【フリー台本】不思議な館のアリス 話のネタ

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■概要
人数:1人
時間:10分程度

■ジャンル
ボイスドラマ、現代ファンタジー、シリアス

■キャスト
アリス

■台本

アリス「いらっしゃいませ。アリスの不思議な館へようこそ」

アリス「ふふ。最近はよくいらっしゃいますね。私としても、話ができて嬉しいですよ」

アリス「……おや? どうかしましたか? なにかバツが悪そうな表情ですが……」

アリス「……ああ。なるほどですね。そうですね……」

アリス「確かに、あなたがおっしゃるように、変わった話というのはそこまで多くありません」

アリス「妹も、よく、次にあなたに話すことを色々と思い出そうとしているみたいですよ」

アリス「ああ。別に、そこはあなたが心配するところではありません」

アリス「正式に依頼をいただいた上でお話をさせていただいているのですから」

アリス「なので、私たちのことを気にして、来るのを控えることはしなくて大丈夫ですよ」

アリス「ふふ。そうですね。今、ちょうど、いいお話を思い出したので、本日はこの話をしましょうか」

アリス「今回はある情報屋の男のお話です」

アリス「その情報屋の男は、顔が広く、様々な知り合いを介して情報を得ていました」

アリス「その情報の精度の高さから、警察からも時々、情報を求められたそうです」

アリス「ですが、捜査協力といっても、報酬はごくわずかです」

アリス「男は人の好さと顔の広さから、色々な人の悩み事を聞いては、相談に乗ったりして少額のお礼を貰うなどして、ギリギリ生活をしていました」

アリス「そんな苦しい生活をしている中、男の元に、雑誌の記者がやってきたのです」

アリス「記者は男に、何か面白い話はないかと言ってきました」

アリス「男は何個か、知っている面白い話を記者に語りました」

アリス「少しばかりのお礼を貰ったときは、特に気にしてませんでした」

アリス「ですが、数週間後。記者は再び、男の元に現れます」

アリス「なんでも、前回聞いた話を雑誌に掲載したところ、話題になり、雑誌の売り上げが倍増したそうです」

アリス「記者は男に、今まで見たことのない金額の報酬を渡し、新しい話題が無いかを聞きます」

アリス「男は喜んで、知っている面白い話を記者に伝えました」

アリス「そして、また、数週間後、記者は男の元にやってきて、多額の報酬と新しい話を聞きたいと言ってきます」

アリス「数年の間、男は多額の報酬と引き換えに面白い話を伝えていきました」

アリス「男は得た報酬により、生活水準も上がり、また、お金を得たことで傲慢になっていったそうです」

アリス「そんなとき、ついに男は話すネタが切れてしまいました」

アリス「男は焦りました。話のネタが無くなれば、記者から報酬が貰えなくなります」

アリス「そこで、男は話を捏造して記者に話します」

アリス「数週間後、記者は男に対して、苦情を言ってきました」

アリス「記者は今まで、雑誌に掲載する際に男から聞いた話の裏を取った上で、実話としていたそうです」

アリス「つまり、読者も本当の話だったからこそ、その雑誌を読んでいたというのです」

アリス「ですが、前回聞いた話はいつもと違い、嘘くさく、裏を取ろうとしたが、全くそんな事実はなかったことに対して、男を攻めます」

アリス「男は謝り、ネタを仕入れるまで少し待ってほしいと言います」

アリス「男は慌てて、顔見知りから、ネタを仕入れようとします」

アリス「ですが、全く上手くいきません」

アリス「それは、まず、男が傲慢な性格になっていたこと。それと、今までは知り合いの困りごとの相談に乗っていたことで、自然と情報が入ってきていたのだと気づきます」

アリス「男は知り合いに困ったことは無いかと聞いて回りますが、知り合いたちは困りごとを記者に流して、多額の報酬を貰おうとしていると知っている状態です」

アリス「男に対して、悩みを相談する人はいなくなりました」

アリス「男は追い詰められます」

アリス「今更、以前の生活には戻れません。ですが、ネタも仕入れることができていないのです」

アリス「そこで男は考えました。ネタがないなら作ればいいと」

アリス「……創作ではなく、実際に、自分で起こした事件を記者に話すということをするようになりました」

アリス「自分で起こしたことで、詳しい情報を言うことができたこともあり、その雑誌の売り上げはさらに上がっていったそうです」

アリス「そして、もちろん、男に支払われる報酬も上がっていきます」

アリス「そのことで、男の行動は徐々に過激になっていきました」

アリス「最初は軽犯罪スレスレなものでしたが、エスカレートしていくことで、警察が動き出すほどの犯罪を行うようになっていったのです」

アリス「それでも、男は止まることはせず、さらに過激な行動を求めていきました」

アリス「……ええ。あなたの言う通り、そんな状態は長くは続きませんでした」

アリス「男は捕まってしまいます。そして、その膨大な数の余罪により、無期懲役となってしまいました」

アリス「そして、記者はこのことを雑誌で書いています」

アリス「皮肉なことに、その記事を書いたとき、過去最大の売り上げがあったそうですよ」

アリス「その後、男から話を聞くことができなくなったことで、その雑誌は人気がなくなり、今では廃刊になっているみたいですね」

アリス「ふふ。求められてしまうと、つい、行動が過激になってしまう人は結構、多いです」

アリス「他人事であれば、自分はそんなことはしないと思うのですが、いざ、実際にそういう場面になったら止まれないものです」

アリス「……随分と説得力がある、ですか?」

アリス「そうですね」

アリス「なぜ、説得力があるかというと、私も同じことをしているからです」

アリス「なので、あなたは何も気にせず、これからも話を聞きに来てください」

アリス「……ふふ。冗談ですよ」

アリス「……え? どの部分が、冗談か、ですか?」

アリス「それはあなたの想像にお任せします」

アリス「今回のお話はこれで終わりです」

アリス「ふふ。それではまたのお越しをお待ちしております」

終わり。

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