■関連シナリオ
〈山ガール〉
■概要
人数:2人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
雨宮 さくら(29) 会社員
川岸 七海(29) さくらの親友
■台本
インターフォンの音。
七海「はーい」
ガチャリとドアを開く音。
七海「あ、さくら、いらっしゃーい」
さくら「言われた通り、おつまみ買ってきたけど……お酒はホントになくていいの?」
七海「うん。大丈夫。いっぱいあるから」
さくら「ふーん」
七海「ま、入って入って」
さくら「おじゃましーます」
場面転換。
プシュッとお酒の缶の蓋を開ける音。
七海「かんぱーい!」
さくら「乾杯」
七海がグビグビとお酒をあおる。
七海「ぷはー! やっぱり、ビール最高!」
さくらも一口飲む。
さくら「あ、このビール美味しいね」
七海「でしょ? 会社の先輩に大量に貰ったんだ」
さくら「会社の? へー。なんでまた?」
七海「私が、お酒が好きで、よく家で飲んでるって話したことがあったんだよね」
さくら「家で飲むっていえばさ、今でも大ライン飲みってやってるの?」
七海「……」
さくら「あれ? なんか、地雷踏んじゃった?」
七海「……それがさー。どうやら、私、酒癖が悪いみたいなんだよね」
さくら「うん。知ってる」
七海「それでね、大体、二本目を飲んでるくらいまでは、気持ちよく酔ってて、男の人ともいい雰囲気になることが多かったんだ」
さくら「へー、思ったより、上手くいってたんだね」
七海「でもね、三本目くらい記憶がなくなってさ。いつの間にか朝になってんの」
さくら「……あー」
七海「で、次の日、その男の人に連絡したら着信拒否とかされるようになってさー」
さくら「……まあ、そうなるよね」
七海「でね、先輩にもその話をしたら、酔いづらいビールってことで、これ、もらったんだ」
さくら「なるほどねー。いい先輩だね」
七海「……」
さくら「あれ? また、地雷踏んじゃった?」
七海「それより、さくら、おつまみ、何かって来てくれたの?」
さくら「うん。適当に色々買ってきたよ」
ガサガサと袋を漁るさくら。
七海「あー、これ、懐かしい! ABCのビスケットのやつ」
さくら「子供の頃、よく食べたよね」
七海「食べ始めたら、止まらないよねー」
袋を開けて、食べ始める七海。
七海「うん! この塩味がまた、いいのよねー。ビスケットといえば、これだわ」
さくら「あとね、これも懐かしかったから、買ってきたよ」
七海「あ、ビタミンカステーラだ! てか、まだ売ってたんだ?」
さくら「私も、ビックリしたよ。小さい頃、小さい商店とかで売ってたけど、コンビニとかじゃ見なかったからね」
袋を開けて食べる七海。
七海「うんうん。この少し口の中が渇く感じがいいよね。飲み物が進むわ」
さくら「あー、牛乳も買ってくればよかったね」
七海「牛乳との組み合わせは最強だよね。いやー、まさにソウルフード」
さくら「ソウルフードって言えばさー。北海道限定のお菓子とかってあるじゃない?」
七海「うん。まあ、地域限定のお菓子って、どこにでもあるよね」
さくら「この前、出張に行ったときに、あっちの社員の人と話したんだけどさ」
七海「あー、そういえば出張、行ってたね」
さくら「でさ、北海道限定のお菓子だったら、北海道の人は食べてるのが当然だって話になったんだよね」
七海「……ん? そうじゃないの?」
さくら「七海って、じゃがポックルってお菓子、知ってる?」
七海「あー、聞いたことある。お土産で有名だよね」
さくら「……食べたことある?」
七海「……ない」
さくら「だよねー! 北海道限定のお菓子だけど、逆に北海道の人が食べる機会って少ないんだよね」
七海「あー、不思議だね」
さくら「不思議って言えばさー」
場面転換。
二人がテンション高く、笑っている。
七海「あはははははは!」
さくら「はははは!」
七海「よーし! さくら、ドンドン飲んで! 今日は無礼講だよー!」
さくら「今日はなんか、進むよね。このビールが美味しいからかな。……って、七海、今日は珍しいね」
七海「ん? なにが?」
さくら「いつもだったら、4本も飲んだら、暴言吐いて、マーライオンして、寝ちゃうのに、今日は全然普通じゃない」
七海「……」
さくら「あれ? また、何か地雷踏んだ?」
七海「ふえーん! 聞いてよ、さくらー」
さくら「どうしたの?」
七海「……あのね、このビールくれたのが、先輩だって言ったじゃない?」
さくら「あ、うん。そう言ってたね」
七海「先輩がね、大量に、このビールを持ってきてね、宅飲みしようって話になったの」
さくら「へー。それで、なにかあったと」
七海「……うん。だってさー、無礼講って言ってたんだもん」
さくら「……なんとなく、展開が分かった気がする」
七海「お酒の席だからさ、なんでも言いたいこと言おうってなったんだ」
さくら「……あ、あのね、七海。会社の無礼講って言葉は嘘だよ。言いたいこと言っちゃダメなやつだよ」
七海「ええー! それ早く言ってよー!」
さくら「……聞くのが怖いけど、それで、その後、どうなったの?」
七海「えっとね……。今みたいに4本目くらい飲んだときに、すごくいい雰囲気なったの」
さくら「え? あれ? もしかして、その先輩って男の人?」
七海「へ? 言ってなかったっけ?」
さくら「うん。聞いてない。……なんか、思ってた展開と違うかも」
七海「それでね、先輩がね、俺のこと、どう思うかって聞いてきたの」
さくら「……それって先輩としてってこと?」
七海「ううん。男としてって聞かれた」
さくら「(ゴクリと唾を飲んで)それで、なんて答えたの?」
七海「正直、仕事じゃ頼りないって。会社じゃ異性として見てなかったって」
さくら「……あちゃー」
七海「でもね。酔ってたせいか、その日は凄くカッコよく見えたんだ。だから、今は、好きかもって言ったの」
さくら「ええ!? やったじゃん! いい流れだよ、それ!」
七海「そうだよね? 先輩もホントって、驚いてた」
さくら「それでそれで?」
七海「だから、私は言葉だけじゃなくって、行動で示そうと思ったの」
さくら「そ、それって、もしかして……」
七海「うん。そうだよ。さくらの思った通り、先輩に襲い掛かったんだ」
さくら「……いや。想像とは斜め上の行動だよ?」
七海「で、抵抗されたから、大人しくさせようとして、皿で殴ろうとしたの」
さくら「……」
七海「そしたら、逃げられちゃったのよー! ふえーーん!」
さくら「……うん。その先輩は正しい行動だったと思うよ」
七海「酔ってたから仕方ないじゃない!」
さくら「全然、仕方なくないよ」
七海「うう……。もう、酒はこりごりだよ! もう絶対に飲まないんだからー!」
さくら「缶ビール、握りしめながら言われてもね……」
七海「ふえーん! 10年に一度のチャンスだったのにー」
さくら「うーん。それにしても、その先輩、どうして、宅飲みしようなんて言ったんだろ?」
七海「……なにが?」
さくら「だってさ、七海が酒癖悪いって知ってたんだよね? だから、酔いづらい、このビールを買ってきてくれたわけだし」
七海「そうだね」
さくら「でもさ、いくら、酔い辛いって言っても、たくさん飲んだら酔うわけでしょ? そしたら告白もなにもないと思うんだけど……」
七海「そんなこと、私に言われてもわからないよ」
さくら「なにか意図があったと思うんだけど……。本音を聞きたかったとか? ……でも、七海が酒癖悪いって知ってたわけだし……あっ!」
七海「ん? どうしたの?」
さくら「う、ううん、なんでもない」
さくら(N)「……このビール。ノンアルコールだ……」
終わり。
※シナリオで登場したお菓子