鼻歌

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■概要
人数:4人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
翔(しょう)
汐里(しおり)
後輩
母親

■台本

翔(N)「ふと、何気なく、無意識に出た鼻歌。だけど、その曲が何の曲か思い出せないというのは、誰でも一度は経験したことがあるのではないだろうか」

風呂の中。
湯船につかっている翔。

翔「ふーふふ、ふふーん~(鼻歌)。……ん?」

ピチャンと天井から水滴が落ちる。

翔「あれ? この曲、なんだっけ?」

場面転換。
リビング。
風呂上がりの翔がやってくる。

翔「なあ……」
汐里「なに?」
翔「ふーふふ、ふふーん~(鼻歌)」
汐里「え? なに急に?」
翔「この曲、なんだっけ?」
汐里「……もう一回いい?」
翔「ふーふふ、ふふーん~(鼻歌)」
汐里「んー。いや、聞いたことないけど」
翔「うっそ!? なんか、すげー頭に残ってるんだけど。有名な曲じゃないの?」
汐里「さあ?」
翔「おーい、もう少し真剣に考えてくれよ」
汐里「そんなことより、あなた。美香が眠そうだから、寝かせてあげて」
翔「お、おう……。美香。歯磨いて寝るぞー」

場面転換。
会社。仕事をしている翔達。

後輩「あ、先輩、そろそろ昼飯にしませんか?」
翔「お、いいね。どこ行く?」
後輩「通りの奥にある喫茶店にしません? 俺、あそこのパスタ食べたくなっちゃって」
翔「あー、わかる。あそこのパスタ美味しいし、落ち着く雰囲気だよな」
後輩「あそこの店の選曲がいいんですよね」
翔「……曲、か」
後輩「ん? どうかしたんですか?」
翔「なあ、この曲、知らないか? ふーふふ、ふふーん~(鼻歌)」
後輩「……え? いやぁ、聞いたことないですね」
翔「やっぱりか。なんか、ふと思い浮かんで気になってさ」
後輩「歌なんですか? 歌詞、思い出せます?」
翔「歌詞……歌詞か……。えーっと、ぼーくは、いつーも~、マ~……あー、ダメだ。思い出せない」
後輩「変わった歌ですね。……ちょっと待ってください」

後輩がスマホを操作する。

後輩「……あれぇ?」
翔「どうした?」
後輩「歌詞で検索しても、出てこないですね」
翔「マジか……」
後輩「まあ、こういうのって、忘れたころにパッと思い出すものですよ」
翔「あー、くそ。余計、気になるー」

場面転換。
翔の家。リビング。

翔「ぼーくは、いつーも~、マ~……マ~、ああ、くそっ!」
汐里「まだ思い出せないの?」
翔「会社でも結構な人に聞いたんだけどさ、誰一人知ってる奴がいなかったんだよ。そうなると余計、気になってさー」
汐里「そんなこと言われてもねぇ」

そのとき、インターフォンが鳴る。

汐里「あ、お義母さんかな?」

汐里が玄関の方へ歩いていく。

翔「ぼーくは、いつーも~、マ~」

ガチャリとドアが開き、汐里と母親が入ってくる。

母親「来たわよー。美香ちゃんは?」
汐里「今、部屋にいますよ。美香―! おばあちゃん来たわよー」
翔「ぼーくは、いつーも~、マ~」
母親「あ、懐かしいわね、その曲」
翔「え? 母さん知ってるの?」
母親「ぼーくは、いつーも~、マ~マがだーいすき~でー」
翔「あー、それそれ! 何の曲?」
母親「あんたが作ったんじゃない」
翔「へ?」
母親「母の日のプレゼントだって言って、私に歌ってくれたのよ」
翔「……そうだっけ?」
汐里「へー。この人がねぇ。もっと聞かせてください」
母親「いいわよ。ぼーくは、いつーも~、マ~マがだーいすき~でー」
翔「やめてくれー!」

翔(N)「ふと、何気なく、無意識に出た鼻歌。だけど、その曲が何の曲か思い出せないというのは、誰でも一度は経験したことがあるのではないだろうか。でも、それは思い出さない方がいいこともあるのだ」

終わり。

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