【声劇台本】プロミス・リング

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
尊(たける)
朱莉(あかり)
その他

■台本

夏祭り。

尊と朱莉が7歳の頃。

尊「朱莉、これ、プレゼント」

朱莉「これって、指輪?」

尊「うん。僕と朱莉でお揃いの指輪」

朱莉「どうしてお揃いなの?」

尊「大きくなったら、僕と結婚して欲しいんだ。だから、その約束の指輪」

朱莉「ありがとう、尊くん! 約束だよ! この約束、忘れないでね」

尊「うん! もちろんだよ!」

場面転換。

9年後。空港。

朱莉「尊くん、本当に行くの?」

尊「ああ。本場でデザインの勉強をしたいんだ」

朱莉「そっか……。高校は一緒に過ごしたかったな」

尊「ごめん。でも、俺、絶対にデザイナーになりたいんだ」

朱莉「うん。わかった。頑張ってね」

尊「なあ、朱莉。俺がプロのデザイナーになったら……」

朱莉「え?」

尊「い、いや、なんでもない。それじゃ、行って来る」

朱莉「うん……。元気でね」

歩き出す尊。

尊「絶対にプロになってやる……いや、一流のデザイナーになって……朱莉にプロポーズするんだ」

場面転換。

10年後。

ニア「タケル、この前のコンテストの結果、出たわよ」

尊「ホントか、ニア!? 見せてくれ!」

尊が結果の書かれた紙を見る。

尊「……」

ニア「……どう?」

尊「ダメだ。最終選考にも残らなかった」

ニア「そっか……。でもさ、次があるよ! 次は頑張ろう!」

尊「……ああ。そろそろ、バイトの時間だ。じゃあな、ニア」

ニア「うん。また明日」

場面転換。

ビル内で清掃の機械を操作している尊。

尊「……」

そこにマークがやってくる。

マーク「ヘイ、タケル!」

尊「マイク。どうしたんだ?」

マーク「社長がさ、タケルに正社員にならないかって! タケルの真面目なところが評価されたんだよ! よかったな」

尊「……正社員、か。少し考えさせてもらうよ」

マーク「なんでだよ? せっかくの話なのに」

尊「俺、デザイナーを目指してるからさ」

マーク「タケル、もう27だろ? そろそろ見切りをつける時期なんじゃないのか?」

尊「……」

場面転換。

街中を歩く、尊。

女性「うわー。見て! このウェディングドレス、素敵!」

男性「知ってるか? これのデザインしたの、まだ16歳なんだってさ」

女性「へー、すごい。天才なのね」

尊がスタスタと歩き続ける。

尊「……何やってるんだろうな、俺は」

場面転換。

飛行機が飛ぶ音。

場面転換。

ガチャリとドアを開けて、尊が家に入って来る。

尊「ただいま……」

母親「お帰りなさい。どうだった?」

尊「今日はまだ面接。結果は一週間後だって」

母親「ねえ、尊。その……デザイナーにこだわらなくていいんじゃない? 30前にはちゃんとしたところに就職しておかないと、30歳になったら厳しくなるわよ?」

尊「わかってるよ、母さん。けど、一年はデザイン会社で探すって言っただろ」

母親「そうだけど……」

尊「……」

母親「ああ、そうだ。今日、朱莉ちゃんに会ったわよ」

尊「え?」

母親「あんたねえ。朱莉ちゃんに日本に帰って来てるって言ってなかったの? 驚いてたわよ」

尊「なっ! ちょ、母さん! 朱莉に俺のことしゃべったのかよ!」

母親「え? まずかった?」

尊「……」

場面転換。

尊の部屋。

ベッドにドサッと寝転がる。

尊「朱莉……。会いたいな。……いや、無職な状態で会ってどうするんだよ。……落ちぶれた俺を見せる気か……?」

そのことき、スマホから着信音がする。

尊「ん? メール?」

尊がスマホを操作する。

尊「……朱莉」

場面転換。

朱莉が駆け寄って来る。

朱莉「お待たせ」

尊「ああ」

朱莉「久しぶりだね」

尊「ああ」

朱莉「10年だもんね。尊、一回も帰ってこないんだもん」

尊「ごめん」

朱莉「まあ、いいけど。待つ方の身にもなってよね」

尊「待つ、か……。そういえば、お前、その……今、付き合ってる奴とか、いる……のか?」

朱莉「見て」

尊「……右手の指輪。ってことは婚約してるってことか」

朱莉「……」

尊「だよな。10年だもんな」

朱莉「尊?」

尊「俺さ、すげー、努力したんだよ。寝る魔も惜しんで勉強したんだ。でも、ダメだった」

朱莉「……」

尊「お前のためにって思って、ずっとやってきたのにさ。お前は、その間に男、作ったってわけだ」

朱莉「なによ、その言い方。10年も連絡してこないで、勝手なこと言わないでよ」

尊「ふん、どうせ、くだらない男なんだろ?」

朱莉「え?」

尊「なんだよ、その指輪。プラスチックのおもちゃじゃねーかよ! そんな指輪しか用意できない男なんて、止めとけよ!」

パンと頬を叩く音。

朱莉「最低」

尊「朱莉……」

朱莉「この人のこと、悪く言わないで。すごく、素敵な人なの。私のこと、大切に思ってくれてて……私も、この人のこと、ずっと思い続けてきた人なの」

尊「……っ! か、勝手にしろ!」

走って逃げる尊。

場面転換。

ドアを開けて家に入ってくる尊。

母親「早かったわね。……そういえば、あんた宛に書類来てるわよ」

尊「……明日見る」

場面転換。

ベッドにドサッと寝転がる。

尊「俺って本当に最低だよな。……10年も待たせりゃ、当然か。あいつは待っててくれるんじゃないかって、勝手に思い込んでた……。いつか、一流のデザイナーになって、あいつに告白して……。くそっ! なんで、こんなことになっちまったんだよ。……まあ、約束もしないで10年も待たせた俺が悪いんだよな……。約束……か。約束してれば、あいつ、待っててくれたかな?」

回想。

朱莉「ありがとう、尊くん! 約束だよ! この約束、忘れないでね」

回想終わり。

ガバッと起き上がる尊。

尊「……あっ!」

場面転換。

チャイムを押す尊。

少しの間が開き、ドアが開く。

朱莉「なによ?」

尊「朱莉……。俺……まだ、間に合うかな?」

朱莉「え?」

尊「俺、一流のデザイナーになれなかったけど、まだ仕事探してる途中だけど……ダメダメな俺だけど……ずっとお前のこと、好きだった。……あのときの約束、まだ、有効か?」

ポケットからプラスチックの指輪を出す。

朱莉「……お揃いのプラスチックの指輪。持ってたんだね」

尊「朱莉……。結婚、してくれないか?」

朱莉が尊に抱き着く。

朱莉「バカ! 17年も……待たせすぎだよ」

尊「ごめん」

朱莉「でも、約束守ってくれたから、許してあげる」

尊「……ありがとう」

終わり。

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