【声劇台本】40㎝横の親友へ
- 2021.01.24
- ボイスドラマ(10分)
■関連シナリオ
<40万キロ先の親友へ>
■概要
人数:2人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、未来、SF、シリアス
■キャスト
ミーア
フィー
■台本
ミーア(N)「もうすぐ、地球に到着する。そうすればフィーちゃんに会えるんだ」
場面転換。
宇宙船が、地上に着陸する。
プシューと音を立てて宇宙船の扉が開く。
ミーア「……ここが地球かぁ。ううっ、寒っ! って、そんな場合じゃないよ! 今行くよ、待っててね、フィーちゃん!」
場面転換。
ミーア「えっと、フィーちゃんがいるのはこの辺のはずなんだけど……」
ピッピッピッと音を立てる探査機を見ながら走るミーア。
ミーア「あ、いた! フィーちゃん!」
フィー「……」
ミーア「フィーちゃん! 大丈夫!?」
フィーから起動音がする。
フィー「……ミーア……さん?」
ミーア「よかった! 無事だったんだね」
フィー「来て……しまったんですね……」
ミーア「……あ、ごめん。フィーちゃんがどうしても心配で……」
フィー「来てしまったのなら仕方ありません。……いえ。どちらかというと、好都合だったかもしれません……」
ミーア「どういうこと?」
フィー「本来であれば、核兵器によって巻き上げられた塵の雲は、あと10年ほどで晴れるはずでした」
ミーア「あー、確かにこっちって、すごい暗いもんね。朝なのに」
フィー「ですが、隕石が落ちたことにより、雲が晴れるのが100年はかかる計算です」
ミーア「ふーん。なるほどねぇ」
フィー「ミーアさん、本当にわかってます?」
ミーア「あははは。わかんない」
フィー「難しい話は止めましょう。結論を言います。ミーアさんには眠ってもらいます」
ミーア「んー。宇宙船の中でたくさん寝たから眠くないんだけど……」
フィー「いえ。普通の睡眠ではなく、コールドスリープです。つまり、100年ほど眠ってもらいます」
ミーア「ええ! 100年も寝るの? うーん。そんなに眠れるかなぁ? いくらお寝坊の私でも、途中で起きちゃうよ」
フィー「その点は問題ありません。システムで制御して起きないようにしますので」
ミーア「ふーん。やっぱりフィーちゃんは凄いね。そんなの作れるなんて」
フィー「……すいません、ミーアさん。一つお願いがあるのですが?」
ミーア「なになに? フィーちゃんの頼みなら、なんでも聞くよ?」
フィー「私を直すのを手伝ってほしいのです」
ミーア「うん! もちろんいいよ! っていうか、私、そのために来たんだもん」
フィー「ただ、その……少し難しい知識が必要になってしまうのですが……」
ミーア「へーきへーき! 勉強は嫌いだけど、フィーちゃんの為なら頑張れるよ!」
フィー「ありがとうございます」
場面転換。
ミーア「どう? フィーちゃん?」
フィーが滑らかに動き始める。
フィー「完璧です」
ミーア「やったぁ!」
フィー「正直、驚きました」
ミーア「ん? なにが?」
フィー「システムに対しての知識の吸収率です。これは血筋ですね」
ミーア「フィーちゃん、私のお父さんとお母さんのこと、知ってるの?」
フィー「私を作ってくれたのが、ミーアさんの両親です。お二人は地球でトップクラスのエンジニアでした」
ミーア「ふええ……。お父さんとお母さん、そんなに凄い人だったんだ」
フィー「そのおかげで、かなり余裕が出来ました」
ミーア「余裕? なんの?」
フィー「コールドスリープの装置を作るための時間です。計算では、私が直るまでにあと1ヵ月はかかるはずでした。ですので、本当は装置が完成するのがギリギリだったんです」
ミーア「ギリギリ? 別にゆっくり作ればいいんじゃないの? 時間なんてたっぷりあるんだし」
フィー「今、ミーアさんが来ているスーツですが、あと2ヵ月しかもちません」
ミーア「え? この宇宙服のこと?」
フィー「はい。そのスーツは体温調節機能が付いているので、今は大丈夫ですが、その機能が切れた場合、寒さで死んでしまいます」
ミーア「ええ? そうなの? 確かに、こっちに来た時、最初は寒かったけど、今は平気だもんね。この服のおかげだったんだ」
フィー「そのスーツも、ミーアさんの両親が作られたんですよ」
ミーア「へえ……。そうだったんだ。色々凄いね」
フィー「ええ。本当に凄い方でした」
ミーア「あ、そうだ、フィーちゃん。その、眠る機械なんだけど、作るの、私も手伝っていい?」
フィー「ええ。もちろんです。助かります」
場面転換。
ミーア「電源入れるよ」
フィー「お願いします」
パチンとスイッチを入れる音。
起動音がするが、すぐに音が止まる。
フィー「……失敗してしまいました」
ミーア「うーん。基盤を変えてみよっか」
フィー「では、こちらの部分を、こっちの素材に変えてみましょう」
ミーア「あ、じゃあさ、ここの部分をこうしたら?」
フィー「……なるほど。いいかもしれません」
ミーア「えへへへ」
フィー「ミーアさん、楽しそうですね」
ミーア「うん! こうやって、フィーちゃんと一緒に作業するの、夢だったんだ!」
フィー「……私も、嬉しいです」
場面転換。
起動音がする。順調に動き続けるシステム。
ミーア「やったぁ! 成功だぁ!」
フィー「ミーアさんのおかげで、かなりの高性能のものが完成しました」
ミーア「そういえばさ、これ一人用だけど、フィーちゃんのは?」
フィー「私のは必要ありません。アンドロイドですから」
ミーア「じゃあ、眠らないってこと? 私が起きるまで100年の間」
フィー「そうなりますね」
ミーア「その間、フィーちゃんはずっと一人?」
フィー「はい」
ミーア「……やだ」
フィー「え?」
ミーア「フィーちゃんを一人にするのは、絶対に嫌!」
フィー「私はアンドロイドなので……」
ミーア「そんなの関係ないよ! 一人は寂しいんだよ! ……私、知ってるもん。ずっと一人だったから……」
フィー「……」
ミーア「だから、私は寝ない!」
フィー「それではミーアさんが死んでしまいます。そうなったら、どちらにしても私は一人になってしまいます」
ミーア「うん。だから、私、死なないよ」
フィー「……それは」
ミーア「私に任せて!」
場面転換。
ミーア「うう……寒い」
フィー「ミーアさん。すぐにコールドスリープに入ってください! もうスーツがもたなくなってきてます」
ミーア「大丈夫! もう完成したから!」
フィー「……ミーアさん。計算では成功する確率は0.02……」
ミーア「絶対、成功する! スイッチ、オン!」
ミーアがボタンを押すと、ロケットのエンジンに点火され、轟音を立てて登っていく。
ミーア「いけー!」
ドンドンとロケットが登っていく。
しばらくの沈黙。
ミーア「……」
フィー「……失敗ですね。やはり、爆発で雲を吹き飛ばすなんて、無理だったんです」
ミーア「大丈夫!」
上空でドーンと爆発音が起こる。
フィー「……」
ミーア「……」
パアーと太陽の光が降り注ぐ。
ミーア「やったぁ! 成功だ!」
フィー「……すごい」
ミーア「えへへ。やっぱり太陽って温かいね」
フィー「……ええ」
ミーア「これで、私は死なないし、眠らなくていいし、フィーちゃんを一人にしなくていいよね」
フィー「……雲の問題は解決しそうですが、まだまだ大変ですよ?」
ミーア「問題なし!」
ミーア(N)「きっと、これからも大変なことがいっぱいあると思う。でも、大丈夫。どんなことがあっても乗り越えられる。だって、私の隣には、フィーちゃんがいるんだから」
終わり。
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