■関連シナリオ
■概要
人数:2人
時間:10分程度
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
雨宮 さくら(29)
川岸 七海(29)
■台本
さくら(N)「七海とは高校時代からの付き合いで、卒業してから10年たった今でも、なにかと友達関係は続いている。何も考えてなくて、自己中で、迷惑ばかりかけてくる。何度も、関係を絶とうと思ったけど、気が付けば、ずるずると続いている。いわば、腐れ縁というものなんだろう」
スマホの呼び出し音。
ピッと、通話ボタンを押す音。
さくら「もしもし? どうしたの? また、フラれたりした?」
七海「うう……。さくら……。私、私……」
さくら「え? 七海? どうしたの?」
七海「うう……」
さくら「待ってて! 今行く!」
通話を切るボタンを押す音。
さくら「……いつものフラれたときの感じと違う。あれは……本気で泣いてる声だった」
走り出すさくら。
さくら(N)「……高校で、七海と初めてあったときは……私の方が泣いてたっけ」
回想。
さくら「(すすり泣く声)」
七海「あれ? 同じクラスのさくらさん、だよね?」
さくら「……七海さん?」
七海が横に座る音。
七海「うんうん。フラれた時は思いっきり、泣くといいよ。逆に泣かないと吹っ切れないものだよ」
さくら「……どうして、私が……泣いてる理由が……フラれたって……なってるの?」
七海「え? だって、女の子が泣く理由って、男にフラれたときくらいでしょ?」
さくら「……ペットのカナリアが逃げちゃったの……」
七海「……あ、そうなんだ。まあ、そういうときも泣けばいいと思うよ」
さくら「なんか、対応が雑じゃない?」
七海「そ、そんなことないよ?」
さくら「すごい目が泳いでるんだけど」
七海「ほら、私、水泳得意だから」
さくら「ぷっ、なにそれ? 意味わからないんだけど」
七海「やっと笑った。やっぱり、さくらさんは笑顔の方が可愛いと思うよ」
さくら「え? そ、そう? ありがと……」
七海「少しは立ち直った?」
さくら「うん。少し気持ちは晴れたかな」
七海「そっか。それなら……。ふぎゃーーー!」
さくら「へ? ど、どうしたの、急に?」
七海「私、フラれたの―!」
さくら「は?」
七海「今度はさくらさんが、私を慰めてー」
さくら「え? あー、えっと……。そういうときは泣けばいいよ」
七海「……なんか対応、雑じゃない?」
さくら「そ、そんなことないよ?」
回想終わり。
さくらが走る音。
さくら(N)「思えば、あれからずっと七海は私と一緒にいてくれたんだ……」
回想。
さくら「ねえ、七海。どうして七海は私と一緒にいてくれるの?」
七海「なに、急に?」
さくら「いや、ほら。私と七海って、全然違う性格じゃない? 周りからもさ、一緒にいるのが不思議っていわれるんだよね」
七海「地味なさくらと一緒にいれば、私が引き立つでしょ!」
さくら「張り倒していい?」
七海「あー、嘘嘘! 冗談だって! ……さくら、友達、いないでしょ?」
さくら「なに? 哀れみってこと?」
七海「違うってば。一人でいる寂しさを知ってるさくらなら、私を一人にしたりしないでしょ?」
さくら「……」
七海「それに、女同士なら、フラれることもないから、安心だし」
さくら「……なによそれ?」
七海「あははは。それに、一番の理由はさくらと一緒にいると、楽しいから、かな」
さくら「七海……」
回想終わり。
さくら(N)「七海はいつも我儘で、自分のことしか考えなくて……。でも、その底なしの明るさが、私を和ませてくれた」
回想。
さくら「あーあ。ついに私たちも社会人か―。不安だなぁ」
七海「そうだよねー。……やっぱり留年すればよかったね」
さくら「……いや、そこは同意できないよ」
七海「ねえ、さくら。約束してほしいことがあるの」
さくら「どうしたの? 改まって」
七海「お互い、仕事が忙しくなったら、こうやって頻繁には会えないと思うの」
さくら「うん、まあ、そうだね」
七海「でも、本当に困ったことがあったら、お互い、何においても助けに行くって約束してくれない?」
さくら「……うん。いいよ。七海が困ってるなら、私、すぐに助けに行くよ」
七海「よかったー! 私がフラれた時、さくらがいなかったら、どうしようかと思ったよー」
さくら「……結局、自分のことだけしか考えてないんだね」
回想終わり。
さくらが走る音。
さくら(N)「……七海はしょっちゅうフラれるから、気付けば、学生のときと同じくらい会ってる気がする。仕事で嫌なことがあっても、七海と愚痴を言い合えば、すぐにすっきりした。……私が今まで頑張れてこれたのは、七海のおかげだ。七海がいたから、今の私がいる。だから、七海が困っていたら、私が助ける。それが親友の役目なのだから」
さくらが立ち止まり、ドアを開ける音。
さくら「七海! どうしたの!?」
七海「さくらー!」
七海が抱き着いてくる。
さくら「七海、落ち着いて。何があったの?」
七海「この映画、すっごい感動するの! もう、涙が止まらなくなっちゃって……」
さくら「……」
七海「一緒に見よ? お酒飲みながら」
さくら「……友達、辞めたい……」
さくら(N)「おそらく、私たちの関係はこれからもずっと続いていくことだろう。この先もずっと、私はこの腐れ縁に振り回されていく。でもそれは、そんなに悪い気はしないのだ」
終わり。