【声劇台本】一緒にいる理由
- 2020.12.17
- ボイスドラマ(10分)
■シリーズシナリオ
〈妖怪退治は放課後に〉
■関連シナリオ
〈悪寒がする視線〉
■概要
人数:5人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、学園、ファンタジー、コメディ
■キャスト
芹澤 和馬(せりざわ かずま)
蘆屋 千愛(あしや せら)
結翔(ゆいと)
典史(のりふみ)
孝雄(たかお)
■台本
和馬(N)「僕の名前は芹澤和馬。学園では生物研究会っていう、風紀委員みたいな組織に所属している。その活動の中で超常現象を調査してほしいって依頼があったんだ。それで、その事件の解決に陰陽師である蘆屋千愛先輩に協力してもらった。それ以来、僕は千愛先輩の活動を手伝うようになったんだけど……」
学食。周りは賑わっている。
そして、バンとテーブルを叩く音。
結翔「ズルいぞ、和馬!」
和馬「……急にどうしたの?」
結翔「お前の周りは美人ばっかりだ」
和馬「うーん。まあ、言われてみたらそうだね」
結翔「高校一年生にして、学園内にハーレムを築くなんて……羨ましいぞ!」
和馬「……あー、うん。完全に誤解だよ。多分、結翔が思っている真逆だと思うよ。ハーレムっていうより、奴隷に近いかな」
結翔「あんな美女たちの奴隷……。最高じゃねえか!」
和馬「相変わらず、レベルの高い性癖だね」
結翔「頼む、和馬! 俺も参加させてくれ」
和馬「参加って……生研に入りたいってこと?」
結翔「あっ! いや、夏姫先輩にもお近づきになりたいけど、俺ってどちらかというと肉体的な苛めより、精神的に苛められる方がグッとくるんだよ」
和馬「そ、そうなんだ……」
結翔「だから、もう一つの方がいい」
和馬「もう一つって……ああ、占星クラブの方?」
結翔「そう! 蘆屋先輩にお近づきになりたい!」
和馬「……確かに、千愛先輩は精神的に攻めてくるけど、結構、肉体的にもしんどいよ。危険って言うのかな。とにかくお勧めはできないよ」
結翔「危険? いいじゃん! ほら、あれだよ! 映画とか漫画とかでさ、一緒に危険を乗り越えたら恋人同士になるってやつ」
和馬「ああ、吊り橋効果ってやつだね」
結翔「そう、それ!」
和馬「忠告しておくけど、千愛先輩に対しては100パーセントあり得ないと思うよ」
結翔「あ、そんなこと言って、俺を諦めさせて、自分だけいい思いをする気だな?」
和馬「うーん。こればっかりは口で説明するのは難しいかも」
そのとき、典史がやってくる。
典史「あ、いたいた。その腕章、君が生研の和馬くんでいいんだよな?」
和馬「え? あ、はい」
典史「頼む! 助けてくれ!」
和馬「え、えっと……」
結翔「あのー、私服ってことは学園の生徒じゃないっすよね? どうして、他校の生徒が和馬に助けを求めてくるんっすか?」
典史「ああ、ごめん! 最初からちゃんと説明するな。えっと、俺は典史。去年、学園を卒業したんだ」
結翔「OBってことっすね」
典史「そうそう。で、戦国くんとも色々世話になってたんだ」
和馬「夏姫先輩と?」
典史「まあ、主に殴られてばっかりだったんだけど」
和馬「あー。先輩、年上とか全然気にしないですからね」
典史「で、一応顔見知りってことで、ダメ元で助けを借りに来たんだけど、話をしたら和馬のところに行けって言われてさ」
和馬「僕のところってことは……心霊現象ということですか?」
典史「そうなんだ! 俺、なんか、変な幽霊にストーカーされてるみたいでさ」
結翔「幽霊にストーカー?」
典史「幼馴染に霊感が強い奴がいるんだけど、そいつの話によると、そうらしいんだ。けど、霊感が強いっていっても、祓うとかはできないからさ」
和馬「わかりました。それでは、千愛先輩のところに行きましょう」
典史「助かる!」
和馬「じゃあ、結翔も一緒に行く?」
結翔「え?」
和馬「ほら、さっき、占星クラブに入りたいって言ってしさ」
結翔「あ、ああ。そうだな。てか、蘆屋先輩ってそっち系? つまり厨二な感じ?」
和馬「いや、違うけど……って、まあ、会った方が早いかな」
場面転換。
千愛「130万ってところかしらね」
典史「……へ?」
和馬「そんなにヤバいんですか?」
千愛「ええ。依頼者がまだ生きてるのが不思議なくらいね」
典史「ちょ、ちょっと待ってくれ! 130万って、そんなの無理だよ!」
千愛「それなら交渉は決裂ね。帰って、ゆっくり取り殺されなさい」
典史「……そんな」
結翔「お、おい。和馬。蘆屋先輩って、あれか? ぼったくり系か?」
和馬「違うよ。千愛先輩は陰陽師なんだ」
結翔「陰陽師?」
典史「あ、あのさ。もう少し安くならないかな? それか安めのお札とかない?」
千愛「話にならないわね。私はそんな安くないわ」
和馬「あの……千愛先輩。そこをなんとかなりませんか? 典史さんは夏姫先輩の知り合いなんです。それに、生死にかかわるようなら放っておけませんよ」
千愛「和馬くん。あなたは私に、他人の為にタダで命を懸けろっていうのかしら?」
和馬「いや……それは……その……」
千愛「はあ……。まあ、いいわ」
和馬「ホントですか?」
千愛「和馬くんにツケておくわ」
和馬「え?」
千愛「それでもいいなら、除霊してあげるわ」
典史「いやいやいや。さすがに和馬くんには」
和馬「いえ、いいですよ。どうせ、卒業まで奴隷が確定してますし。大学までお供しますよ」
千愛「死ぬまでよ」
和馬「そこまで!」
結翔「いいな、いいな。めっちゃラブラブな会話じゃん」
和馬「……結翔の耳って腐ってるの?」
場面転換。
千愛「それじゃ、まずは霊を呼び出すわ。……はあっ!」
孝雄「おわっ!」
和馬「あ、出てきた……」
結翔「え? 全然見えない」
典史「同じく……」
千愛「念のために聞いておくけど、黙って手を引く気はない?」
孝雄「ふざけるな! 貴子さんとの仲を引き裂こうとする奴らは、絶対に許さん! うおおお!」
周りの机や椅子が宙に浮く。
結翔「え? なに? ポルターガイスト?」
千愛「……想いの強さに比例して霊力も上がってるわね」
孝雄「ぶっ潰れろー!」
机や椅子が乱舞し、襲い掛かってくる。
和馬「うわああ!」
結翔「ぎゃーー!」
典史「おわあああ!」
3人が机や椅子に吹き飛ばされる。
千愛「気は済んだ?」
孝雄「くっ! よけやがったか! 次は」
千愛「……斬」
パンとはじけるような音。
孝雄「ぎゃーーー!」
場面転換。
教室内。
結翔「……酷い目にあった」
和馬「だから言ったでしょ?」
結翔「あんなの、命がいくつあったも足りねえよ。やっぱ、パスだパス」
和馬「そりゃそうだよね……」
結翔「なあ、和馬。どうしてお前は一緒にいられるんだ?」
和馬「え?」
結翔「ほら、ツケがあるとか色々言ってたけど、本気で断れば、きっと蘆屋先輩はチャラにしてくれると思うぞ?」
和馬「……うん。そうだね」
結翔「それなら、どうしてだよ?」
和馬「うーん。なんていうかな。千愛先輩と一緒にいると……楽しいから、かな」
結翔「はあ……。お前も十分、レベル高い性癖だよ」
和馬「はは。そうかもね」
場面転換。
ドアを開ける和馬。
和馬「すいません。遅くなりました」
千愛「遅いわ、和馬くん。見回りに行くのが遅れてしまったわ」
和馬「いや、見回りなら僕がいなくてもいいじゃないですか」
千愛「囮がいないと、効率が悪いわ」
和馬「僕を生贄のように扱うのはやめてください!」
和馬(N)「確かに、千愛先輩からの扱いは酷いと思うときがある。だけど、わくわくしている気持ちもあるんだ」
終わり。
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