ツンデレの寝言
- 2023.03.08
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、ラブコメ
■キャスト
勇樹(ゆうき)
明日佳(あすか)
士郎(しろう)
■台本
教室内。
明日佳「あははは。もー、やめてよぉ」
明日佳が楽しそうに話しているのを見ている勇樹。
勇樹「……」
士郎「よお、勇樹。なーに、明日佳ちゃんのこと、ボーっと見てるんだよ?」
勇樹「馬鹿、違うって」
士郎「可愛いよな、明日佳ちゃん。お前が見とれるのもわかる」
勇樹「だから、違うって」
士郎「小学校から同じ学校だったんだっけ?」
勇樹「ん? まあ、な」
士郎「なるほどなぁ。だからか」
勇樹「なにがだ?」
士郎「明日佳ちゃんがお前にだけ、厳しい理由」
勇樹「え? あいつ、俺にだけ厳しい?」
士郎「……気づいてなかったのかよ。大体、あんな笑顔、お前の前でするか?」
勇樹「……うう。なんでだ? 俺、なんか嫌われるようなことしたか?」
士郎「中学の時までは仲が良かったんだろ?」
勇樹「ああー、まあ、普通に。一緒に帰ったり、時々、一緒に映画見たりしたかな」
士郎「それが今では、文句を言われるときくらいしか、話さないと?」
勇樹「なんでだー!」
頭を抱える勇樹。
士郎「まあ、中学生なんて多感な時期だからな。お前、気づかないうちになんか傷つけるようなこと言ったんだろ?」
勇樹「……そんなことはない。……とは言い切れないのがツライ」
士郎「はあ……。ん? 明日佳ちゃん、こっちに気づいたようだぞ?」
勇樹「え?」
顔を上げる勇樹。
明日佳「べー!」
勇樹「うっ……。なんだよ、俺がなんかしたか?」
士郎「あははは。なんか、可愛いな」
勇樹「ま、まあ、否定はしない」
士郎「いや、待てよ……。もしかしたら逆かもしれんぞ」
勇樹「逆?」
士郎「あれだよ。わざと、お前に強く当たってるってやつだ」
勇樹「……なんで、そんなことするんだよ」
士郎「いわゆるツンデレってやつじゃないか?」
勇樹「……んー。けどさ、仮にだぞ? 仮にあいつがツンデレで、俺に対して今はツンだったとしよう」
士郎「うん」
勇樹「けど、それを知ったとろこで、どうしようもなくないか?」
士郎「そんなことないだろ。デレるのを目指して突っ込んでいけばいいじゃねーか」
勇樹「それが通じるのは、確実だったときの場合だけだろ」
士郎「どういうことだ?」
勇樹「……違ってたらどうするんだよ? あいつがツンデレじゃなくて、単に俺のことを嫌ってるって場合はどうなる?」
士郎「問題になるな。最悪、お前が転校になるか、明日佳ちゃんが学校に来なくなる」
勇樹「だろ? だから、現時点で確かめようもないし、どうすることもできないってわけだ」
士郎「んー。……確認できればいいんだろ?」
勇樹「そうだけど、できねーだろ」
士郎「いや、いいこと思い付いた。耳を貸せ」
勇樹「嫌な予感しかしないな……」
場面転換。
放課後の教室。
廊下から教室を覗き込んでいる勇樹と士郎。
士郎「お、やっぱりいた。明日佳ちゃん、木曜はいつもああして、学校に残って本を読んでるんだよな」
勇樹「……なあ、ホントにやるのか?」
士郎「お前は知りたくないのか? 明日佳ちゃんの気持ち」
勇樹「そりゃ知りたいけどさ……薬使うってどうよ?」
士郎「心配するなって。睡眠薬じゃなくて睡眠導入剤なんだから」
勇樹「……けど、都合よく寝言なんて言うか?」
士郎「まあ、言わなかったら言わなかったで、また試せばいいだろ? とにかく、寝言なら本音を言うと思うんだ。聞ければラッキーって感じでさ、やってみたらどうだ?」
勇樹「うーん……」
士郎「もうすぐ文化祭だ。天国になるのも地獄になるのも、お前次第だぞ?」
勇樹「……行ってくる」
勇樹が教室に入っていく。
勇樹「おう、明日佳。何読んでるんだ?」
明日佳「あんたには関係ないでしょ」
勇樹「まあ、そんなこと言うなって」
明日佳「……何、企んでるの?」
勇樹「うっ! べ、別に?」
明日佳「怪しい……」
勇樹「あのさ、明日佳」
明日佳「なに?」
勇樹「ごめん」
明日佳「……なにが?」
勇樹「あー、いや、俺、お前になんかやっちまったかなって思って」
明日佳「……身に覚えないなら、謝る意味ないんじゃないの?」
勇樹「……まあ、そうだな」
明日佳「そういうとこだと思うよ」
勇樹「……そう言われてもな」
勇樹が机にペットボトルを置く。
明日佳「なに?」
勇樹「クリームソーダ。好きだろ、お前」
明日佳「そういうことじゃなくて。貰う意味が分かんないんだけど」
勇樹「あー、まあ、たまにはいいじゃねーか」
明日佳「怪しいし、キモイ」
勇樹「うっ!」
明日佳「まあ、いいけど」
ふたを開けて飲む明日佳。
明日佳「うん。美味しい」
勇樹「なんか、新発売みたいだぞ、それ」
明日佳「ふーん。ま、ありがと」
勇樹「ああ……」
明日佳「……なに?」
勇樹「いや、こうやって2人だけで話すのって久しぶりだよなって思って」
明日佳「あー、まあ、そうかもね」
勇樹「昔はよく一緒に遊んだもんだけどな」
明日佳「小学生のときの話でしょ、それ」
勇樹「なんで、こんなふうになっちまったんだろうな」
明日佳「……さあね」
沈黙になる2人。
場面転換。
机に突っ伏して寝ている明日佳。
明日佳「すーすー」
勇樹「……明日佳?」
明日佳「……」
勇樹「なあ、明日佳。俺たち、昔みたいに戻れないかな?」
明日佳「……」
勇樹「……俺のこと、どう思ってるんだ?」
明日佳「……」
勇樹「ははっ。都合よく、寝言で本音なんて言うわけねーよな」
明日佳「……ん」
勇樹「明日佳?」
明日佳「勇樹……」
勇樹「……」
明日佳「……私」
勇樹「……」
明日佳「あんたのこと……」
勇樹「(ごくり)……」
明日佳「大……」
勇樹「大……?」
明日佳「……嫌い」
勇樹「……っ!」
明日佳「でも……」
勇樹「(かぶせる様に)おい、士郎! くそ、ダメだったじゃねーか!」
涙ぐみながらズカズカと廊下へ歩いていく勇樹。
勇樹「あー、くそ。こんなことなら、聞かなきゃよかったー!」
士郎「お、おい、何があったんだ!?」
勇樹「畜生! 責任取れー!」
士郎「ちょっと待て、落ち着けって!
勇樹「うがあああああ!」
明日佳が顔を上げる。
明日佳「……馬鹿」
明日佳が口を尖らせて、不満そうな顔をする。
明日佳「そういうところがダメだっていうのよ」
大きくため息を吐く明日佳。
終わり。