【声劇台本】今の未来

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■概要
人数:5人以上
時間:15分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
織原 佑馬(おりはら ゆうま)
教師
店長
担当員
その他

■台本

教室内。

教師「それじゃ、この前のテストの答案を返すぞ。織原」

佑馬「はい」

佑馬が教師のところへ行く。

教師「お前はもう少し頑張れ。赤点ギリギリじゃないか」

佑馬「赤点じゃないんだから、いいじゃないっすか」

場面転換。

佑馬の部屋。

ゴロンとベッドの上に寝転がる、佑馬。

佑馬「あーあ。学校、つまんねー。大体、学校の勉強なんて、将来使わねーだろ。早く、卒業してーな。社会人になれば、あれこれうるさいこと言われなくなるんだろうな……。ふわー。ねむぃ。なにもやる気、起きないし寝るか……」

場面転換。

携帯のアラームが鳴り響く。

佑馬「う、うーん。……もう朝かよ」

アラームを止める佑馬。

佑馬「あれ……? なに、このスマホ? え? てか、もう11時じゃん! 学校遅刻する!」

ガバッと起き上がる佑馬。

佑馬「……え? え? え? どこ、ここ?」

ドカドカと歩く佑馬がピタリと立ち止まる。

佑馬「……え? ちょ、ちょっと待って! 鏡に映ってるの、俺だよな? ……ええー! おっさんになってるじゃん!」

場面転換。

佑馬「……どうなってるんだ? 15年後の未来? てことは、俺は今、31歳ってところか」

スマホに着信が入る。

佑馬「はい、織原です。……え? バイト? すいません。あの……場所って、どこですかね? はい、はい。すいません。すぐ行きます!」

ピッとスマホを切り、バタバタと走る佑馬。

場面転換。

コンビニに入る佑馬。

佑馬「遅れてすいません」

店長「あのさ、遅刻何度目? いい加減にしてくれないかな?」

佑馬「(小声で)ちっ、うるせーな」

場面転換。

佑馬「はー。疲れた。けど、仕事がコンビニで助かった。一か月くらい、やってたのが役に立ったな」

そのとき、グーっと腹が鳴る。

佑馬「あー、腹減った。なんか食って帰ろっと。どれどれ財布の中身は……? おお! 5万入ってる! さすが、社会人! よし、焼き肉と寿司をはしごしちゃおうかな」

場面転換。

ゲームの音。

佑馬「いやー、学校行かなくていいから、バイト以外は自由なのはホントいいな。親もいなくて、ゲームやり放題だし、社会人サイコー! 今日も、バイト帰りに新しいゲーム買おうっと」

場面転換。

佑馬「お疲れさまでした」

自動ドアが開き、歩き出す佑馬。

同時に、スマホが鳴る。

佑馬「はい、織原です。……え? 家賃? あ、すいません。すぐに振り込みます!」

ピッと携帯を切る。

佑馬「そっか。一人暮らしだから、家賃いるのか。明日、お金降ろして振り込むか」

場面転換。

ゲームの音。

佑馬「おりゃ、おりゃ!」

急にブツと音が途切れる。

佑馬「え? なに? 停電?」

ドカドカと歩く佑馬。

佑馬「ブレーカーじゃないし、もしかして」

がさがさと紙を漁る。

佑馬「うわー。電気代払ってないじゃん。止められたのか。明日、家賃と一緒に払うか」

場面転換。

自動ドアが開いて銀行から佑馬が出てくる。

佑馬「やべえ。最初に財布に入ってたの、振り込み用の金だったんだ。とりあえず、電気代払って、家賃は次の給料日まで待ってもらおう。あと、今日から節約しないと」

場面転換。

佑馬「……えっと、給料が16万で、そっからなんか税金引かれて、家賃と電気代、水道代、ガス代、スマホ代、ネット代を引いて……5万くらい残るのか。ここから、飯代を考えると……嘘だろ。学生のときより小遣い少ないじゃん。いや、大体、給料が安すぎないか? ……転職するしかないな」

場面転換。

佑馬「あの、店長。転職って、どうやればいいんですかね?」

店長「……なに? 転職考えてるの?」

佑馬「はい。もう少し給料欲しくて」

店長「織原くん、明日から来なくていいよ」

佑馬「……は?」

場面転換。

道を歩く佑馬。

佑馬「ふざけんなっ! なんなんだよ、急にクビって! せめて、転職のやり方、教えろっての!」

ズカズカと歩く佑馬。

佑馬「ヤバいな。仕事見つけないと……。けど、どうやって……。あ、そうだ」

スマホで電話をかける佑馬。

佑馬「あ、母さん。あのさ……」

場面転換。

担当者「どんな仕事を探してますか?」

佑馬「職業安定所って始めて来ましたよ」

担当者「どんな仕事を探してますか?」

佑馬「あ、はいはい。えっと。俺、ゲーム好きなんで、ゲーム関連の会社を」

担当者「……織原さんは大学を出てないんですね」

佑馬「はい。学校の勉強なんて、社会じゃ役に立たないかですから」

担当者「……未経験で、大学卒業してないなら、難しいですね」

佑馬「じゃあ、ゲーム会社じゃなくてもいいです」

担当者「……それじゃ、とりあえず、この会社はどうでしょうか」

場面転換。

電話で話している佑馬。

佑馬「はい、はい。そうですか……」

電話を切る佑馬。

佑馬「くそ、くそ、くそ! なんなんだよ! 大学出てなくてもいいって、条件だったじゃねーかよ! どいつもこいつも、大学大学大学! 勉強なんてなんの役にもたたねーじゃん! 次で10社目か。さすがに凹むな」

場面転換。

担当者「織原さん。バイトでいいのであれば、ゲームのデバッカーの仕事があります」

佑馬「デバッカー? まあ、ゲーム関連であれば何でもいいです」

担当者「……」

場面転換。

社員「それじゃ、織原さんには、このゲームのデバックをお願いします。このチェック項目にそって、テストしてください」

佑馬「わかりました」

場面転換。

ゲームの音。

佑馬「……給料はコンビニより安いけど、ゲームしてるだけで金貰えるっていうのがいいよな」

場面転換。

ゲームの音。

佑馬「んだよ、このクソゲー。全然、クリアできないじゃん」

ベルが鳴り響く。

佑馬「げ! やべ、もう終業時間だ。えっと、チェック項目、チェック項目……。うん、たぶん、出来てたと思うから、まる、まる、まる、……と。あと、備考にゲームバランスがおかしいのと、もっとこうした方が良いっていうのを書いておこうかな」

場面転換。

佑馬「あのー。次から違うゲームをやらせてもらえませんか?」

社員「え? もうチェック終わったんですか? 早いですね。じゃあ、次はこれをお願いします」

場面転換。

ゲームの音。

佑馬「んだよ、前のよりもクソゲーじゃん! 違うゲームに変えてもらおうっと」

社員「織原さん。ちょっといいですか?」

佑馬「はい?」

社員「これ、ホントにテストしました?」

佑馬「え?」

社員「織原さんのデータ見ましたけど、この項目の条件を満たしてないのに、チェックに丸がついてますけど」

佑馬「あー、えっと、条件がわからなくて」

社員「なんで、聞かないんですか?」

佑馬「でも、これって基本的な部分なので、大丈夫ですよ。このジョブのとき、動いていたので」

社員「……はあ。あと、備考欄なんですけど、こういう意見を書くのは止めてください。織原さんはデバッカーなんですから」

佑馬「いや、絶対、こうした方が面白くなりますって! 俺、色々ゲームやってるんで、詳しいんですよ」

社員「……織原さん、明日から、来なくていいですから」

佑馬「……は?」

場面転換。

公園のブランコに座っている佑馬。

佑馬「なんなんだよ。ちゃんと説明しないのが悪いんだろ。教えてくれないと、できないって普通」

ブランコがキコキコ鳴る。

佑馬「くそ! 家も追い出されたし、どうすりゃいいんだよ」

ブランコから降りる佑馬。

佑馬「俺、社会人って、もっと自由だと思ってた……。学校になんか行かなくていいし、勉強しなくていいし、お金もいっぱいもらえるもんだと思ってた……。くそ! くそ! くそ! こんなはずじゃなかったのに!」

場面転換。

携帯のアラームが鳴る。

佑馬「はっ!」

ガバッと起き上がる佑馬。

佑馬「あれ……? ここは……?」

場面転換。

職員室のドアが開き、佑馬が入って来る。

佑馬「先生、相談があるんですけど」

教師「おう、どうした織原」

佑馬「俺、将来、ゲームを作る仕事をしたいんです」

教師「ほう。ゲームか」

佑馬「それで、ゲームの仕様を考えるディレクターを目指すつもりなんですけど、まずはプランナーからかなって思ってます」

教師「お、おう……」

佑馬「それには数字に強くなりたいと思ってまして……。それで、どこの大学がいいかなって相談したくて」

教師「うーん。ゲーム会社を目指すなら、専門学校とかはどうなんだ?」

佑馬「いえ、ゲーム会社に入るのには、やっぱり大学出ておいた方が、良いみたいです」

教師「……すごいな。自分で調べたのか?」

佑馬「は、はい。色々ありまして……」

教師「そうか。よし! 先生はあんまりそのへん、詳しくないが、一緒に調べていこう。先生も、そっち方面の情報を集めてみるな」

佑馬「よろしくお願いします」

場面転換。

部下「……さん。織原さん。どうしたんですか、ボーっとして」

佑馬「ん? ああ、ごめんごめん。ちょっと昔のこと、思い出しててな」

部下「もうすぐ、ゲームリリースですよ」

佑馬「そうだな。……売れるか緊張するな」

部下「大丈夫です、織原さんの企画ですから、絶対に成功します! 社内でも、面白いって評判ですから」

佑馬「よし、俺のディレクターとしての初のゲーム。リリースだ!」

終わり。

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