【シナリオ】魔王と勇者は忙しい3話

【シナリオ】魔王と勇者は忙しい3話

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イスに座っているグドラス。

ドアのノックする音。

グドラス「入れ」

  ドアを開け、部下の魔族が部屋に入ってくる。

魔族「失礼します。先月の決算報告書を持ってきました」

グドラス「ご苦労」

  魔族から紙を受け取り、眺めるグドラス。

グドラス「うーむ。先月は出費が多いな」

魔族「ですが、何とか黒字には持っていけるかと……」

グドラス「そうだな。今月も頼んだぞ」

魔族「はっ! ……それにしても」

グドラス「なんだ?」

魔族「報告書を作成するなんていう試みを持たれたのはグドラス様が初めてです。おかげで国庫の管理はもちろん、部下の管理までできるようになりました」

グドラス「私も最初は戸惑ったがな。人間もなかなか面白いことを考える」

魔族「下級魔族の働き方のルールを決め、それに乗っ取って仕事をさせる。……まさか、それだけでここまで効率的になるとは思いませんでした」

グドラス「今までは好き勝手やらせていたからな。しかも、魔族は下級になるほど考えなしだからな。非効率ともいえるが、それを我々上位魔族が管理することで、効率化を図る……。簡単なことだが、この二千年、気づけなかったからな」

魔族「また、人間の町で買ったものを、少し高い額で魔族に売る……。これが大当たりでした」

グドラス「基本的な商売の形態らしい。安く仕入れて高く売る。そして、作れない物を諦めるのではなく、作れる人間から仕入れる。……新しい考え方だ」

魔族「知恵……というやつでしょうか」

グドラス「そうだ。人間の体は魔族と比べてぜい弱だが、知恵はかなり発達している。これまで生き残ってこられたのは、そういうことなのかもしれないな」

魔族「裏を返せば、危険な存在です」

グドラス「……」

魔族「近年、気にもかけていなかった人間の武器の高性能化が進んでいます。正直に言って、脅威となっているほどです。下手をすると、数人の人間が下級魔族を倒せてしまうほどに……」

グドラス「確かに、な……」

魔族「滅ぼすべきです」

グドラス「……」

魔族「人間たちの知恵によって、我々魔族の生活が豊かになったのは認めます。ですが、それは諸刃の剣。いつしか、力を付ければ人間は必ず我々の喉元に剣を突きつけるでしょう」

グドラス「……」

魔族「プランDを実行させてください。明日の朝にはホープスの町を灰塵と化してみせましょう」

グドラス「それは却下だと言ったはずだ」

魔族「なぜです!?」

グドラス「あの作戦は、人間だけではなく、その他の動植物の生態系にも影響が出る。また、戦果も皆無に等しい。どう考えても、割に合わないのだ」

魔族「脅威を取り除けます! 確かに今は、戦果はありません。ですが、脅威の芽は、小さいうちに摘み取っておくべきです!」

グドラス「……和平を結べないものだろうか」

魔族「人間と、我々魔族とが、ですか? それは人間と魔族が対等と認めることになります」

グドラス「すまない。今の発言は忘れてくれ」

魔族「グドラス様は、最近お疲れの様子。少しお休みください」

グドラス「ああ、そうしよう。おっと、そろそろ魔王様に報告に行くとするか」

魔族「……それでは私は失礼します。くれぐれも無理はなさらぬように」

グドラス「すまないな、心配かけて……」

  時間経過。

  ドアをノックする音。

  グドラスが部屋に入ってくる。

  そして、立ち止まる。

グドラス「魔王様。先月の決算報告書が出来ましたので、報告させていただきます」

魔王「うむ。聞こう」

グドラス「……あの、先にお聞きしてもよいでしょうか?」

魔王「なんだ?」

グドラス「なぜ、裸なのですか?」

魔王「病気というのを知っているか?」

グドラス「病気……ですか?」

魔王「体に変調をきたす現象らしい」

グドラス「体に変調を? それは覚醒や転生といったことに近い現象ということですか?」

魔王「いや、どうやら悪い方向に変わるらしい。症状としては、頭がいたくなったり、めまいがして立てなくなったり、咳が出たりするらしい」

グドラス「新しい魔法でしょうか?」

魔王「病気というのは、太古の時代から存在していたらしい。自然と人間たちが、かかるらしい」

グドラス「はあ……」

魔王「この病気の利点は、優しくしてくれるのだ」

グドラス「……どういうことでしょう?」

魔王「つまり、病気にかかると、看病という儀式を病気が治るまでずっとしてくれるのだ!」

グドラス「……」

魔王「ずっとだぞ! しかもだ! ご飯も食べさせてくれるのだ! 熱いから、ふー、ふーって!」

グドラス「……」

魔王「さらにだ! 身体を拭いてくれるんだぞ! 優しく、タオルで! おふぅ! 興奮が止まらない!」

グドラス「……魔王様?」

魔王「すまん。取り乱した。とにかく、そういうわけなのだ」

グドラス「つまり……魔王様は、その病気になるために、今、裸になっている。そういうことですか?」

魔王「さすが魔族総司令のグドラスだ。理解が早いな」

グドラス「ですが……その病気という事象、人間特有の現象なのでは?」

魔王「なに?」

グドラス「つまり、魔王様がいくら裸になったところで、魔族は病気というものにならないのではないでしょうか?」

魔王「そんな馬鹿なーーーーーーー!」

グドラス「……」

魔王「私の今までの苦労はなんだったのだ?」

グドラス「お悔みいたします」

魔王「……お前、減俸な」

グドラス「なぜっ!」

魔王「なんか、イラっとしたから」

グドラス「理不尽っ!」

  町中を歩くグドラス。

  立ち止まって、ドアを開く。

グドラス「すまない、店主。時間は早いが、入れて貰えないだろうか?」

店主「あれ? グドラスさん、珍しいなぁ、こんな時間から。いいですよ。さあ、座って」

グドラス「感謝する」

  席に座るグドラス。

店主「何を飲むんだい?」

グドラス「ビールを頼む」

店主「はっはっはっは! こんな昼間からお酒かい? グドラスさんにしては、本当に珍しい」

グドラス「飲まないとやってられなくてな」

店主「何かあったのかい?」

グドラス「……上司と反りが合わなくてな。部下の意見も正しいのだ。だが、それを実行できない理由がある。部下たちの不満も大きくなっていっているのがよくわかるのだ」

店主「板挟みってやつかい? よく聞く話だけど、大変だねぇ」

グドラス「……人間ではよくあることなのか!」

店主「この商売してると、話を聞く機会が多いんだ。で、そういう話は、毎日のように聞くよ。っと、はい、どうぞビール」

グドラス「ありがとう」

  ゴクゴクと喉を鳴らしてビールを飲むグドラス。

店主「はっはっは! いい飲みっぷりだね。お代わりいるかい?」

グドラス「頼む」

店主「はいよ」

グドラス「……さっきの話だが、板挟みというやつはどう解消するのだ?」

店主「その状況にもよるけどね……。あ、そうだ。もう少ししたらいつもの常連が来るから、そいつらに聞くといい。きっといいアドバイスをくれると思うよ」

グドラス「なるほど……」

グドラス(N)「やはり人間からは学ぶべきことは多い。確かに脅威となる可能性はあるが、滅ぼすのではなく、共存の道を模索するべきだ。なんとか、部下たちや魔王様を説得しなければな。……っつ、なんだか、胃が痛くなってきた……」

終わり

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