【ドラマシナリオ】譲れないもの

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〇 荒野

  5歳の男の子が怪人に捕まっている。

  男の子が泣きながら叫ぶ。

男の子「誰か、助けてー!」

  すると5人の戦隊もののヒーローが現れる。

男の子「あ、ガオレイン!」

〇 田崎家・リビング

  テレビを食い入るように見ている、田崎翔太(7)と田崎遼(5)。

  先ほどのシーンがテレビの画面に映っている。

翔太「いっけー、ガオレイン!」

  テレビの中で怪人を倒す、ガオレイン。

遼「すっごーい! ガオレイン強ぇ!」

  テレビの前で興奮して、何度もジャンプする翔太と遼。

  そこに母親がやって来る。

母親「翔太、遼! うるさい、何やってるの!」

  翔太と遼がしょんぼりとする。

遼「ごめんなさい……」

翔太「ごめんなさい……」

〇 社内

  しょんぼりとした翔太(28)。

翔太「……申し訳ありません」

部長「田崎くん、君ね。今回の契約は絶対に落とせないってわかってる?」

翔太「は、はい……」

部長「だったら、どうして、遅刻するかなぁ?」

翔太「申し訳ありません」

部長「次、遅刻したらクビ。クビだからね」

翔太「は、はい」

〇 同・田崎の席

  ドサッと席に座る翔太。

翔太「はあ……」

  隣の高坂淳(26)が話しかけてくる。

高坂「部長、ちょうど機嫌悪くて、災難でしたね、先輩」

翔太「いや、遅刻した俺が悪い」

高坂「でも、ホント、どうして遅刻したんですか? 朝、ラインで起こしチャット飛ばした時、普通に返事してたじゃないっすか」

翔太「まあ、色々あってね……」

  ため息をつく翔太。

  ふと、パソコンの横においてあるガオレインのフィギュアが目に入る。

  さらに大きくため息を吐く翔太。

〇 翔太のマンション・翔太の部屋

  タンクトップに下はジャージという姿の翔太が、腕立て伏せをしている。

  翔太の体は鍛え上げられていている。

  翔太の横にはテレビがあり、番組が映し出されている。

翔太「211、212、213……」

  腕立て伏せをする翔太。

  時間経過。

  翔太がシャドーボクシングをしている。

翔太「シッ! シッ! シッ!」

  その動きは洗練されている。

テレビのアナウンサー「続いてニュースです。本日の朝、10時頃、再び妙な仮面を付けた男が現れ……」

  そのとき、携帯が鳴る。

  動きを止めて電話を取る翔太。

翔太「もしもし? あ、結愛ちゃん。……うん。わかってる。大丈夫、ちゃんと挨拶は考えてるよ。レストランもご両親の好みに合わせたし。……う、うん。明日は遅刻しないよ」

  通話を切る、翔太。

翔太「ふう……」

  チラリとテレビの横に置いてあるガオレインのフィギアを見る翔太。

  再び、シャドーボクシングをする翔太。

〇 町中(夜)

  スーツ姿に鞄を持った翔太が歩いている。

  翔太がポケットから携帯を出して時間を見る。

  時間は7時半。

翔太「よし、余裕で間に合うな」

  ポケットに携帯をしまったとき、翔太がピタリと立ち止まる。

  路地裏の方をジッと見る、翔太。

〇 同・路地裏

  木下純一(15)が不良の5人に囲まれている。

不良1「俺たちさ、遊びに行きたいんだけど、金ないんだよね」

不良2「貸してくんない? 絶対返すからさ」

不良3「100年後に」

  ゲラゲラと笑う不良たち。

  木下が青ざめた顔をしている。

木下「あ、あの……僕もお金ないんです」

不良1「あ?」

  不良1が木下を殴ると、他の4人も殴り始める。

木下「止めてください!」

  倒れて丸まっている木下に、蹴りを入れる不良たち。

翔太の声「待て!」

不良2「あ?」

  不良たちが振り返ると、そこにはヒーローを模した仮面を被った翔太が立っている。

翔太「暴力は止せ! そして、少年に謝れ!」

不良3「あっはっは! なんだ、こいつ? 馬鹿みてぇ!」

不良2「じゃあ、お前がこいつの代わりに金払ってくれよ」

  不良を無視して、木下に駆け寄る翔太。

翔太「大丈夫か?」

木下「あ、ありがとう……」

不良1「おい、無視してんじゃねーぞ!」

  不良1が翔太に殴りかかるか、カウンターで殴り返す翔太。

不良1「ぐえっ!」

  倒れる不良1。

不良2「てめえ、ざっけんなよ!」

  四人が一斉に翔太に襲い掛かる。

  時間経過。

  不良5人が、翔太の足元で気絶している。

翔太「さ、少年。ここは私に任せて帰りなさい」

木下「あ、ありがとうございました」

  頭を下げて、走っていく木下。

翔太「さてと、俺も急がないとな」

  そのとき、路地裏に警察官がやってくる。

警察官「あ、お前は! 例の!」

翔太「やべっ!」

  走り出す翔太。

警察官「待てー!」

〇 レストラン前

  榊結愛(25)が立っている。

  そこに走ってくる翔太。

  結愛の前で立ち止まって頭を下げる翔太。

翔太「……遅れてごめん。その……」

  翔太が頭を上げると、結愛が涙を浮かべている。そして、翔太の頬を叩く。

結愛「……さよなら」

  結愛が涙をこぼしながら振り返り歩き去っていく。

翔太「……結愛ちゃん」

〇 町中(雨)

  雨の中、呆然と歩く翔太。

  ふと、街頭テレビの前で立ち止まる。

〇 テレビ画面

  アナウンサーとタレントが話している。

  パッと画面に映し出されているのは、翔太が被っていた仮面。

アナウンサー「どう思います? この仮面の男」

タレント「偽善者ですよ。弱い者を助けようって動機は良いと思うんです。でも、それを暴力で解決してしまったら本末転倒ですよ。大体、日本には警察という組織があるんです。そういう場合は警察に任せるのが筋です」

アナウンサー「確かに。この男は今、警察が暴行の疑いで指名手配していますからね。この男は犯罪者です」

〇 街中

  呆然と街頭テレビを見ている翔太。

翔太「うっ、うう……」

  ポロポロと涙を流す、翔太。

〇 公園(回想)

  雨の中、ポロポロと涙を流す翔太(7)。

翔太「うっ、うう……」

  翔太の前には、首を吊った状態の遼の姿。

翔太「うわーーーーーー!」

  崩れ落ちて泣き叫ぶ翔太。

〇 街中(回想終わり)

  街頭テレビの前から立ち去る翔太。

  その後ろ姿には悲壮感が漂う。

〇 社内

  しょんぼりとした翔太。

翔太「……申し訳ありません」

部長「田崎くん、君ね。何度言ったらわかるんだい? 言ったよね? 今度、遅刻したらクビだって」

翔太「……はい」

〇 町中

  ため息をつきながら歩く翔太。

  ふと立ち止まり、路地裏を見る。

  そこには、女の子が男たちに絡まれている。

翔太「……」

〇 公園(回想)

  翔太(7)と遼(5)が戦いごっこをしている。

遼「やっぱ、ガオレインは格好いいよね!」

翔太「僕さ、大きくなったら、絶対ヒーローになるんだ!」

遼「ええ! いいなぁ! 僕もなりたい!」

翔太「じゃあ、一緒にやろう!」

遼「うん! 約束だよ!」

〇 路地裏(回想終わり)

  女の子に絡んでいる男たち。

女の子「止めてください」

男「いいじゃねーか、ちょっとくらいよぉ」

翔太の声「いい加減にしろ!」

男「ああ?」

  男が振り返ると、そこには仮面を付けた翔太が立っている。

翔太「その子を離すんだ!」

  翔太が男たちに向かって、ビシッと指を差す。

終わり

  5歳の男の子が怪人に捕まっている。

  男の子が泣きながら叫ぶ。

男の子「誰か、助けてー!」

  すると5人の戦隊もののヒーローが現れる。

男の子「あ、ガオレイン!」

〇 田崎家・リビング

  テレビを食い入るように見ている、田崎翔太(7)と田崎遼(5)。

  先ほどのシーンがテレビの画面に映っている。

翔太「いっけー、ガオレイン!」

  テレビの中で怪人を倒す、ガオレイン。

遼「すっごーい! ガオレイン強ぇ!」

  テレビの前で興奮して、何度もジャンプする翔太と遼。

  そこに母親がやって来る。

母親「翔太、遼! うるさい、何やってるの!」

  翔太と遼がしょんぼりとする。

遼「ごめんなさい……」

翔太「ごめんなさい……」

〇 社内

  しょんぼりとした翔太(28)。

翔太「……申し訳ありません」

部長「田崎くん、君ね。今回の契約は絶対に落とせないってわかってる?」

翔太「は、はい……」

部長「だったら、どうして、遅刻するかなぁ?」

翔太「申し訳ありません」

部長「次、遅刻したらクビ。クビだからね」

翔太「は、はい」

〇 同・田崎の席

  ドサッと席に座る翔太。

翔太「はあ……」

  隣の高坂淳(26)が話しかけてくる。

高坂「部長、ちょうど機嫌悪くて、災難でしたね、先輩」

翔太「いや、遅刻した俺が悪い」

高坂「でも、ホント、どうして遅刻したんですか? 朝、ラインで起こしチャット飛ばした時、普通に返事してたじゃないっすか」

翔太「まあ、色々あってね……」

  ため息をつく翔太。

  ふと、パソコンの横においてあるガオレインのフィギュアが目に入る。

  さらに大きくため息を吐く翔太。

〇 翔太のマンション・翔太の部屋

  タンクトップに下はジャージという姿の翔太が、腕立て伏せをしている。

  翔太の体は鍛え上げられていている。

  翔太の横にはテレビがあり、番組が映し出されている。

翔太「211、212、213……」

  腕立て伏せをする翔太。

  時間経過。

  翔太がシャドーボクシングをしている。

翔太「シッ! シッ! シッ!」

  その動きは洗練されている。

テレビのアナウンサー「続いてニュースです。本日の朝、10時頃、再び妙な仮面を付けた男が現れ……」

  そのとき、携帯が鳴る。

  動きを止めて電話を取る翔太。

翔太「もしもし? あ、結愛ちゃん。……うん。わかってる。大丈夫、ちゃんと挨拶は考えてるよ。レストランもご両親の好みに合わせたし。……う、うん。明日は遅刻しないよ」

  通話を切る、翔太。

翔太「ふう……」

  チラリとテレビの横に置いてあるガオレインのフィギアを見る翔太。

  再び、シャドーボクシングをする翔太。

〇 町中(夜)

  スーツ姿に鞄を持った翔太が歩いている。

  翔太がポケットから携帯を出して時間を見る。

  時間は7時半。

翔太「よし、余裕で間に合うな」

  ポケットに携帯をしまったとき、翔太がピタリと立ち止まる。

  路地裏の方をジッと見る、翔太。

〇 同・路地裏

  木下純一(15)が不良の5人に囲まれている。

不良1「俺たちさ、遊びに行きたいんだけど、金ないんだよね」

不良2「貸してくんない? 絶対返すからさ」

不良3「100年後に」

  ゲラゲラと笑う不良たち。

  木下が青ざめた顔をしている。

木下「あ、あの……僕もお金ないんです」

不良1「あ?」

  不良1が木下を殴ると、他の4人も殴り始める。

木下「止めてください!」

  倒れて丸まっている木下に、蹴りを入れる不良たち。

翔太の声「待て!」

不良2「あ?」

  不良たちが振り返ると、そこにはヒーローを模した仮面を被った翔太が立っている。

翔太「暴力は止せ! そして、少年に謝れ!」

不良3「あっはっは! なんだ、こいつ? 馬鹿みてぇ!」

不良2「じゃあ、お前がこいつの代わりに金払ってくれよ」

  不良を無視して、木下に駆け寄る翔太。

翔太「大丈夫か?」

木下「あ、ありがとう……」

不良1「おい、無視してんじゃねーぞ!」

  不良1が翔太に殴りかかるか、カウンターで殴り返す翔太。

不良1「ぐえっ!」

  倒れる不良1。

不良2「てめえ、ざっけんなよ!」

  四人が一斉に翔太に襲い掛かる。

  時間経過。

  不良5人が、翔太の足元で気絶している。

翔太「さ、少年。ここは私に任せて帰りなさい」

木下「あ、ありがとうございました」

  頭を下げて、走っていく木下。

翔太「さてと、俺も急がないとな」

  そのとき、路地裏に警察官がやってくる。

警察官「あ、お前は! 例の!」

翔太「やべっ!」

  走り出す翔太。

警察官「待てー!」

〇 レストラン前

  榊結愛(25)が立っている。

  そこに走ってくる翔太。

  結愛の前で立ち止まって頭を下げる翔太。

翔太「……遅れてごめん。その……」

  翔太が頭を上げると、結愛が涙を浮かべている。そして、翔太の頬を叩く。

結愛「……さよなら」

  結愛が涙をこぼしながら振り返り歩き去っていく。

翔太「……結愛ちゃん」

〇 町中(雨)

  雨の中、呆然と歩く翔太。

  ふと、街頭テレビの前で立ち止まる。

〇 テレビ画面

  アナウンサーとタレントが話している。

  パッと画面に映し出されているのは、翔太が被っていた仮面。

アナウンサー「どう思います? この仮面の男」

タレント「偽善者ですよ。弱い者を助けようって動機は良いと思うんです。でも、それを暴力で解決してしまったら本末転倒ですよ。大体、日本には警察という組織があるんです。そういう場合は警察に任せるのが筋です」

アナウンサー「確かに。この男は今、警察が暴行の疑いで指名手配していますからね。この男は犯罪者です」

〇 街中

  呆然と街頭テレビを見ている翔太。

翔太「うっ、うう……」

  ポロポロと涙を流す、翔太。

〇 公園(回想)

  雨の中、ポロポロと涙を流す翔太(7)。

翔太「うっ、うう……」

  翔太の前には、首を吊った状態の遼の姿。

翔太「うわーーーーーー!」

  崩れ落ちて泣き叫ぶ翔太。

〇 街中(回想終わり)

  街頭テレビの前から立ち去る翔太。

  その後ろ姿には悲壮感が漂う。

〇 社内

  しょんぼりとした翔太。

翔太「……申し訳ありません」

部長「田崎くん、君ね。何度言ったらわかるんだい? 言ったよね? 今度、遅刻したらクビだって」

翔太「……はい」

〇 町中

  ため息をつきながら歩く翔太。

  ふと立ち止まり、路地裏を見る。

  そこには、女の子が男たちに絡まれている。

翔太「……」

〇 公園(回想)

  翔太(7)と遼(5)が戦いごっこをしている。

遼「やっぱ、ガオレインは格好いいよね!」

翔太「僕さ、大きくなったら、絶対ヒーローになるんだ!」

遼「ええ! いいなぁ! 僕もなりたい!」

翔太「じゃあ、一緒にやろう!」

遼「うん! 約束だよ!」

〇 路地裏(回想終わり)

  女の子に絡んでいる男たち。

女の子「止めてください」

男「いいじゃねーか、ちょっとくらいよぉ」

翔太の声「いい加減にしろ!」

男「ああ?」

  男が振り返ると、そこには仮面を付けた翔太が立っている。

翔太「その子を離すんだ!」

  翔太が男たちに向かって、ビシッと指を差す。

終わり

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