【声劇台本】ザイオンス効果

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■関連シナリオ
<いきなりラストバトル7話>

■概要
人数:3人
時間:10分程度

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
悠生(ゆうき)
宇賀神 響子(うかがみ きょうこ)
恭太(きょうた)

■台本

悠生(N)「恋。誰しもが恋の奴隷であり、恋に振り回される。そう、俺は今、恋をしている。その相手とは……」

響子「ほーっほっほっほ」

悠生(N)「彼女の名前は宇賀神響子。宇賀神グループの令嬢だ。容姿端麗。勉強もスポーツも万能にこなす。何より体がえろ……プロポーションも抜群。割と完璧な人なのだが、学校内ではあまり人気がない……というより、嫌っている人が多い。というのも」

廊下をツカツカと歩く響子。

響子「愚民たち、道を開けるんですのよ!」

悠生(N)「性格が悪いというのが彼女に対する評価なのである。金持ちということを鼻にかけているというのだ。だが、俺は……」

響子がピタっと立ち止まる。

響子「……何をしてますの? そこをどきなさい、と言ってますのよ」
悠生「……」

悠生(N)「ああ、最高だ。人を本気でゴミのように見る、あの冷ややかな目。この目ができる人はそうそういない。どうしても、少しは相手に対しての遠慮の色が混じってしまう。混じりっ気のない、侮蔑の色を出せるのはこの人くらいしかいない。俺はこの目を見た瞬間、ひとめぼれしてしまったんだ」

パンと頬を叩く音。

悠生「いて……」
響子「目を覚ましました? では、そこをおどきなさい」
悠生「あ、ああ……」
響子「ふん!」

ツカツカと歩き去っていく響子。

悠生(N)「最高の女性だ。是非とも、恋人同士になりたい。……しかし、どうしたものか」

場面転換。
昼休みの教室。

恭太「悠生ってさ。変態だよな」
悠生「なんだよ、今更」
恭太「いや、普通さ、宇賀神響子は避けるだろ」
悠生「俺は普通じゃねーからいいんだよ」
恭太「はあー。自覚のある変態って、タチ悪いよな」
悠生「いいから、恭太はどうすれば、俺と響子さんがお近づきになれるか考えてくれよ」
恭太「はいはい。まあ、とにかく、まずは悠生の存在を知ってもらうとこからスタートだろ」
悠生「どういうことだ?」
恭太「まずは宇賀神響子と話せってこと」
悠生「なんだ。そんなことか。なら、今朝も話したばっかりだぜ」
恭太「……廊下での一件だろ? あんなのは話したことになんねーよ」
悠生「そうなのか? まあ、いいや。話せばいいんだろ? そんなの簡単じゃん」
恭太「いや、難しいと思うぞ」

場面転換。
チャイムが鳴り響く。
ツカツカと響子が廊下を歩いている。

悠生「響子さん、ちょっといいかな?」
響子「……」

ツカツカと歩き続ける響子。

悠生「響子さん?」
響子「……」
悠生「響子さん!」
響子「……」

ツカツカと歩き去っていく。

悠生「マジかよ……。振り向いてもくれなかったぞ」
恭太「だから言っただろ。宇賀神響子が口を開くのは、自分から話しかけるときだけだ。聞いた話によると、愚民が自分に話しかけられるわけがないと思ってるようだぞ。だから、そもそもお前の声が耳に入っていないというより、意識に入ってないってわけだな」
悠生「……なら、どうする?」
恭太「多少、強引な手を使うしかねーだろうな」
悠生「よし……」

場面転換。
ツカツカと歩く響子。

悠生「響子さん、ちょっと待った!」
響子「邪魔ですわ。どきなさい」
悠生「はあ、はあ、はあ……。その目、いい……。じゃなくって! 俺と話をしよう」
響子「嫌ですわ。どきなさい」
悠生「少しだけでいいから、頼む!」
響子「なぜ、知らない愚民とわたくしが話をしないといけないんですの?」
悠生「いや、知らないって……。同じクラスの日下悠生だよ」
響子「知らないですわ。どきなさい」
悠生「……」
響子「ふん」

ツカツカと歩き去っていく響子。

悠生「とりつく島もない……」
恭介「悠生。本気なら諦めるな。とにかく、話しかけまくれ」
悠生「けど、それ効果あるのか?」
恭太「ザイオンス効果というのがある」
悠生「なんだ、それ?」
恭太「同じ人や物に接する回数が多いほど、好印象を持つようになる効果のことだ。同じコマーシャルを見るうちに、その商品が気になるみたいな感じだ」
悠生「おお! なるほど! よし、頑張るぞ!」

場面転換。
悠生「響子さん!」
響子「どきなさい」

場面転換。
悠生「響子さん、今日はいい天気だね」
響子「どきなさい」

場面転換。
悠生「響子さん、今日の数学の授業なんだけど」
響子「どきなさい」

場面転換。
悠生「響子さん、駅前に新しいお店ができたんだけど」
響子「どきなさい」

場面転換。
悠生「響子さん、今日、隣の犬がさ」
響子「どきなさい」

場面転換。
悠生「響子さん、今日、昼飯、一緒に食べない?」
響子「どきなさい」

場面転換。
悠生「響子さん、明日、デートしよう!」
響子「どきなさい」

場面転換。
悠生「どうだ、恭太。大分、好印象を持ってもらえたんじゃないか?」
恭太「お前、すげーよ。よく心折れないな」
悠生「そろそろ、次のステージに進むべきじゃないか?」
恭太「いや……微塵も状況が進んでねーよ……」

場面転換。
悠生「響子さん、今日の放課後なんだけど……あっ! 危ない!」

悠生が響子をドンと押す。

響子「きゃあ!」

響子が倒れたと同時に、物が落ちてくる音。

悠生「響子さん、大丈夫!? 危なかったね」
響子「……また、あなたですの? よくもわたくしを突き飛ばしましたわね!」
悠生「え?」
響子「いいですこと! あなたは金輪際、わたしの半径10メートル以内に近づくことを禁じますわ! ふん!」

ツカツカと響子が歩き去っていく。

悠生「……恭太」
恭太「……悠生」
悠生「やったぞ!」
恭太「え?」
悠生「ついに、俺のことを認識してくれたぞ! これは大きく一歩前進だ!」
恭太「いや、かなり後退したぞ……」

悠生(N)「恋。誰しもが恋の奴隷であり、恋に振り回される。そう、俺は今、恋をしている。そして俺は、この先もこの恋を追いかけ続ける」

終わり。

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