【シナリオブログ】妖怪退治は放課後に 第2話⑤

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○ シーン 12
  和馬と千愛が立ち止まる。
  周りは、とても静かな場所。

和馬「最後にここが、昨日襲われた場所です」
千愛「全部、三階の渡り廊下付近ね」
和馬「ええ。占星クラブに行く途中で襲われてますからね。最近は、この道順です」
千愛「特に霊的に変わった場所じゃないわね。元々、ここに眠っていた妖怪に襲われたって感じでもないし……」
和馬「雫先輩にも聞いたんですけど、最近、妖怪を見たとか、襲われたって噂もないらしいです」
千愛「やっぱり、和馬くんを狙っているのね。それも、かなり用意周到だわ」
和馬「え? どうしてですか?」
千愛「和馬くんしか襲われてない。逆に言うと、和馬くん以外の生徒には、怪我をさせていないということよ。妖怪が、都合よく、和馬くんだけを襲うように仕向けるなんて、無理よ。この場所に、和馬くんしかいないから、和馬くんを襲うという構図だわ」
和馬「うーん。確かにそうですけど、ここって、今は滅多に人が通らない場所ですよ」
千愛「どういうことかしら? 特に端の方というわけではないし、南棟に向かうのに、近いわよね?」
和馬「ここって、通行規制されてるんです。職員室の上ですからね。去年、この場所で、生徒たちが、文化祭の準備をしてて、すごくうるさかったらしくて、今年はここを使うのは禁止になってるんです」
千愛「……それって、いつから?」
和馬「一週間前からです」
千愛「……さっき和馬くんは、私のところに来るのに、『最近は、この道順』と言ったわね。前は、違ったのかしら?」
和馬「少し遠回りになりますからね。でも、今は廊下が混んでて、こっちを通った方が早いんですよ。生研の特権で通れるんです」
千愛「それを知っている人物ってことね」
和馬「他の人を巻き込まないような、紳士的な人が、妖怪を使って人を襲わせるなんてこと、するんでしょうか?」
千愛「でも、実際、されているじゃない」
和馬「まぁ、そうなんですけど……って、うわっ!」
  
  和馬が何かを踏んで、尻餅をつく。

和馬「痛たた……。もう、こんなところに、危ないなぁ」
千愛「どうしたの?」
和馬「ビー玉です。それを踏んづけたみたいで……って、あれ? ガラスじゃないですね、これ。なんだろう。真珠かな……?」
千愛「瑠璃ね。昔から祭事とかによく使われる、力を持った石よ。和馬くんなら、多少霊力が光って見えるんじゃないかしら?」
和馬「あっ、ほんとうだ。確かに光ってますね。でも、なんでこんな所に落ちてるんですかね?」
千愛「……瑠璃。霊力の塊。人気のない場所」
和馬「先輩?」
千愛「ダメだわ。まだ、情報が足りない……」
和馬「何か、分ったんですか?」
千愛「妖怪をここまで、おびき寄せる方法は分ったわ。でも、活動していない妖怪を起こして、活動させる方法がわからないわ」
和馬「えっと……呼び出すことはできないんですか? あの、召喚みたいな感じで」
千愛「それが出来るのは、あくまで中級以上の妖怪よ。今回、和馬くんを襲っている妖怪は下級の妖怪ばかり。召喚に応じるほどの能力を持ってない妖怪よ」
和馬「それじゃ、妖怪の溜まり場みたいなところがあって、そこからおびき寄せるとかですかね?」
千愛「……私の話、聞いてたのかしら? そもそも活動してないのに、集まれるわけないわよね?」
和馬「すいません……」

  その時、遠くから生徒たちの悲鳴と足音が聞こえてくる。
  走ってくる集団の中に、高瀬恵蓮(16)がいる。

教諭「こらー、ここで文化祭の準備は禁止だろうがぁ!」
恵蓮「うわ、見つかったっ!」
女生徒「恵蓮、早く、こっち!」

  沢山の生徒と教諭が、和馬たちの前を通過していく。

和馬「(笑って)いますよね。禁止されてる場所で、準備とか、練習とかする生徒って」
千愛「派手な格好だったわね。劇か、なにかの練習だったのかしら」
和馬「でも、あんな格好で、集団で走ってると劇っていうより、仮想行列みたいですね」
千愛「……仮想行列? ……妖怪の溜まり場。そう……なるほど。そういうことね」
和馬「あの、どうかしたんですか?」
千愛「行くわよ、和馬くん。どうやって、妖怪を起こしているのか、分ったわ」
和馬「本当ですか」
千愛「百鬼夜行を利用したのよ」
和馬「……百鬼……夜行?」

○ シーン 13
和馬と千愛が走って来て、立ち止まる。

千愛「……やっぱり」
和馬「うわっ! なんですか、この光の道」
千愛「地脈の流れよ」
和馬「地脈……ですか?」
千愛「本来、地下には、膨大な霊的エネルギーが蓄積されているのよ。けれど、それはかなり地下深くで、地表に出てくることは少ない。でも、何かの切っ掛けで、その霊的エネルギーがこうして、浮き上がってくることはあるのよ」
和馬「それが、この光の道ってわけですか……。凄いですね」
千愛「その霊的エネルギーを食べながら、妖怪たちが道を歩く。それが、百鬼夜行よ。これだけの霊的エネルギーがあれば、かなり遠くの妖怪だって、目を覚ますわ」
和馬「それが、こんなところに出来てるなんて……。早く、消さないと。先輩、何か方法はないんですか?」
千愛「この霊力の道……自然に出来たものじゃないわね」
和馬「え?」
千愛「ここを見て」
和馬「変な記号というか……文字が書いてますね。って、これって、千愛先輩が式神を使う時に書いてるやつじゃないですか?」
千愛「正確にいうと、違うものよ。でも、これは、陰陽道の術の一つね」
和馬「どうして、こんなことを……」
千愛「決まってるわ。和馬くんを襲わせるためよ。ここを見てみて」
和馬「何ですか? 小さい、丸い窪みは?」
千愛「この大きさと、形、さっき見なかったかしら?」
和馬「あっ、瑠璃、ですね!」
千愛「あそこの壁にも窪みがあるわ」
和馬「地面から三階まで、壁を伝うように窪みがありますね」
千愛「それで、あの三階の廊下は、和馬くんが妖怪に襲われている現場よ」
和馬「瑠璃で妖怪を誘導してたんですか。なんか、ヘンゼルとグレーテルみたいですね」
千愛「さ、今日のところは帰るわよ」
和馬「ちょっと待ってください。犯人と、この光の道はどうするんですか?」
千愛「今日は、もう襲う気がないみたいね」
和馬「え? あっ! 光の道が消えていく」
千愛「……挑戦状ね。明日、準備をして来いってことよ」
和馬「どうして分るんですか?」
千愛「目の前で、こうもあっさりと、地脈を消したのよ。いや、最初から、私に気づかせるために、わざわざ地脈の道を出してたってことかしら。こうして瑠璃を使ったって、種明かしもしている」
和馬「どうするんですか?」
千愛「決まってるわ。思い知らせてあげるのよ。私に手を出したら、どうなるかってね」
和馬「……怖っ!」

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