【アニメ用シナリオ】シルエット

【アニメ用シナリオ】シルエット
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〇 校舎前・グラウンド

  30人ほどのリュックを背負った20代の青年たちが走っている。

  全員汗だくで、辛そうな状態。

  そんな中、一人、十代のエリス・カーター(15)が、体力の限界が超えたため、倒れる。

  青年たちの集団は、そのまま走っていく。

エリス「はあ、はあ、はあ……」

  なんとか立ち上がろうとするが、力が入らず立ち上がれない。

  そこにファーガス・フィッシャー(42)が現れ、エリスを見下ろしている。

ファーガス「何をしている、エリス・カーター? 休んでもいいと言う、俺の声でも聞こえたのか?」

エリス「いえ、す、すぐに立ちます!」

ファーガス「お前の言う、すぐという時間は一秒以上も先なのか?」

エリス「うぐぐっ!」

  エリスが立ち上がろうとするが、やはり力が入らず、立ち上がれない。

ファーガス「……」

  ファーガスの影の形がグニャリと変形を始め、鎧を着た兵士のような形になる。

  そして、影が起き上がり、エリスの首を掴んで持ち上げる。

エリス「うっ……」

ファーガス「貴様に、シルエット・フォースは務まらない。諦めて帰るんだな」

エリス「じ、自分は絶対に諦めません……」

ファーガス「いつも、口だけは達者だな、エリス・カーター。だが、現実を見ろ。倒れたのはお前だけだぞ」

  ファーガスが走っている集団を見る。

ファーガス「それとも何か? 自分はまだ15歳だから、体が出来上がっていないから、仕方ないか?」

エリス「い、いえ……戦場では、年齢は関係ありません……」

ファーガス「ふふふふ……。口と志だけは一人前だな。だが、貴様が遅れを取っていることに変わりはない」

エリス「はい。その通りです……」

  エリスがファーガスの『シルエット』の腕を掴む。

ファーガス「っ!(驚いて)」

  エリスがシルエットから逃れ、地面に立つ。

  そして、再び走り始める。

ファーガス「……」

  エリスの背中をジッと見る。

〇 同(夕方)

  青年たちは座って、休んでいる。

  そんな中、エリスだけがまだグラウンドを走っている。

  その様子を見ているハーマン(24)とヒューゴ(24)。

ハーマン「……あいつ、マゾなのかなぁ?」

ヒューゴ「おいおい、まさか襲う気か? いくら野郎ばっかりの生活だからって、男に目覚めるなよ。ケツの穴が心配で、お前の近くで眠れなくなるだろ」

ハーマン「ちげーよ、アホ。結局、エリスって俺たちよりも走ってるよな」

ヒューゴ「まあ、な。途中で休んだ者はプラス10周の10キロの重り追加だからな」

ハーマン「なんだかんだ言って、俺たちの中でも、かなり体力のあるほうだよな、あいつ」

ヒューゴ「現時点で、シルエット・フォースの中でも男爵(バロン)並じゃないのか?」

ハーマン「どう見ても、逸材だよな」

ヒューゴ「どうせ、俺たちは凡人さ」

ハーマン「ファーガス教官は、エリスを潰す気なのかな?」

ヒューゴ「期待の表れなんじゃねーの?」

  エリスが戻ってきて、ハーマンたちの前で倒れ込む。

エリス「お、終わったぁ……」

ヒューゴ「お疲れさん。まだ、休憩時間は三十分あり。ゆっくり休め」

エリス「は、はい……」

  そこにファーガスがやってくる。

ファーガス「次は実践訓練に入る! 各自、相手を見つけて向かい合え!」

ハーマン「あ、あの、まだ休憩時間では……?」

ファーガス「ハーマン・ブロッサム。貴様は戦場で首にナイフを当てられたとき、敵に休憩時間だったからと説得するのか?」

ハーマン「……申し訳ありません」

  ファーガスが倒れているエリスを見下ろす。

ファーガス「エリス・カーター。お前はどうだ? 今は体力の限界だと、敵に命乞いをするのか?」

エリス「……戦場では命乞いをする前に殺されます」

  エリスが立ち上がろうとする。

  それを助け起こす、ヒューゴ。

ヒューゴ「戦場にも、仲間はいますから」

ファーガス「……」

  エリスに肩を貸し、グラウンドの中央の方へ歩き出すヒューゴ。

エリス「す、すいません、ヒューゴさん……」

ヒューゴ「しゃべるな。少しでも体力の温存をしておけ。実践訓練は、俺も協力するから、なんとか乗り切るぞ」

ファーガス「おい、エリス・カーター。貴様は俺とだ」

ヒューゴ「……え?」

〇 同

  二人一組で格闘の訓練をしている。

  その中で派手に倒れるエリス。

ファーガス「エリス・カーター。これで、貴様は俺に5回殺されている」

  ゆっくりと立ち上がって、ファーガスに向かっていくエリス。

エリス「はああ!」

  だが、ファーガスに容赦なく、殴られ、蹴られ、ボロボロにされていくエリス。

  周りの青年たちも、その様子を伺いながら、悲壮な顔をする。

〇 宿舎

  エリスが顔を腫らして寝ている。

  その様子を覗き込む、ヒューゴとハーマン。

ヒューゴ「おーい、生きてるか?」

  目を開けるエリス。

ハーマン「今日はいつにも増して、激しくやられてたな」

  起き上がるエリス。

エリス「ははっ。痛過ぎて、感覚がなくなってきて、逆に楽になってきました」

ヒューゴ「ほら、夕食のあまりだ。お前、死んでて、食べてないだろ?」

  ヒューゴがパンをエリスに渡す。

エリス「ありがとうございます」

ハーマン「なあ、エリス。このままだとお前、壊されるぞ」

エリス「……」

ヒューゴ「お前は10年に一度の逸材だと思う。別にシルエット・フォースにこだわらなくても、いいんじゃないのか?」

ハーマン「それに、シルエット・フォースは欠員が出るまで次の採用はされない。このまま待ってても、無駄になるかもしれないんだ」

ヒューゴ「お前はこんなところで、潰れていい才能じゃない。もっと活躍できる場はいくらでもあるはずだ」

エリス「僕の父親も、シルエット・フォースでした。厳しい任務でも必ず成功させて、多くの人を救っていました。そんな父を、僕は尊敬しています。僕も父のような存在になる。それが、今も変わらない夢なんです」

ヒューゴ・ハーマン「……」

  その時、ドアが開く。

青年「おい! ニュースだ! シルエット・フォースに空きができたぞ!」

  エリスたち三人が顔を見合わせる。

〇 訓練場

  訓練兵の青年たちが集まっている。

ハーマン「欠員が出たってことは、死人か再起不能者が出たってこと……」

ヒューゴ「皮肉なもんだよな。国の英雄であるシルエット・フォースのメンバーの死を、俺たちは望んでるんだ。今後、仲間になる人たちの死を」

エリス「……」

  そこにファーガスが入ってくる。

ファーガス「これから、シルエット・フォースの選抜試験を始める。まずはエリス・カーター。お前だ。来い」

エリス「はい!」

〇 訓練場・第二演武場

  演武場にはファーガスとエリスしかない。

ファーガス「試験を始める前に、お前に言っておくことがある」

エリス「……」

ファーガス「お前の父、ジェイクとは同期だった。俺はいつもあいつと比べられたよ。天才であるあいつとな。……俺はいつも、劣等感に苛まれていたよ。だが、あいつはそんな俺に気づかず、いつも俺を助け、庇ってくれていた」

エリス「……」

ファーガス「正直に言う。俺はジェイクのことを嫌いだった。いや、憎んでいたと言ってもいいだろう。そして、同様の感情を貴様にも抱いている」

エリス「……」

ファーガス「さて、前置きは以上だ。試験を始める」

  ファーガスの影が変形し、鎧を着た兵士の形になり、ファーガスに寄り添う。

  エリスの影も変形を始め、まるで悪魔のようなシルエットになる。

ファーガス「やはり、貴様もそのシルエットを継承していたか……。いいだろう、来い」

〇 同

  エリスが大の字になって倒れている。

ファーガス「なあ、エリス。貴様、なぜシルエット・フォースにこだわる? もっと違う部隊でも十分活躍できる素質はある」

エリス「僕は、父のようになるのが夢です。これだけは諦めることができません」

ファーガス「ふっ(笑って)。貴様は本当に父親に似ているな。人の意見を全く聞かない」

エリス「……」

ファーガス「……今回、欠員が出たメンバーだがな、俺が育てた奴だった」

エリス「……」

ファーガス「お前ほどではなかったが、素質があり、努力家で真っ直ぐで、なにより諦めの悪い奴だった」

エリス「……」

ファーガス「あいつなら、きっと立派なシルエット・フォースになれると思っていた。俺は時期早々とは思ったが、推薦したんだ」

エリス「……」

ファーガス「だが、あいつは死んだ。20歳と言う若さでな」

エリス「……」

ファーガス「今は後悔してるよ。あいつをシルエット・フォースに推薦するんじゃなかったってな。……なあ、エリス。もう一度聞く。お前はシルエット・フォースでなくても、十分、活躍できる。他の隊に……」

エリス「僕の夢は父のような立派なシルエット・フォースになることです」

ファーガス「愚問だったか。もう一つだけ、昔話をさせてくれ。俺はあるとき、お前の父にこう言ったんだ。お前のことはずっと目障りだったってな」

エリス「……父はなんて返したんですか?」

ファーガス「それじゃ、次に会ったときに一発殴らせてやる」

エリス「父らしいですね」

ファーガス「もちろん、俺はその話に乗った。俺はずっと楽しみにしてたよ。あいつを殴る為に、多くの死線を潜り抜けてきた」

エリス「……」

ファーガス「だが、あいつのほうは約束を守らなかった。あいつは死んでしまった」

エリス「……」

ファーガス「なあ、エリス。俺が憎いか?」

エリス「いえ」

ファーガス「ふむ。だが、俺はお前たち親子が憎い。私情でお前を殴ったことも多々ある」

エリス「……」

ファーガス「お前が俺を憎んでいなくても、俺自身、俺を許せそうにない。こんな私情にまみれた自分をな」

エリス「……」

ファーガス「だから、強くなったら戻ってきて、俺を叩きのめせ。そうしたら、やっと貴様ら親子から解放される」

エリス「……」

ファーガス「言っておくが、シルエット・フォースは過酷だ。俺のしごきなど比ではない」

エリス「……教官?」

ファーガス「行ってこい。そして生き延びて、強くなって来い」

  ファーガスはエリスに背を向け、歩き出す。

ファーガス「卒業だ、エリス・カーター。……死ぬんじゃないぞ」

  エリスが起き上がり、頭を下げる。

エリス「ありがとう、ございました」

終わり

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