その寝癖、直したい

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■概要
人数:3人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
陽菜乃(ひなの) 12歳 小学6年生
樹生(みきお) 10歳 小学4年生
母親 ※みきおの母親 38歳

■台本

陽菜乃(N)「私の近所に、いつも物凄い寝癖を付けた男の子がいる。なんていうか、どうやって寝たら、そんなふうに寝癖が付くのってくらい、酷い。近所ってことで、よく一緒に学校に行くんだけど、一緒に歩いているのが正直恥ずかしいレベルだ。でも、年頃の男の子だし、ストレートには言えない。……困った。なんて言えばいいんだろう」

場面転換。

通学路を陽菜乃と樹生が歩いている。

樹生「ふわあ……」

陽菜乃「眠そうね。夜更かしでもしたの?」

樹生「……ううん。その逆」

陽菜乃「……逆って、早起きでもしたの?」

樹生「あー、うん。そんなとこ……」

陽菜乃「ふーん。って、あ、樹生。ボーっとして歩いてたら危ないでしょ」

樹生「あー、うん。ごめん。大丈夫だよ」

陽菜乃「もう。危ないってば。だから、こっち側を歩きなさいっていってるのに」

樹生「いいんだってば。男は車道側って決まってるんだから」

陽菜乃「なにそれ? どんなルール?」

樹生「それより、陽菜乃ちゃん。夏休みはどこか出かける予定あるの?」

陽菜乃「夏休み? ううん。別にないけど」

樹生「……ふーん」

陽菜乃「あ、夏と言えばさ、最近、日差し強くなってきたよね」

樹生「え? あー、うん、そうだね」

陽菜乃「樹生、帽子被ったら? 熱中症になったら困るし」

陽菜乃(N)「我ながら、いい誘導よね。帽子を被れば自然と寝癖が直る。これなら、樹生を傷つけずに済みそうだし」

樹生「んー。いいや」

陽菜乃「え? どうして?」

樹生「……帽子苦手なんだよね」

陽菜乃「帽子が苦手って……どういうことよ?」

樹生「あー、ほら、蒸れるし」

陽菜乃「風通しのいいのにすればいいじゃない。なんなら、私が買ってあげようか?」

樹生「いいよ、そんなの。悪いし」

陽菜乃(N)「うーん。寝癖のまま、横を歩かれる方がよっぽど悪いんだけどなぁ」

陽菜乃「……あ、あの子が着てるワンピース、流行りのやつだ。いいなぁ」

樹生「……流行り。陽菜乃はやっぱり、ファッションに興味あるの?」

陽菜乃「当たり前でしょ。これでも女の子なんだから」

樹生「そうなんだ……」

陽菜乃「あっ! 樹生もファッションに興味もったらどう?」

樹生「え?」

陽菜乃「ほら、やっぱり、ファッションを気にする男の子の方がモテるし」

樹生「……陽菜乃もファッションを気にする男の子の方が好き?」

陽菜乃「もちろん!」

樹生「そうなんだ」

陽菜乃「やっぱり、ビシッと髪型をキメてる男の子って格好いいよねー」

陽菜乃(N)「これはどう? 髪をセットすることを意識させる作戦。さすがにこれは効いたんじゃないの?」

樹生「えへへ……」

陽菜乃「……いや、そこは笑って流すとこじゃなくて……」

陽菜乃(N)「ちょっと遠回しすぎたかな。じゃあ、こういうのはどう?」

陽菜乃「そういえば、新しくM社から出た、メンズジェル、凄いらしいね。髪のセットにはもってこいらしいし、寝癖も一発で直るらしいよ」

樹生「あー、うん。それ持ってる」

陽菜乃「持ってるの!?」

樹生「あー、うん。使ってる」

陽菜乃「……使ってるんだ」

陽菜乃(N)「うそー。あれでも直らないんだ。……いや、そんなことはないはず。きっとセットの仕方が悪いんだと思う」

樹生「ね、ねえ、陽菜乃ちゃん」

陽菜乃「なに?」

樹生「……夏休みさ。もし、暇なら一緒に遊ばない?」

陽菜乃「え? ……うん。いいよ」

樹生「ホント!?」

陽菜乃「でも、その代わり条件があるの」

場面転換。

インターフォンを押す陽菜乃。

母親がドアを開ける。

母親「あら、陽菜乃ちゃん、いらっしゃい」

陽菜乃「おばさん、こんにちは。樹生、いる?」

母親「うん。朝から、気合入れて、髪をセットしてるわ。ふふふ」

陽菜乃「そうですか」

陽菜乃(N)「よし、作戦成功! 名付けて、無理やり髪をセットさせる大作戦。一緒に遊ぶ条件として、髪をキメてくることってしたのよね」

そこに樹生がやってくる。

樹生「お待たせ。なかなか、髪がキマらなくて」

陽菜乃「え……?」

陽菜乃(N)「そこにはいつも通りの髪型の樹生が立っていた。……ってことは、あれは寝癖じゃなくて、セットしてたってこと? ……うーん。困った。なんて言えばいいんだろう……」

終わり。

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