパ「体、青くなったりせえへんか?」
真也「美味しいですよ」
カッパ「……ほんまか。で、この一本だけか?」
真也「え、えっと、貴重だから」
カッパ「ちっ、使えんヤツやのう。ま、ええわ。じゃ、さっそく」
真也「ああ、待って」
カッパ「あん?」
真也「えっと、家で食べた方がいいですよ」
カッパ「なんでや?」
真也「家で、ゆっくり食べると美味しいです」
カッパ「そうか。じゃ、帰るわ。ほな」

川に入って泳いでいくカッパ。

真也「ふう。何とか誤魔化せた……」

真也(N)「僕はこれで終わったと思ったんだ。……でも、それは違ったんだ」

〇 シーン7
学校の帰り道。
真也と美乃利が並んで歩いている。

美乃利「ひどいと思わない? 私のを取ってくなんて……って、真也、聞いてるの?」
真也「え? な、何?」
美乃利「うわ、凄い汗。大丈夫?」
真也「美乃利ちゃん。カバンなんだけど……」
美乃利「(ニコリと)落としたら罰ゲームね」
真也「……あのね、美乃利ちゃん。僕、用事があって……」
美乃利「なあに? また?」
真也「う、うん。ごめんね。じゃあ」

真也が森の方に入っていく。

〇 シーン8
森の中。

真也「川の方に行かなきゃ、大丈夫だよね……」

その時、草むらからカッパが出てくる。

カッパ「いやー、どうも」
真也「ひっ!」
カッパ「坊ちゃん。随分と探したで」
真也「……」
カッパ「あの時は、ホンマ、すいません」
真也「え?」
カッパ「実はな、お願いがあるんやけど」
真也「な、なんですか?」
カッパ「あ、あの、また、この前の新種のキュウリを分けてくれへんやろうか?」
真也「え、あ、それはいいですけど……」
カッパ「(物凄く嬉しそうに)ホンマか? やったで!」

真也(N)「うーん。これからは、かっぱ巻きの中身はナスになるのかなあ」

おわり

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