【声劇台本】水玉パンツ
- 2021.08.25
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
陸(りく
零(れい)
美羽(みう)
■台本
陸が6歳の頃。
ぽたぽたと水が滴る音。
陸「うう……。雨で濡れちゃった」
そのとき、子供の泣き声が聞こえてくる。
陸「あれ? 泣き声? 女の子が泣いてる」
走り寄る陸。
陸「ねえ、どうして泣いているの? 大丈夫?」
その時、風がビューと吹く。
陸「あっ!」
場面転換。
10年後。
陸(N)「俺の初恋の相手との記憶。女の子が泣いていて、その時の俺は大丈夫かと話しかけた。そして、強風が吹いた。それによって女の子のスカートがめくれ、見えてしまった。……水玉模様のパンツが。10年以上たっている今でも、鮮明に覚えている」
陸と零が歩いている。
零「おい、陸!」
陸「ん? ああ、ごめん。なんだ?」
零「なんだ、じゃねえよ。さっきから全くの無反応決め込みやがって」
陸「なあ、零は初恋って覚えてるか?」
零「は? なんだよ、急に」
陸「いや、ちょっと懐かしいこと思い出してさ」
零「ふーん。……初恋ねぇ。俺はベタだけど、幼稚園の先生かな。大人の女性って感じで、憧れの的だったんだよ」
陸「顔とかも覚えてるか?」
零「当たり前だろ」
陸「だよなぁ……」
零「ん? お前は覚えてないのか?」
陸「いや、実はさ……」
場面転換。
零「あはははははは!」
陸「笑うなよ」
零「いやいやいや。初恋の相手なのに、パンツのことしか覚えてねーって、いくらなんでも最低だろ」
陸「うるせーな」
零「それってさ、その女の子に恋をしたんじゃなくて、単にパンツに欲情しただけだろ」
陸「いや、ちげーって。マジで! これはさ、エロとかじゃなくて、なんつーか、純粋な気持ちなんだよ」
零「パンツに純粋な気持ちって言われてもな―。変態度が高まっただけだぞ」
陸「うっせーよ。あー、くそ、話すんじゃなかった」
零「まあ、誰にだって、トラウマになるようなことってあるよな」
陸「人の初恋をトラウマって言うな。……って、その口ぶりだと、お前、トラウマになるようなことあるのか?」
零「……あー、いや、思い出したくねえ」
陸「そこまで言ったなら言えよ。気になるだろ」
零「いやー、ちょっとな……」
陸「お前な―。人のトラウマ聞いておいて、自分のことは隠すのかよ」
零「お、初恋の思い出をトラウマって、自分で認めたな?」
陸「言葉のあやだよ、あや」
零「……絶対に、内緒だからな」
陸「おう」
零「実は、小さい頃さ……」
パラパラと雨が降り出してくる。
陸「うお、雨だ」
零「傘持ってるか?」
陸「あるわけねーだろ」
雨の勢いが増してくる。
陸「やべえ」
零「俺んちで雨宿りしてけよ。なんなら、傘貸すぞ」
陸「お、サンキュー。そうさせてもらうわ」
零「よし、走るぞ」
二人が走り出す。
場面転換。
零の家。
陸「あー、くそ。結構濡れたな」
零「ほら、タオル」
陸「サンキュー。……って、おい、自分だけ着替えるなんて、ズルいぞ」
零「いや、ズルいって言われてもな。ここ俺んちだし、着替えるだろ」
陸「いいなぁ。俺も着替えてぇ。パンツまで濡れて気持ち悪ぃ」
零「さすがに下着は貸すわけにはいかないからな」
陸「ああ。勘弁だ」
零「だよな。誰かの下着を履くなんて、トラウマ級に嫌だよな」
陸「そういや、お前のトラウマ、聞いてなかったな。なんなんだ?」
零「ああ。まさしく、今の話題のそのままなんだけどさ……」
ドアが開いて、美羽が入って来る。
美羽「ただいまー」
零「おかえり。って、お前も見事にずぶ濡れだな」
美羽「あー、マジムカつく、天気予報アテになんない」
零「早く着替えろよ。風邪ひくぞ」
美羽「そうする……って、あれ?」
陸「おじゃましてます」
美羽「陸さん、来てたんだ?」
陸「あ、うん。雨宿りさせてもらってる」
美羽「ふーん。ごゆっくり」
美羽が奥の方へ歩いて行く。
陸「美羽ちゃん、大きくなったな。何歳だっけ?」
零「7歳。小学1年だよ」
陸「ふーん」
ドタドタと勢いよく美羽が歩いてくる。
美羽「さいてー。洗濯物全部濡れてるんだけど」
零「あー。干してたのか」
美羽「どうしよう? 着替えないんだけど」
零「……あ、そうだ」
零が小走りで走って行く。
場面転換。
零「ほら、これでも履いておけ」
美羽「なに、これ? なんで、兄ちゃんがこんなのもってるわけ? そういう趣味?」
陸「……っ」
零「ちげーよ。昔、無理やり母さんに着せられたやつだ」
陸「零……どういうことだ?」
零「ああ。これがさっき言ってたトラウマの話。実は、うちの親がさ、女の子が欲しかったみたいでさ。小さい頃、なにかと俺に女装させようとしてたんだよ」
陸「……」
零「ずっと嫌がってたんだけどさ、今日みたいに雨で着るものがなくってさ。仕方なくて一回だけ着たんだよな。でも、着てからさ、やっぱり嫌でガン泣きしてさ、家を飛び出したんだよ。あー、くそ、俺の黒歴史だ。思い出したくもねえ」
陸「ち、ちなみに、それ、いつ頃だ?」
零「えっと、10年くらい前かな」
陸「……お前かー! ふざけんなー」
零「は?」
陸(N)「こうして、俺の初恋は見事に砕け散り、代わりにトラウマとなったのだった」
終わり。
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