【声劇台本】40㎝横の親友へ

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■関連シナリオ
<40万キロ先の親友へ>

■概要
人数:2人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、未来、SF、シリアス

■キャスト
ミーア
フィー

■台本

ミーア(N)「もうすぐ、地球に到着する。そうすればフィーちゃんに会えるんだ」

場面転換。

宇宙船が、地上に着陸する。

プシューと音を立てて宇宙船の扉が開く。

ミーア「……ここが地球かぁ。ううっ、寒っ! って、そんな場合じゃないよ! 今行くよ、待っててね、フィーちゃん!」

場面転換。

ミーア「えっと、フィーちゃんがいるのはこの辺のはずなんだけど……」

ピッピッピッと音を立てる探査機を見ながら走るミーア。

ミーア「あ、いた! フィーちゃん!」

フィー「……」

ミーア「フィーちゃん! 大丈夫!?」

フィーから起動音がする。

フィー「……ミーア……さん?」

ミーア「よかった! 無事だったんだね」

フィー「来て……しまったんですね……」

ミーア「……あ、ごめん。フィーちゃんがどうしても心配で……」

フィー「来てしまったのなら仕方ありません。……いえ。どちらかというと、好都合だったかもしれません……」

ミーア「どういうこと?」

フィー「本来であれば、核兵器によって巻き上げられた塵の雲は、あと10年ほどで晴れるはずでした」

ミーア「あー、確かにこっちって、すごい暗いもんね。朝なのに」

フィー「ですが、隕石が落ちたことにより、雲が晴れるのが100年はかかる計算です」

ミーア「ふーん。なるほどねぇ」

フィー「ミーアさん、本当にわかってます?」

ミーア「あははは。わかんない」

フィー「難しい話は止めましょう。結論を言います。ミーアさんには眠ってもらいます」

ミーア「んー。宇宙船の中でたくさん寝たから眠くないんだけど……」

フィー「いえ。普通の睡眠ではなく、コールドスリープです。つまり、100年ほど眠ってもらいます」

ミーア「ええ! 100年も寝るの? うーん。そんなに眠れるかなぁ? いくらお寝坊の私でも、途中で起きちゃうよ」

フィー「その点は問題ありません。システムで制御して起きないようにしますので」

ミーア「ふーん。やっぱりフィーちゃんは凄いね。そんなの作れるなんて」

フィー「……すいません、ミーアさん。一つお願いがあるのですが?」

ミーア「なになに? フィーちゃんの頼みなら、なんでも聞くよ?」

フィー「私を直すのを手伝ってほしいのです」

ミーア「うん! もちろんいいよ! っていうか、私、そのために来たんだもん」

フィー「ただ、その……少し難しい知識が必要になってしまうのですが……」

ミーア「へーきへーき! 勉強は嫌いだけど、フィーちゃんの為なら頑張れるよ!」

フィー「ありがとうございます」

場面転換。

ミーア「どう? フィーちゃん?」

フィーが滑らかに動き始める。

フィー「完璧です」

ミーア「やったぁ!」

フィー「正直、驚きました」

ミーア「ん? なにが?」

フィー「システムに対しての知識の吸収率です。これは血筋ですね」

ミーア「フィーちゃん、私のお父さんとお母さんのこと、知ってるの?」

フィー「私を作ってくれたのが、ミーアさんの両親です。お二人は地球でトップクラスのエンジニアでした」

ミーア「ふええ……。お父さんとお母さん、そんなに凄い人だったんだ」

フィー「そのおかげで、かなり余裕が出来ました」

ミーア「余裕? なんの?」

フィー「コールドスリープの装置を作るための時間です。計算では、私が直るまでにあと1ヵ月はかかるはずでした。ですので、本当は装置が完成するのがギリギリだったんです」

ミーア「ギリギリ? 別にゆっくり作ればいいんじゃないの? 時間なんてたっぷりあるんだし」

フィー「今、ミーアさんが来ているスーツですが、あと2ヵ月しかもちません」

ミーア「え? この宇宙服のこと?」

フィー「はい。そのスーツは体温調節機能が付いているので、今は大丈夫ですが、その機能が切れた場合、寒さで死んでしまいます」

ミーア「ええ? そうなの? 確かに、こっちに来た時、最初は寒かったけど、今は平気だもんね。この服のおかげだったんだ」

フィー「そのスーツも、ミーアさんの両親が作られたんですよ」

ミーア「へえ……。そうだったんだ。色々凄いね」

フィー「ええ。本当に凄い方でした」

ミーア「あ、そうだ、フィーちゃん。その、眠る機械なんだけど、作るの、私も手伝っていい?」

フィー「ええ。もちろんです。助かります」

場面転換。

ミーア「電源入れるよ」

フィー「お願いします」

パチンとスイッチを入れる音。

起動音がするが、すぐに音が止まる。

フィー「……失敗してしまいました」

ミーア「うーん。基盤を変えてみよっか」

フィー「では、こちらの部分を、こっちの素材に変えてみましょう」

ミーア「あ、じゃあさ、ここの部分をこうしたら?」

フィー「……なるほど。いいかもしれません」

ミーア「えへへへ」

フィー「ミーアさん、楽しそうですね」

ミーア「うん! こうやって、フィーちゃんと一緒に作業するの、夢だったんだ!」

フィー「……私も、嬉しいです」

場面転換。

起動音がする。順調に動き続けるシステム。

ミーア「やったぁ! 成功だぁ!」

フィー「ミーアさんのおかげで、かなりの高性能のものが完成しました」

ミーア「そういえばさ、これ一人用だけど、フィーちゃんのは?」

フィー「私のは必要ありません。アンドロイドですから」

ミーア「じゃあ、眠らないってこと? 私が起きるまで100年の間」

フィー「そうなりますね」

ミーア「その間、フィーちゃんはずっと一人?」

フィー「はい」

ミーア「……やだ」

フィー「え?」

ミーア「フィーちゃんを一人にするのは、絶対に嫌!」

フィー「私はアンドロイドなので……」

ミーア「そんなの関係ないよ! 一人は寂しいんだよ! ……私、知ってるもん。ずっと一人だったから……」

フィー「……」

ミーア「だから、私は寝ない!」

フィー「それではミーアさんが死んでしまいます。そうなったら、どちらにしても私は一人になってしまいます」

ミーア「うん。だから、私、死なないよ」

フィー「……それは」

ミーア「私に任せて!」

場面転換。

ミーア「うう……寒い」

フィー「ミーアさん。すぐにコールドスリープに入ってください! もうスーツがもたなくなってきてます」

ミーア「大丈夫! もう完成したから!」

フィー「……ミーアさん。計算では成功する確率は0.02……」

ミーア「絶対、成功する! スイッチ、オン!」

ミーアがボタンを押すと、ロケットのエンジンに点火され、轟音を立てて登っていく。

ミーア「いけー!」

ドンドンとロケットが登っていく。

しばらくの沈黙。

ミーア「……」

フィー「……失敗ですね。やはり、爆発で雲を吹き飛ばすなんて、無理だったんです」

ミーア「大丈夫!」

上空でドーンと爆発音が起こる。

フィー「……」

ミーア「……」

パアーと太陽の光が降り注ぐ。

ミーア「やったぁ! 成功だ!」

フィー「……すごい」

ミーア「えへへ。やっぱり太陽って温かいね」

フィー「……ええ」

ミーア「これで、私は死なないし、眠らなくていいし、フィーちゃんを一人にしなくていいよね」

フィー「……雲の問題は解決しそうですが、まだまだ大変ですよ?」

ミーア「問題なし!」

ミーア(N)「きっと、これからも大変なことがいっぱいあると思う。でも、大丈夫。どんなことがあっても乗り越えられる。だって、私の隣には、フィーちゃんがいるんだから」

終わり。

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