【シナリオ】別れの季節

【シナリオ】別れの季節

蒼空(N)「三月。それは別れの季節であり、物語の終わりの季節でもある。僕たちは三年にも渡る、この長い物語に終止符を打ち、仲間たちに別れを告げるのだった」

  学校。

  チャイムの音と、遠くで、部活をする生徒の声が聞こえる。

翔太「なんだか、これで最後ってなると寂しいよな……」

千里「ちょっと、翔太! 最後は皆、笑顔で別れようって約束したじゃない。蒼空もなんとか言ってよ」

蒼空「翔太。確かに、これで終わるけど、思い出までなくなるわけじゃない」

翔太「けどよぉ……」

千里「汚っ! 鼻水出てるよ」

翔太「千里はなんとも思わないのかよ」

千里「うっ! そ、そりゃ、私だって……」

蒼空「皆で決めたんだ。やり遂げよう」

翔太「そうだな」

千里「うん!」

蒼空「……氷羊、来てくれ」

蒼空(N)「僕の呼びかけに、本から羊の姿をした妖精が現れる」

氷羊「ご主人様、お呼びですか?」

蒼空「氷羊、願いが決まった。叶えてくれるか?」

氷羊「はい、喜んで。それで、どんな願いでしょうか?」

蒼空「……能力を封印して欲しい」

氷羊「え? それは、私たち、十二星将を呼び出す力を捨てるということですか?」

蒼空「そうだ」

氷羊「……それは、翔太様も千里様も了承済みなんですか?」

翔太「ああ……」

千里「うん、皆でちゃんと話し合って決めたんだ」

氷羊「……本当にそれでいいんですか? あなた達は危険を顧みず、この街を救いました。報酬を受け取っても良いと思うのですが」

蒼空「ああ。受け取るよ。この能力を封印してもらうって報酬を」

翔太「それにさ、俺たち、そんな大層なこと、してないぜ」

千里「そうそう。逆に、戦える力を貰えて、良かったって思ってるよ」

蒼空「氷羊には感謝してる。ありがとう」

氷羊「……ご主人様」

翔太「結構、楽しかったしな」

千里「……最初は、蒼空が転校してきてさ」

翔太「不愛想だったよな」

蒼空「あ、あれは、その……緊張してたんだ」

翔太「で、その後、すぐにこの本を見つけて、氷羊に会ったんだ」

千里「あれが、始まりだったんだもんね」

蒼空「翔太が火猿に操られたときは、驚いた」

翔太「ばっ、馬鹿! 忘れてくれよ、あれは」

千里「それがきっかけで、蒼空が水獅子の能力を使えるようになったんだよね」

蒼空「その後、他の人間に能力を渡せることを知って……。二人は快く、受け取ってくれた。あれは、本当に嬉しかったよ」

翔太「まあ、あれはさ、俺の為でもあったんだよな。面白そうだったし」

千里「同感。結局、私たち、楽しかったんだよね。不謹慎だけど」

蒼空「……そうだな。確かに、危険の連続だったけど、楽しかった」

翔太「ああ……」

千里「でも、いつまでも楽しい時間は続かない。卒業しなくっちゃ」

蒼空「そういうわけだ、氷羊。能力を封印してくれ」

氷羊「……わかりました。それでは、三人で本に触れてください」

翔太「こうか?」

氷羊「はい。それでは、そのまま、そっと本を閉じてください」

翔太「よし、じゃあ、いくぜ」

蒼空「ああ」

千里「うん」

  本がパタンと閉じる音がする。

翔太「じゃあな」

蒼空「……」

千里「さよなら」

蒼空(N)「本を閉じた瞬間、僕たちの手元から本が消えた。同時に、今まで胸の奥にあった、力も消滅していくのも感じる。能力が封印されたんだろう……」

翔太「終わったな……」

蒼空「そうだな」

千里「それじゃ、帰ろっか。明日は卒業式だから、遅刻しちゃダメよ」

翔太「しねーよ」

千里「あ、帰りに丸谷よってかない?」

翔太「いいねー、打ち上げってことで、最後に大騒ぎしようぜ」

蒼空「そうだな。行こう」

千里「言っとくけど、嵌めはずし過ぎて、問題とか起こさないでよ。卒業式に停学とかシャレにならないから」

翔太「わかってるって!」

蒼空(N)「こうして、中学生活最後のカラオケは、深夜まで続いたのだった。次の日の卒業式は二人とも眠そうだったが、ちゃんと遅刻しないでやってきていた。……そして」

  駅。雑踏やアナウンスなどが聞こえてくる。

翔太「じゃあ、あっちに行っても元気でな」

千里「時々はメールしてよね」

蒼空「二人とも、元気で」

千里「まさか、三人とも別々の高校に行くことになるなんてね」

翔太「千里はどこだっけ?」

蒼空「……翔太」

翔太「あ、そうだったな」

蒼空(N)「氷羊が言っていたのは、いくら、能力を封印したからと言って、またこの三人が集まれば、再び、本が出現する可能性があるということらしい。つまり、それは、また魔王が復活することに繋がってしまう。だからこそ、僕たちは、連絡は取り合いつつも、もう会わないことを決めた。だから、他の二人には僕がどこの高校に行くかは言ってない。それは他の二人もそうだ。三人とも、それぞれ、どこの学校に行くかは知らせてない」

蒼空「じゃあ、そろそろ電車が来るし、行くよ」

翔太「じゃあな、相棒」

千里「こらこら、私をのけ者にするな。三人で仲間でしょ」

蒼空「ああ、そうだったな」

翔太「わかってるって、拗ねるなよ」

千里「キモイ! やっぱ、前言撤回。あんただけは仲間じゃない」

翔太「酷い!」

  駅の出発の音が鳴り響く。

  プシューという音と共に、ドアが閉じる音。

翔太「蒼空! もう、会えなくてもよ、俺たちはずっと仲間だからな!」

千里「私も、絶対に忘れないからね!」

  ガタンガタンと音を立てて、電車が出発する。

蒼空(N)「寂しくないと言えば、嘘になる。でも、これからは、二人に頼らずに、僕は一人で進んでいく。それが、二人に対しての、僕の恩返しだ」

  チャイムが鳴り響く。

  廊下を生徒たちがゾロゾロと歩く。

生徒1「いやー、入学式、長くてダルっ」

生徒2「にしても、今日から高校生か、なんかテンション上がるな」

蒼空「……」

  教室。

  教室内は少しザワついている。

教師「よーし、そろそろ、静かにしてくれ。俺が、お前らの担任の本橋だ。それじゃ、端から自己紹介していってくれ」

  ガラッと立ち上がる音。

蓮「……一ノ瀬蓮です」

教師「なんだよ、名前だけか? まあ、いい次」

  翔太が立ち上がる。

翔太「坂下翔太です! 定陵中から来ました!」

  同時に、二人が立ち上がる音がする。

蒼空「なっ!」

千里「うそっ! なんで?」

翔太「は!? なんで、お前らがいるんだよ!」

教師「なんだ、お前ら三人は知り合いか?」

蒼空「……」

蒼空(N)「まさか、三人とも同じ高校だったとは……。お互い、教えなかったのが逆に仇になったようだ。……これは後から知ったのだが、これは偶然ではなく、ある意味、必然だった。つまり、僕たちの高校生活は波乱に満ちたものになるのであった」

終わり