【声劇台本】M

【声劇台本】M

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■概要
人数:3人
時間:10分程度

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、ラブコメディ

■キャスト
眞城 茉奈(ましろ まな)
雅人(まさと)
真紀(まき)

■台本

茉奈(N)「私の名前は眞城茉奈。小さい頃から空手をやっていて、この辺りではちょっとした有名なくらいだ。空手の大会でも、全国で3位になったことがある。……ただ、ここで勘違いしてほしくないのが、別に私は空手バカというわけじゃない。本当は年頃の女らしく、オシャレとか色々なところに遊びに行きたい。でも、それができない理由がある。その理由は……」

雅人「茉奈。今日こそ、お前に勝つ!」

茉奈「雅人……。あんたさあ、いい加減、諦めたら?」

雅人「嫌だ! お前に勝って、絶対に付き合ってもらうからな!」

茉奈「あのさ……。こんな遠回りなことしないで、その……普通にさ、告白とかすりゃいいじゃない」

雅人「俺は男だ」

茉奈「知ってるよ」

雅人「俺はお前を守れるような男になりたいんだ。……それにはお前よりも強くなくっちゃならない。だから、お前に勝った時、初めて俺はお前と付き合う資格を得ることができるんだ」

茉奈「……私、あんたにそこまでしてもらうほどの価値はないと思うけど」

雅人「そんなことない! 俺にとって、お前は最高の女だ! いや、お前意外、考えられない!」

茉奈「……よ、よくそんな歯の浮くようなこと、サラッと言えるね」

雅人「本音だからな。……好きだぜ、茉奈」

茉奈「っ!」

雅人「それじゃ、行くぞ! うおおお!」

雅人が走ってきて、パンチを繰り出す。

茉奈「くっ!」

茉奈(N)「今のは危なかった……。もう! あんなことを真面目な顔して言うから、調子狂うんだよね。反則だよ。って、そんなこと考えてる場合じゃないわ」

雅人「はああああああ!」

茉奈「やあああああ!」

熱いバトルを繰り広げる二人。

茉奈「そこっ!」

雅人「ぐはあああ!」

雅人が倒れる。

茉奈「はあ……はあ……はあ……」

雅人「くっ、俺の負けか」

茉奈「そうね……」

雅人「やっぱ、お前は強いな。お前の拳、芯まで響いたぜ」

茉奈「あんた、攻撃に偏り過ぎよ。もう少し防御の練習をしたら?」

雅人「……性に合わねえ」

茉奈(N)「まあ、そういうだろうと思ってたけど」

雅人「茉奈……。俺以外の男に負けたら承知しないからな」

茉奈「わかってる。っていうか、あんたが、私を負かしたら付き合えるって噂、流したんでしょ? あれから、やたらと勝負を迫られるんだから。すっごい迷惑」

雅人「別に言いふらしたわけじゃねーよ。それに、お前なら誰にも負けないってわかってたからな」

茉奈「勝手な奴……」

茉奈が立ち去っていく。

場面転換。

木を正拳で殴る茉奈。

茉奈「はっ! はっ! はっ!」

真紀「いつもながら、すごいわねー」

ピタリと正拳突きを止め、一息つく。

茉奈「ふう……」

真紀「いつも思うけどさー。木なんか殴って、手、痛くないの?」

茉奈「痛いに決まってんじゃん」

真紀「なんで、そんなことやるの?」

茉奈「拳ってさ、意外とすぐに鈍っちゃうのよ。こうやって毎日、拳を武器化するには磨き続けるしかないの」

真紀「完全に格闘家のセリフね。そのうち、私より強い奴に会いに行くって旅に出そう」

茉奈「旅かー。いいなぁ。温泉に行きたい」

真紀「茉奈って意外と、おっさんくさいよね」

茉奈「うっさいわね。それより真紀、例のアレ、手に入った?」

真紀「うん。はい、これ。異種格闘技トーナメントのチケット。2枚でいいんだよね?」

茉奈「ありがとう!」

真紀「はあ……。休みの日まで格闘技見に行くなんて、ホント、筋金入りよね」

茉奈「あのね。これは私が見たいんじゃなくて、雅人が見たがってるの! 私だって、ホントなら恋愛ものの映画とか見たいのよ」

真紀「なら、誘えばいいじゃん」

茉奈「それができれば苦労しないって。前に、無料券があるって誘ったんだけど、そういうのは付き合ってから、恋人同士になってから行くところだって断れたのよ」

真紀「……まあ、確かに、格闘技の大会はデートではあまり行かないもんね」

茉奈「はあ……。そうなんだよね。これ、デートじゃなくて、普通に幼馴染として遊びに行ってるって感覚なのよね」

真紀「あんたたちって、本当に一途よね」

茉奈「なっ! べ、別に私は雅人のことが好きってわけじゃ……」

真紀「いやいやいやいや。今更、それは通じないって」

茉奈「……」

真紀「あのさー。前から気になってることがあるんだけど」

茉奈「なに?」

真紀「茉奈って、普段から女の子らしい生活をしたいって言ってるじゃん」

茉奈「うん」

真紀「なんで、そんなに毎日毎日、必死になって特訓するの?」

茉奈「そりゃ、雅人に勝つためだよ。最近、雅人ってかなり実力を上げてきたの。こっちも追い抜かれない為に必死よ」

真紀「それって、おかしくない?」

茉奈「なにが?」

真紀「負ければいいじゃない。あんた、雅人くんに負ければ、付き合うって約束してるんでしょ?」

茉奈「それができれば苦労はないんだって」

真紀「ふーん。まあ、その辺は格闘家にしかわからないところなのかな?」

茉奈「……」

茉奈(N)「そう。私は雅人のことが好き。でも、だからこそ、私は雅人に負けられない。雅人に追いつかれないように必死にならなければならない。なぜなら――」

雅人「茉奈、勝負だ!」

茉奈「何度やっても結果は同じよ」

雅人「いくぞ、うおおおお!」

茉奈「はあああああ!」

二人の熱い戦いが繰り広げられる。

茉奈(N)「私は気づいてしまったのだ」

茉奈「やああああ!」

雅人「ぐおおお!」

茉奈の攻撃を食らい、倒れる雅人。

雅人「……へ、へへへ。さすが茉奈だ。効いたぜ」

茉奈「……」

雅人「俺はお前が好きだ。必ず、お前に勝って付き合ってもらうからな」

茉奈(N)「雅人……気づいてないでしょ。あんたさ、私のことが好きなんじゃなくて、私に殴られることが好きなんだってことに……」

終わり。

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