【シナリオ】魔王と勇者は忙しい2話

【シナリオ】魔王と勇者は忙しい2話

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 セミの鳴き声が響く。

  そして、町の喧騒。

  その中を歩く、グドラス。

グドラス「くっ、暑い……。それに、毎度毎度なんなのだ、この人間の多さは。やはり、我々魔族が人口の統制を……」

男1「やあ、グドラスさん。相変わらず、今日も死にそうな顔してるな。大丈夫かい?」

グドラス「うるさい、黙れ、殺すぞ。心配ありがとう。私は平気だ」

男2「グドラスさん、リンゴ持って行けよ。今日は本当に暑いし、喉乾いたろう?」

グドラス「ふん、まずそうなリンゴだ。感謝する。いただこう」

  グドラスがリンゴを受け取り、食べながら歩く。

グドラス「ふん、馬鹿な人間どもめ。この私が魔族総司令グドラスと知らずに気軽に話かけてくるとは。私がその気になれば、一瞬でこの場所を灰塵に帰すことができるというのに。……おっと、危ない。通り過ぎるところだった」

  グドラスが立ち止まり、ドアを開く。

  木がきしむような音をさせながら開くドア。

  店の中に入るグドラス。

店長「やあ、グドラスさん、いらっしゃい」

グドラス「気軽に話かけるな。こんにちは、店長。この前、注文していたものは届いているかい?」

店長「ああ、ちょうどさっき、届いたばかりだよ。えっと、ちょっと待ってくれよ」

グドラス「早くしろ、グズ野郎。いつもすまないな。色々と手間をかけさせてしまって」

店長「いや、いいんだよ。お客の要望に応えるのがお店なんだから」

グドラス「ほう、人間のくせになかなか良いことを言うな。痛み入る」

店長「あった、あった。これだこれだ。はい、『女の子の口説き方十選』と『思春期の女性の気持ちが猿でも分かる本』、そして『糞な上司とうまくやっていく方法』の三冊だったね」

グドラス「おお、それだそれだ。いや、本当にあるものなのだな、『糞な上司とうまくやっていく方法』」

店長「グドラスさんは、本当に本が好きだねぇ。この街でここまで本を読むのは、グドラスさんくらいだよ」

グドラス「ふん、半分は私が読むのではないのだがな。それにしても、この前買った『クズの思考は変えられない』と『今更聞けない人間の常識100』は本当に面白かった」

店長「ははは。そう言ってもらえると、仕入れた方は嬉しいよ」

グドラス「これからも、よろしく頼む。で、これが今回の希望する本のリストだ」

店長「はいよ。仕入れておくよ」

グドラス「当然だ。よろしく頼む」

  本を受け取り、店を出るグドラス。

  再び町の喧騒。

  その中を歩くグドラス。

グドラス「……そうだ。ついでに買い出しもしておくか。部下にお土産も買っていくか。この前は物凄く喜んでたからな。まったく……『部下に気に入れる上司の条件』に書いてあった通りだった。まるで預言書だな」

おばあさん「やあ、グドラスさんじゃないか。少し家に寄っていかない……痛たた」

グドラス「よぼよぼのババアが。私を家に招くなど、恐れ多いことなのだぞ。大丈夫か?」

おばあさん「また腰をやっちゃってねえ。痛たた……」

グドラス「まったくババアのくせに、無理をするからだ。……ほら、これを飲むといい」

  グドラスが小瓶を取り出しておばあさんに渡す。

グドラス「それと、荷物を寄越せ、持ってやる」

おばあさん「いつもすまないねぇ。グドラスさんには世話になりっぱなしで。たまには私に恩返しをさせておくれよ」

グドラス「ふん。こんなもの恩に感じる程度のものではない。ババアは黙って、自分の腰の心配でもしてるのだな」

  おばあさんとグドラスが並んで歩く。

おばあさん「ホント、あんたほどの好青年はこの街にはいないよ」

グドラス「ふん、当然だ。私は魔王と同様に唯一無二の存在だからな」

おばあさん「ねえ、グドラスさん。あんた、いい人はいないのかい?」

グドラス「いい人?」

おばあさん「恋人さね。どうだい? もしいないのだとしたら、私の孫娘を貰ってくれないかい?」

グドラス「私が人間の小娘と? 冗談も休み休み言え。私なんかよりも、もっと相応しい人間が現れるはずだ。それに、本人の意思というものもあるだろう」

おばあさん「はあ……。ダメかい。まあ、あんたほどになりゃ、言い寄る娘さんも多いだろうし、仕方ないかねぇ」

グドラス「ああ、そうだ。ついでに聞いておこう。この街にいるソフィアという娘がいるだろう? ご存知か?」

おばあさん「ソフィアちゃんかい? ああ、もちろんさね。グドラスさんと同じくらい、あの子も有名だからねぇ」

グドラス「あの娘、恋人はいるのか?」

おばあさん「なんだい、グドラスさんも、ソフィアちゃんを狙ってるのかい? 確かに、お似合いかもねぇ」

グドラス「いいからさっさと答えろ。いや、狙っているのは私ではないんだがな」

おばあさん「言い寄る男は多いって聞くけど、お付き合いしているって話は聞かないね」

グドラス「そうか。情報、感謝する」

おばあさん「あら、家に着いたわ。荷物ありがとうね」

グドラス「こんな重い物を持つから、腰を痛めるのだ。今度から荷車を使うか、私に声をかけろ」

おばあさん「本当に、ありがとう」

  そのとき、隣の店のドアが開く。

男3「おお、グドラスさんじゃねーか。どうだい、一緒に飲まないかい?」

グドラス「酔っ払いが。昼から酒か?」

店主「まあ、固いこと言わないでさ。飲んでいってくれよ。この前の礼もしたいし。ビール冷えてるよ」

グドラス「(喉をゴクリと鳴らし)……よかろう。少しだけ寄っていってやろう」

  時間経過。

  グドラスが部屋に入ってくる。

  そして、立ち止まる。

グドラス「魔王様。ご命令通り、人間どもの町、ホープスへの侵略準備ができました。あと、こちらが要望されていた、『女の子の口説き方十選』と『思春期の女性の気持ちが猿でも分かる本』です」

魔王「ご苦労だったな。魔族総司令グドラスよ。では、今回も、侵略のプランを聞かせてもらおう」

グドラス「……」

魔王「どうした?」

グドラス「街への侵略は少々、時期尚早ではないでしょうか?」

魔王「なんだと?」

グドラス「争うよりも、人間たちと和平を結ぶというのはいかがでしょう? 人間からは得る物も多いです。本もしかり」

魔王「黙れ! 貴様、魔族の本分を否定するつもりか?」

グドラス「申し訳ございません!」

魔王「街を侵略するのは確定事項だ。貴様は計画通りに、町を攻めればよい」

グドラス「……承知、いたしました」

  時間経過。

  街の喧騒。

  だが、突如、悲鳴が響き渡る。

女「きゃー! 魔物よ!」

男1「ひえっ! 逃げろ、逃げろー!」

  魔族たちの咆哮が響き渡り、人々が逃げ惑う様で大混乱になっている。

グドラス「いいか、お前たち。建物は壊していいが、人は殺すな。今後、貴重な労働力になるのだからな」

  魔族たちの返事のような咆哮。

グドラス「あと、ゆっくりだ。ゆっくり進め」

  再び、魔族たちの咆哮。

グドラス「人間ども! ソフィアという娘を連れて来い! 早く!」

ソフィア「待ってください! 私はここにいます。だから、これ以上、町を襲わないでください」

グドラス「今日こそ、一緒に来てもらうぞ」

勇者「待て! 魔族ども!」

グドラス「やはり来たな、勇者よ」

ソフィア「勇者様!」

勇者「そ、ソフィアちゃん、今日も格好いいところみせるからね」

グドラス「今日こそは、貴様を滅ぼしてくれる」

勇者「ふん、やれるものならやってみろ! いくぞ」

グドラス「うおおおおお!」

  切り結ぶ音。

グドラス(N)「よし、勇者が現れたから、これで帰る大義名分が出来たな。あとはいつも通りやられるだけ。……やれやれ。魔族総司令官というのも大変だな」

終わり

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