不思議な館の亜梨珠 隣の芝生

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■概要
人数:1人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代ファンタジー、シリアス

■キャスト
亜梨珠(ありす)

■台本

亜梨珠「いらっしゃいませ。アリスの不思議な館へようこそ」

亜梨珠「あら? 元気がなさそうだけど、何かあったのかしら?」

亜梨珠「……なるほどね。買った宝くじを落としてしまったの」

亜梨珠「でも、当たりとは限らないのでしょう?」

亜梨珠「……え? もし、当たっていて、それを誰かに拾われたと思うと、悔しい?」

亜梨珠「まあ、その気持ちもわかるわ」

亜梨珠「そういえば、こういう話を知っているかしら?」

亜梨珠「10万円をもらえる代わりに、自分が嫌いな相手にも10万円が支払われるのと、5万円しか貰えなくても、嫌いな人には一切、支払われないというルールで、どちらかを選ばなければならないとしたら、あなたなら、どちらにするの?」

亜梨珠「日本人は、後者を選ぶことが多いそうよ」

亜梨珠「相手が得をすることが、自分にとって損に感じるらしいの」

亜梨珠「欧米だと、逆らしいわよ」

亜梨珠「……ただ、どちらが正しいというものではないから、そこまで気にしなくてよいのだけれどね」

亜梨珠「似たような話で、隣の芝生は青いという言葉があるわ」

亜梨珠「自分の家よりも、他の家の芝生の方が良いものに見えるというものね」

亜梨珠「これは嫉妬も混じっているのじゃないかしらね」

亜梨珠「……ふふ。この話に関連した話を思い出したわ」

亜梨珠「今日はその話をしようかしら」

亜梨珠「それはある、小さな村にある孤児院でのお話」

亜梨珠「その孤児院では多くの子供が生活していたわ」

亜梨珠「子供たちが多いということで、施設での生活は結構、苦しかったみたいね」

亜梨珠「それでも、子供たちは幸せに暮らしていたの」

亜梨珠「でも、そんなある日、隣町にある孤児院が子供の募集をしたらしいわ」

亜梨珠「つまりは、施設を移ることができるというわけね」

亜梨珠「施設の責任者は子供たち自身に選ばせることにしたわ」

亜梨珠「残るか、新しいところへ行くか……」

亜梨珠「もし、あなたが同じ状況だったとしたら、どうするかしら?」

亜梨珠「結局、施設の子供たちの大半は、新しいところへ移ったみたいね」

亜梨珠「……え? 移ったのと、残ったので、どちらが正解だったか、って?」

亜梨珠「さっきも言ったけれど、どちらが正解ということはないわ」

亜梨珠「新しい施設の方には、子供たちが多く集まったことで、元の施設と同じくらい、生活は苦しくなったみたい」

亜梨珠「でも、逆に元の施設は、子供が減った分、前よりも生活は少しだけ楽になったらしいわ」

亜梨珠「……え? それなら残った方が正解だったんじゃないか、って?」

亜梨珠「そんなことないわ。新しい施設の方は建物が新しく、部屋や日用品も新品同様だったみたいね」

亜梨珠「つまり、総合的に見ても、同じくらいだったというわけよ」

亜梨珠「隣の庭の芝生は、自分の家の芝生と同じだった、ってことね」

亜梨珠「……今回の話は、結局、何が言いたかったか、わかるかしら?」

亜梨珠「……他人の家も、自分の家も、そう変わらない。確かに、そういうこともあるわ」

亜梨珠「でもね、私が一番言いたいことは違うの」

亜梨珠「……私が言いたいのは、適当に選んではダメ、ということよ」

亜梨珠「……ふふ。どういうことか、わからないって顔をしているわね」

亜梨珠「新しい施設に行くか、今の施設に残るか……。あなたならどちらかを選ぶ際、勘や運に頼ろうとしないかしら?」

亜梨珠「……結局は、行ってみないとどうなるかわからない?」

亜梨珠「いいえ。そんなことはないわ」

亜梨珠「だって、一度、新しい施設に行って、話を聞けばいいのじゃないかしら?」

亜梨珠「つまり、隣の家の芝生が青いかどうかは、実際に見に行けばわかることよね?」

亜梨珠「ふふっ。そんなのズルいって顔ね」

亜梨珠「でも、何かを選ぶときは、勘や運に頼るのではなく、ちゃんと情報収集することをお勧めするわ」

亜梨珠「ふふっ。今日はこれで、お話は終わりよ」

亜梨珠「また来てね。さよなら」

終わり。

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