【声劇台本】プロミス・リング
- 2021.08.02
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
尊(たける)
朱莉(あかり)
その他
■台本
夏祭り。
尊と朱莉が7歳の頃。
尊「朱莉、これ、プレゼント」
朱莉「これって、指輪?」
尊「うん。僕と朱莉でお揃いの指輪」
朱莉「どうしてお揃いなの?」
尊「大きくなったら、僕と結婚して欲しいんだ。だから、その約束の指輪」
朱莉「ありがとう、尊くん! 約束だよ! この約束、忘れないでね」
尊「うん! もちろんだよ!」
場面転換。
9年後。空港。
朱莉「尊くん、本当に行くの?」
尊「ああ。本場でデザインの勉強をしたいんだ」
朱莉「そっか……。高校は一緒に過ごしたかったな」
尊「ごめん。でも、俺、絶対にデザイナーになりたいんだ」
朱莉「うん。わかった。頑張ってね」
尊「なあ、朱莉。俺がプロのデザイナーになったら……」
朱莉「え?」
尊「い、いや、なんでもない。それじゃ、行って来る」
朱莉「うん……。元気でね」
歩き出す尊。
尊「絶対にプロになってやる……いや、一流のデザイナーになって……朱莉にプロポーズするんだ」
場面転換。
10年後。
ニア「タケル、この前のコンテストの結果、出たわよ」
尊「ホントか、ニア!? 見せてくれ!」
尊が結果の書かれた紙を見る。
尊「……」
ニア「……どう?」
尊「ダメだ。最終選考にも残らなかった」
ニア「そっか……。でもさ、次があるよ! 次は頑張ろう!」
尊「……ああ。そろそろ、バイトの時間だ。じゃあな、ニア」
ニア「うん。また明日」
場面転換。
ビル内で清掃の機械を操作している尊。
尊「……」
そこにマークがやってくる。
マーク「ヘイ、タケル!」
尊「マイク。どうしたんだ?」
マーク「社長がさ、タケルに正社員にならないかって! タケルの真面目なところが評価されたんだよ! よかったな」
尊「……正社員、か。少し考えさせてもらうよ」
マーク「なんでだよ? せっかくの話なのに」
尊「俺、デザイナーを目指してるからさ」
マーク「タケル、もう27だろ? そろそろ見切りをつける時期なんじゃないのか?」
尊「……」
場面転換。
街中を歩く、尊。
女性「うわー。見て! このウェディングドレス、素敵!」
男性「知ってるか? これのデザインしたの、まだ16歳なんだってさ」
女性「へー、すごい。天才なのね」
尊がスタスタと歩き続ける。
尊「……何やってるんだろうな、俺は」
場面転換。
飛行機が飛ぶ音。
場面転換。
ガチャリとドアを開けて、尊が家に入って来る。
尊「ただいま……」
母親「お帰りなさい。どうだった?」
尊「今日はまだ面接。結果は一週間後だって」
母親「ねえ、尊。その……デザイナーにこだわらなくていいんじゃない? 30前にはちゃんとしたところに就職しておかないと、30歳になったら厳しくなるわよ?」
尊「わかってるよ、母さん。けど、一年はデザイン会社で探すって言っただろ」
母親「そうだけど……」
尊「……」
母親「ああ、そうだ。今日、朱莉ちゃんに会ったわよ」
尊「え?」
母親「あんたねえ。朱莉ちゃんに日本に帰って来てるって言ってなかったの? 驚いてたわよ」
尊「なっ! ちょ、母さん! 朱莉に俺のことしゃべったのかよ!」
母親「え? まずかった?」
尊「……」
場面転換。
尊の部屋。
ベッドにドサッと寝転がる。
尊「朱莉……。会いたいな。……いや、無職な状態で会ってどうするんだよ。……落ちぶれた俺を見せる気か……?」
そのことき、スマホから着信音がする。
尊「ん? メール?」
尊がスマホを操作する。
尊「……朱莉」
場面転換。
朱莉が駆け寄って来る。
朱莉「お待たせ」
尊「ああ」
朱莉「久しぶりだね」
尊「ああ」
朱莉「10年だもんね。尊、一回も帰ってこないんだもん」
尊「ごめん」
朱莉「まあ、いいけど。待つ方の身にもなってよね」
尊「待つ、か……。そういえば、お前、その……今、付き合ってる奴とか、いる……のか?」
朱莉「見て」
尊「……右手の指輪。ってことは婚約してるってことか」
朱莉「……」
尊「だよな。10年だもんな」
朱莉「尊?」
尊「俺さ、すげー、努力したんだよ。寝る魔も惜しんで勉強したんだ。でも、ダメだった」
朱莉「……」
尊「お前のためにって思って、ずっとやってきたのにさ。お前は、その間に男、作ったってわけだ」
朱莉「なによ、その言い方。10年も連絡してこないで、勝手なこと言わないでよ」
尊「ふん、どうせ、くだらない男なんだろ?」
朱莉「え?」
尊「なんだよ、その指輪。プラスチックのおもちゃじゃねーかよ! そんな指輪しか用意できない男なんて、止めとけよ!」
パンと頬を叩く音。
朱莉「最低」
尊「朱莉……」
朱莉「この人のこと、悪く言わないで。すごく、素敵な人なの。私のこと、大切に思ってくれてて……私も、この人のこと、ずっと思い続けてきた人なの」
尊「……っ! か、勝手にしろ!」
走って逃げる尊。
場面転換。
ドアを開けて家に入ってくる尊。
母親「早かったわね。……そういえば、あんた宛に書類来てるわよ」
尊「……明日見る」
場面転換。
ベッドにドサッと寝転がる。
尊「俺って本当に最低だよな。……10年も待たせりゃ、当然か。あいつは待っててくれるんじゃないかって、勝手に思い込んでた……。いつか、一流のデザイナーになって、あいつに告白して……。くそっ! なんで、こんなことになっちまったんだよ。……まあ、約束もしないで10年も待たせた俺が悪いんだよな……。約束……か。約束してれば、あいつ、待っててくれたかな?」
回想。
朱莉「ありがとう、尊くん! 約束だよ! この約束、忘れないでね」
回想終わり。
ガバッと起き上がる尊。
尊「……あっ!」
場面転換。
チャイムを押す尊。
少しの間が開き、ドアが開く。
朱莉「なによ?」
尊「朱莉……。俺……まだ、間に合うかな?」
朱莉「え?」
尊「俺、一流のデザイナーになれなかったけど、まだ仕事探してる途中だけど……ダメダメな俺だけど……ずっとお前のこと、好きだった。……あのときの約束、まだ、有効か?」
ポケットからプラスチックの指輪を出す。
朱莉「……お揃いのプラスチックの指輪。持ってたんだね」
尊「朱莉……。結婚、してくれないか?」
朱莉が尊に抱き着く。
朱莉「バカ! 17年も……待たせすぎだよ」
尊「ごめん」
朱莉「でも、約束守ってくれたから、許してあげる」
尊「……ありがとう」
終わり。
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