【シナリオブログ】妖怪退治は放課後に 第3話⑥

○  シーン 7
占星クラブの部室内で、和馬と珠萌が佇んでいる。

珠萌「……これは、すごいね」
和馬「……おかしいなぁ。昨日、大分片づけたはずなのに……」
珠萌「とにかく、片づけちゃわないと」

ガサガサと片づけを始める、和馬と珠萌。

和馬「パフェは、明日奢るから、珠萌さんは帰っていいよ。今日もこれじゃ、絶対遅くなりそうだし」
珠萌「だいじょーぶ、だいじょーぶ。私が言い出したんだから、手伝わせてよ」
和馬「でも、先輩どうしたんだろ? いつも、こんなに散らかす人じゃないのに……」
珠萌「散らかしたっていうより、暴れたって感じじゃない?」
和馬「え? あ……。じゃあ、先輩、また妖怪に襲われたんだ。大丈夫だったのかな」
珠萌「色々、大変なんだね。でもさ、どうしてわざわざ、ここに来るんだろうね?」
和馬「どういうこと?」
珠萌「逃げ込むにしても戦うにしても、こんな狭い部屋だとかえってやりづらいんじゃないかな?」
和馬「確かに……。あっ、でも、もしかしたら、また札の手持ちがなくなったのかもしれない」

珠萌が、ガサガサと引き出しを漁る。

珠萌「(首をかしげて)札ぁ?」
和馬「えっとね、妖怪を退治するのに、霊符って呼ばれる札が必要なんだって。この前も手持ちの札がなくなったから、部室まで取りに来てたよ」
珠萌「(引き出しから、紙を出す)これのこと?」
和馬「うん。それそれ。って、ダメだよ。勝手に触ったら。その札、とっておきって言ってたから、怒られるよ」
珠萌「なんで、わざわざ霊符を使うのかな?弱い奴なら、パパッと自分の力だけでやっつけちゃえばいいのに?」
和馬「え? そんなことできないんじゃないかな? だって、僕、霊符を使わないで、先輩が妖怪を退治してるところ、見たことないよ」
珠萌「ん? でもさ、悪路王の時は、霊符無しで倒してたよね?」
和馬「あ、確かに、そうだったかも。あの時は僕の封印を解くとか、何とか言って……」
珠萌「ああ、なるほど。和馬君の霊力を使ったんだ」
和馬「(ピタリと手を止めて)ねえ、珠萌さん」
珠萌「(にっこりと笑って)なにかな?」
和馬「なんか、陰陽師のこと、詳しくない?」
珠萌「えー、そうかなぁ?」
和馬「それに……。どうして『悪路王』のこと、知ってるの?」
珠萌「ふふふ……。あっはっははははは」
和馬「……珠萌、さん?」
珠萌「あー、可笑しい。和馬君、鈍すぎだよ」
和馬「……」
珠萌「(真剣な声で)私ね、五歳までは、安倍珠萌って名前だったの」
和馬「……?」
珠萌「でも、五歳の時に、家を追い出されちゃって、お母さんの苗字に変わった」
和馬「……追い出された?」
珠萌「ひどい話だよねー。いくら、才能が乏しいからって、家から出すことないよね」
和馬「……」
珠萌「才能が無いって言っても、中くらいって感じなのにさー」
和馬「平均くらいなのに、追い出されるって、そんなの、おかしいよ」
珠萌「んー。いくら安倍本家でも、それくらいじゃ、普通は離縁されることはないんだけどね」
和馬「じゃあ、どうして?」
珠萌「ここで、和馬君に問題です。いつもテストで、六十点しかとれない女の子がいます」
和馬「きゅ、急になんの話?」
珠萌「その女の子は、頑張って、頑張って勉強して、ある日、テストで九十点をとりました。その女の子は、意気揚々とテストの答案を親に見せます。すると、親は凄くがっかりしていました。どうしてでしょう?」
和馬「え? 九十点なら、すごいよね。三十点も点数をのばしたのに……」
珠萌「ブブー。はい、時間切れー。正解は……」
和馬「……」
珠萌「隣の家の子が、千点満点をとったから」
和馬「……あ」
珠萌「セントバーナードもさ、犬の中じゃ大きいけど、象と比べると、やっぱり小さいんだよ」
和馬「……」
珠萌「この霊符、とっておきって言ってたっけ?」

珠萌が、ビリビリと霊符を破る。

和馬「ああっ!」
珠萌「これで千愛先輩は、強力な妖怪に襲われたら、手出しできないってことだよね?」
和馬「珠萌さん!」
珠萌「じゃあ、そろそろ、和馬君には、眠ってもらおうかな」
和馬「……え?」

和馬が後ろから、ゴンと殴られる。

和馬「う……(バタリと倒れる)」
珠萌「私ね、召喚術だけは、得意なんだぁ」
小鬼「ギギギィ」
珠萌「大丈夫。小鬼は力が弱いから、傷にもならないよ」
和馬「……千愛、先輩(気絶する)」

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