【声劇台本】あなたは私の光りです

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■概要
人数:4人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、ラブストーリー

■キャスト
裕翔(ゆうと)
御門 花(みかど はな)
不良
女性

■台本

裕翔(N)「親で子供の人生が決まる。金持ちの家に生まれた奴は、将来お金持ちになるだろうし、子供時代は良い物が食えるし、良い高校にだって行けるだろう。そして、子は親を選べない。これはこの世の真理だ。父親がチンピラ。この時点で、俺の人生は決まったようなものだ」

裕翔が不良を殴る。

不良「ぐえっ!」

裕翔「……ふん」

不良「くそ、てめえ、覚えてろよ」

裕翔「リベンジしたけりゃ、いつでも来な」

裕翔が立ち去る。

歩き続ける裕翔。

裕翔(N)「高校に行く頃には立派な不良の出来上がりってわけだ。いや、俺には不良の道しか残ってなかったと言った方が正しいだろう。何か都合の悪いことが起これば俺のせいにされるし、俺が何かいいことをしたとしても信じて貰えないか、裏があるんじゃないかと疑われる。そんな中で普通の人間に何かなれるわけがない。周りがそう望むなら、俺は望んだとおりに行動するだけだ。今だって、なんとなくむしゃくしゃしたから、喧嘩を売って憂さ晴らしをした。こんな生活が、この先もずっと続くと思っていたんだ」

場面転換。

学校のチャイム。

花「あー、裕翔くん、またこんなところでサボってるー。わーるいんだー」

裕翔「悪いことするから、不良なんだよ」

花「あははは。そりゃ、そっか」

ガサガサと袋を漁って、パンを取り出して、食べ始める花。

花「むぐむぐ。あー、このパン美味しー。当たりだー」

裕翔「おい、花。お前、何してんだよ」

花「ん? パン食べてるー」

裕翔「んなことは見りゃわかる。もう、チャイムなったぞ」

花「うん、知ってるよー。むぐむぐ。おいしー」

裕翔「授業始まるぞ」

花「そだねー」

裕翔「いや、そだねー、じゃねえよ。早く行けよ」

花「なんで?」

裕翔「なんでって……。あー、もういいや。勝手にしろ」

花「うん、勝手にするー。あ、裕翔くん、パン食べる―?」

裕翔「いらねえよ」

花「あれ? 裕翔くん、口の中、切れてるよー?」

裕翔「あん? いつもだ」

花「ダメだよ、見せてー。はい、あーん!」

裕翔「はあ……。わかったよ。あー」

花「えいっ!」

裕翔の口に花がパンを突っ込む。

裕翔「うごっ! ごほっ! ごほっ! ごほっ! なにしやがる!」

花「パン、美味しかったー?」

裕翔「アホか。それどころじゃなかったっての」

花「そっかー。じゃあ、はい! 今度は味わって食べてねー」

裕翔「いや、いらねーって……」

花「美味しいよー」

裕翔「……はあ。わかったよ」

裕翔がパンを奪い取って食べる。

裕翔「お、美味い」

花「でしょー? でもー、焼き立てだともっと美味しいと思うんだよねー。だから、放課後、一緒にパン屋さん行こ―ねー」

裕翔「勝手に決めるな」

花「さてとー!」

花が立ち上がる。

裕翔「……授業行く気になったのか?」

花「ううん。パン食べちゃったから、売店でほじゅーしてくる―」

裕翔「……」

花「じゃあ、放課後に校門のとこにしゅーごーねー」

花が走って行ってしまう。

裕翔「あ、待て! 行くって言ってねーぞ……って、行っちまった」

裕翔(N)「御門花。数日前から突如、俺に付きまとってきた女だ。どんなに追い払おうとしても、全く聞く耳を持たずに絡んでくる。……学園広しといえど、俺なんかに好き好んで話しかけてくるのはあいつくらいだろう。けど、俺なんかに絡んで何の得があるんだ? ……全く、何を考えてるかわからん奴だ」

場面転換。

学校のチャイム。

周りは帰宅する生徒たちで賑わってる。

そんな中歩く裕翔。

花「やっほー、裕翔くん、待ってたよー」

裕翔「……お前、俺が来なかったらどうするつもりだったんだよ?」

花「んー? んー、裕翔くん来てくれると思ってたから、来ないなんてこと考えてなかったー」

裕翔「……おいおい。どんだけおめでたい頭なんだよ」

花「でもー、来てくれたしー」

裕翔「はあ……。で? どこ行くって?」

花「パン屋さんだよー! さあ、レッツゴー!」

場面転換。

パン屋。店内。

花「むぐむぐむぐ。おいしー!」

裕翔「お前、見た目と違って、凄い食うな」

花「だってー、美味しいんだもん。裕翔くんは2つで足りるの? もしかして、パン嫌いだった?」

裕翔「いや、元々、小食なんだよ、俺」

花「へー、いがい―」

裕翔「そっくりそのまま返す。……にしても、パン屋ってコーヒーも美味いんだな」

花「裕翔くん、おとなだよねー。ブラック飲むなんて」

裕翔「ブラックが一番、コーヒーの味がわかるんだよ」

花「えへへ。裕翔くん、また来ようねー」

裕翔「……気が向いたらな。なあ、花。……お前、なんで俺に構うんだ?」

花「んー。楽しいからー」

裕翔「楽しい? 俺といることがか?」

花「うん。……裕翔くんは、私と一緒にいるのは嫌?」

裕翔「……そんなことは……ない」

花「わーい! やったー」

裕翔「お、おい! 静かにしろって」

場面転換。

裕翔と花が並んで歩く。

女性の声「ちょっと止めてください!」

裕翔「……花。お前、先に行ってろ」

花「裕翔くん?」

裕翔「いいから、帰ってろ。また明日な」

裕翔が走っていく。

場面転換。

女性「止めてって言ってるでしょ」

不良「まあ、そんなこと言うなよ」

裕翔「はあ……。世の中、クズばっかりだな。まあ、人のこと言えないが」

不良「な、またお前か!」

裕翔「また……? 前に殴ったことあったっけか?」

不良「次見つけたらぶっ殺すって決めてたんだ!」

ナイフを出す不良。

不良「うおおおお!」

花「だめーー!」

裕翔「なっ! 花っ!」

花が飛び出し、腕を切られる。

花「きゃあ!」

不良「くっ! 邪魔しやがって! 今度こそ……ぐえっ!」

裕翔が不良を殴り飛ばし、不良吹っ飛ぶ。

裕翔「花! 大丈夫か!」

花「へ、平気平気―。ちょっと切られただけだからー」

裕翔「バカ、無理するな。病院行くぞ」

花「大げさだよー」

裕翔「いいから、黙ってろ」

裕翔が花を抱き抱える。

花「わおー。お姫様抱っこだー」

裕翔「黙ってろって」

裕翔が走り出す。

花「ねえ、裕翔くん。さっきさ、どうして裕翔くんに一緒にいるかって聞いたよね?」

裕翔「ああ……」

花「裕翔くんはね、私にとっての光なんだ」

裕翔「……光? 闇の間違いだろ」

花「裕翔くん、さっきの女の人みたく、私を不良から助けてくれたんだよ。覚えてない?」

裕翔「……悪いな。覚えてない」

花「ははは。それだけ、いっぱい助けてるってことだね。……やっぱり裕翔くん、優しい人だよ」

裕翔「……憂さ晴らしに喧嘩してるだけだ」

花「ううん。優しい人だよ裕翔くん。私にはわかるもん」

裕翔「……」

花「それにね、裕翔くんは私のことトロくさいとか、変だって言わないもん。普通に話してくれるの、裕翔くんだけだよ」

裕翔「……俺も」

花「ん?」

裕翔「いや、なんでもない」

裕翔(N)「こんな俺に話しかけてくれるのはお前だけだ。花。俺にとってもお前は、光なんだ」

終わり。

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