20年後の君へ

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■概要
人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
健斗(けんと)
大樹(だいき)
桔平(きっぺい)

■台本

公園。(全員、8歳)

健斗「……」

大樹「おい、健斗! なに、女の子をジーっと見てるんだよ」

健斗「大ちゃん、違うよ! 僕は……」

桔平「はいはい。いいからいいから。で、大樹、いいこと思いついたってなに?」

大樹「ふふふ。よくぞ聞いてくれた、桔平よ。タイムカプセルを埋めようと思ってな」

健斗「……タイムカプセル?」

場面転換。(20年後)

神社。物凄く込み合っている。

健斗がお賽銭を投げて、手を叩いてお参りをする。

健斗(N)「今年こそ、彼女ができますように」

大樹「おい、健斗。後ろがつっかえてるんだから、早くしろよ」

桔平「まあまあ。今年こそ、彼女欲しいって、必死で願ってるんだ。その執念に免じて多めにみてやろうよ」

健斗「ち、ちげーって、桔平! そんな願いなんかしてねーよ!」

大樹「なあ、帰りにおみくじ、引いてこうぜ」

桔平「ホント、大樹はおみくじ好きだね。どうせ、今年も微妙に、小吉とかなんだから、やめときなって」

大樹「うっせー」

場面展開。

健斗の部屋。

大樹「じゃあ、改めて……明けまして、おめでとう!」

桔平「かんぱーい!」

健斗「かんぱーい!」

缶ビールで乾杯する3人。

大樹「ぷはー! やっぱ、ビールうめー」

健斗「ホントは、こういうときは、日本酒なんだろうけどね」

桔平「にしても、今年も、相変わらず、このむさ苦しいメンバーか」

大樹「何言ってやがる。桔平は今年、結婚するんだろ? 来年はこうやって集まれるかわかんねーだろ」

桔平「そういう大樹だって、アメリカに栄転だろ? そもそも、日本にいるかわかんねーじゃん」

大樹「……いや、正月くらいは帰ってくるさ」

桔平「俺だって、正月は2人に会うからって、約束はしてるから、集まれるよ」

大樹「健斗の方は……心配することでもねーか」

健斗「うっさいな!」

桔平「健斗はそろそろ就職した方がいいよ。さすがに」

健斗「だから、うっさいって! するよ! 今年中に絶対!」

大樹「じゃあ、さっきの初詣で熱心だったのは就職が決まるようにって、お願いだったのか」

健斗「も、もちろんだよ」

桔平「にしても、あの頃は、大人になってもこのメンバーで集まるだなんて思わなかったのにな」

大樹「あの頃って?」

桔平「小学生の頃さ。1年のときから一緒のクラスでつるみ始めて、20年か。なげーよな」

大樹「うーん。小学のときは、逆にバラバラになるっていうのが想像できなかったけどな」

健斗「確かにねー」

桔平「……うん。そうだね。3人の関係がずーっと続いてくもんだと思ってたね。まあ、実際、そうなってるんだけど」

大樹「そういえば、健斗って、小学の頃、宇宙飛行士になりたいって言ってたよな?」

健斗「へ? そうだっけ?」

桔平「あー、言ってたね。なんか、あの頃、凄い調べてなかったっけ? 宇宙飛行士のこと」

健斗「……覚えてないな―」

大樹「それが、今や、立派なニートだもんな」

健斗「ニートって言うな! 今は充電期間なんだよ!」

大樹「あっ!」

健斗「……どうしたの、大ちゃん?」

大樹「思い出した」

桔平「なにを?」

大樹「タイムカプセル」

場面転換。

公園の近くの林。

健斗「うわっ! さむっ!」

桔平「早く掘り返して帰ろう」

大樹「えーっと、確か、この辺に埋めたんだったよな?」

ざくざくと穴を掘る音。

健斗「犬とかに掘り返されてないかな?」

桔平「別に臭いのするもの埋めたわけじゃないから、大丈夫だろ」

大樹「なあ。健斗と桔平は、何埋めたか覚えてるか?」

健斗「全然」

桔平「俺も」

大樹「俺も全然覚えてねーんだよな。大体、タイムカプセルを埋めたことを思い出せただけでも奇跡だぜ」

そのとき、スコップが何かに当たる音がする。

大樹「お! あったあった!」

桔平「あー、確かに見覚えがある」

大樹「じゃあ、開けるぞ」

カパッと箱を開ける音。

健斗「……手紙?」

大樹「あ、封筒になんか書いてある」

桔平「20年後の君へ、だって」

大樹「小学生のくせに妙にポエミーだな」

桔平「じゃあ、それぞれ、自分の分を見ようか」

大樹「おう」

健斗「ありがと」

3人が封筒を開けて、中の手紙を開く。

大樹「ぷっ!」

桔平「ははは」

健斗「……」

大樹「いやー、ハッキリ思い出したわ。あの時は、理想の大人になってるはずの、自分に向けて手紙を書いたんだよな」

桔平「俺のは、手紙っていうか、年表だ。未来の自分がこうなってるはずのって。……ちなみに、今の年齢だと、プロサッカー選手で、イングランドチームに所属してることになってる」

大樹「あはははは。中学にはもう、サッカー辞めてたのにな」

桔平「膝を壊したんだから仕方ないだろ。それより、大樹は?」

大樹「医者だって。世界中を飛び回って、色々な病気の人を治してるはずだってさ」

桔平「まあ、世界中を飛び回ってるっていうのは合ってるんじゃない?」

大樹「まあな。……けど、変わるもんだよな。考えることなんて」

桔平「そりゃそうだよ。20年だよ、20年。逆に変わらない方がおかしいって」

大樹「そりゃそうか。小学生の頃と同じ考えって方が、変わってるよな」

桔平「そうそう」

大樹「で、健斗はなんて書いてあったんだ?」

健斗「へ? あー、うん、えっと、ちゃんと宇宙飛行士になってるかって」

桔平「ぷっ! まあ、まずは就職だな」

大樹「そうそう。頑張れよ」

健斗「ははは……」

健斗(N)「……ちなみに、過去の俺が、今の俺に宛てた手紙には、本当はこう書いてあった。『可愛い女の子と結婚してるよね?』。……うっせーよ! 結婚どころか、彼女さえいねーよ! ……それにしても、俺、小学生の頃から考えてること、変わってねーな」

終わり。

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