【ボイスドラマシナリオ】桃色の恋の物語

【ボイスドラマシナリオ】桃色の恋の物語

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ター坊(N)「気が付いたら、好きになっていた。みんなからは怖がられていて、話かけることはもちろん、避けられているあの子。確かに、少し乱暴で怖いけど、こんな僕にも普通に接してくれるし、実はとっても優しいってことを僕は知っているのだ」

  薪拾いをしているター坊(8)。

  ウッちゃん(8)が走ってくる。

ウッちゃん「ター坊、遊びに来たぜ」

ター坊「あ、ウッちゃん!」

ウッちゃん「なんだよ、お前、また落ちてる木なんか拾ってるのか?」

ター坊「薪だよ。町に持っていけば売れるんだ」

ウッちゃん「ふーん。まあ、いいや。それより、遊ぼうぜ」

ター坊「もう少し待ってくれる? あと、一篭分集めないと」

ウッちゃん「嫌だ! すぐに遊ぶぞ」

ター坊「でも……怒られちゃうし」

ウッちゃん「私、思うんだ。私と遊ぶためなら、ター坊が怒られてもいいんじゃないかって」

ター坊「酷いよ!」

ウッちゃん「よし、わかった。じゃあ、こうしよう。怒られるか、私にボコボコにされるか、好きな方を選べ」

ター坊「絶望的な二択だね……」

ウッちゃん「とにかく、難しいことは遊んでから考えようぜ」

ター坊「う、うーん……」

ウッちゃん「鬼ごっこしよう。私が鬼でいいぞ。鬼は捕まえた相手をボコボコにできるルールな」

ター坊「もう、『ごっこ』じゃなくなってるね。それにそのルールだと、僕、怒られる上にウッちゃんにボコボコにされるよね?」

ウッちゃん「いーち、にーい……」

ター坊「しかも、始まっちゃってる!」

ウッちゃん「さーん、よーん、……じゅう! うおおおお!」

ター坊「えええええー!」

ター坊(N)「確かに、ウッちゃんは少し……とても乱暴だけど、本当は優しいんだ。最後にはちゃんと薪拾いも手伝ってくれるし」

ウッちゃん「いやー、今日もいっぱい遊んだな。楽しかった」

ター坊「うん。……半分くらいは怖いって気持ちだったけどね」

ウッちゃん「なあ、また遊んでくれるか?」

ター坊「もちろん!」

ウッちゃん「あはは! ありがとな、ター坊。……けど、本当に大丈夫なのか? その、私と遊んだりして」

ター坊「大丈夫。秘密にしてるし、この山には誰も近づかないからバレないよ」

ウッちゃん「確か、この山って鬼が出るって噂になってるんだよな?」

ター坊「う、うん。何十年も昔の話なんだけどね」

ウッちゃん「まあ、私たちにとって、格好の遊び場ってことだな」

ター坊「そうだね」

  カラスの鳴き声が聞こえる。

ター坊「あ、そろそろ帰らないと。薪拾い手伝ってくれてありがとう」

ウッちゃん「え? もうか……。私、もっとター坊と一緒にいたいな」

ター坊「僕も、一緒にいたいけど……」

ウッちゃん「あ、ごめんごめん。我がままだったな。気にするな」

ター坊「……」

ウッちゃん「それじゃ、気を付けて帰れよ」

ター坊(N)「ウッちゃんと一緒にいた日々は、本当に幸せだった。この関係がずっと続くと思ってた。でも、それは間違いで、突然、僕たちの関係は終わりを告げることになったんだ」

ター坊「……え? 今、なんて言ったの?」

ウッちゃん「……もう、ここには来れない」

ター坊「どうして?」

ウッちゃん「親父に見つかったんだ。ここで、お前と遊んでるところ」

ター坊「……」

ウッちゃん「たぶん、もう島から出られなくなると思う」

ター坊「……」

ウッちゃん「今までありがとな、私と遊んでくれて。(涙ぐんで)本当に楽しかった。絶対に忘れない」

ター坊「……あ、あのね、ウッちゃん」

ウッちゃん「ん?」

ター坊「僕、ウッちゃんのこと、好きだ!」

ウッちゃん「私も、ター坊のこと好きだよ」

ター坊「え!?」

ウッちゃん「おもちゃとして」

ター坊「そんな関係だったの、僕たち!」

ウッちゃん「あははは。冗談冗談。私も、ター坊のこと、好きだよ」

ター坊「僕、大きくなったら、ウッちゃんと祝言を挙げたい」

ウッちゃん「ごめん無理。弱い奴に興味ない」

ター坊「フラれたー!」

  倒れ込むター坊。

ター坊「うう……。まさか、秒で断られるなんて……」

ウッちゃん「いや、それにさ。現実的に無理だろ、私とお前じゃ」

  立ち上がるター坊。

ター坊「そんなこと、ないよ……」

ウッちゃん「いや、無理だって」

ター坊「強くなる!」

ウッちゃん「え?」

ター坊「ウッちゃん、弱い人には興味ないんだよね? なら、僕、強くなる。そうすれば、僕と祝言挙げてくれる?」

ウッちゃん「私より強くないとダメだぞ?」

ター坊「……今、物凄くハードル高くなったけど、僕はやる! 絶対にウッちゃんより強くなるよ!」

ウッちゃん「ははは。期待しないで待ってるよ」

ター坊「うん」

ウッちゃん「……それじゃ、またな、ター坊」

ター坊「またね、ウッちゃん」

ター坊(N)「こうして、僕たちは突然の別れを告げることになる。そして、それから、8年の月日が流れた」

  波の音が響いている。

  浜辺に立つ、ター坊(16)。

  対峙するのはウッちゃん(16)。

ター坊「ウッちゃん。約束を果たしてもらいにきたよ」

ウッちゃん「まさか、本当に来るとはな」

シロ「ター坊さん、頑張って!」

マサル「ター坊、負けるんじゃないぞ!」

キッチー「当たって砕けろだ!」

ター坊「うん。みんなは下がってて。必ず勝って見せるから」

ウッちゃん「本当に私に勝てるとでも思ってるのか?」

部下1「頭目、頑張ってくだせえ!」

部下2「一族の誇り、見せてください!」

ター坊「……尋常に」

ウッちゃん「勝負!」

ター坊「うおおおおお!」

ウッちゃん「ふんっ!」

ター坊「ぶえっ!」

  ター坊が倒れる。

マサル「ワンパン……だと?」

ウッちゃん「帰れ。弱い奴には興味ない」

ター坊「く、くそ……」

ター坊(N)「あっさりとウッちゃんに負けてしまった。だけど、次の日、僕は同じ場所に立っている」

シロ「ター坊さん、頑張って!」

マサル「ター坊、負けるんじゃないぞ!」

キッチー「当たって砕けろだ!」

ター坊「ウッちゃん。約束を果たしてもらいにきたよ」

ウッちゃん「いやいや。昨日、決着ついただろ」

ター坊「確かに決着はついたよ。……昨日はね」

ウッちゃん「おいおい、約束は……」

ター坊「機会は一回なんて話はなかったよね?」

ウッちゃん「……まあ、何回やっても同じだと思うぞ」

ター坊「今度こそ勝って見せる! うおおお!」

ウッちゃん「ふん!」

ター坊「ぶえっ!」

  ター坊が倒れる。

マサル「昨日と全く同じだな……」

ター坊(N)「そして、一か月が経った」

シロ「ター坊さん、頑張って!」

マサル「ター坊、負けるんじゃないぞ!」

ター坊「ウッちゃん。約束を果たしてもらいにきたよ」

ウッちゃん「……その台詞、30回目だぞ」

ター坊「うりゃああああ!」

ウッちゃん「ふん!」

ター坊「ぶえっ!」

ター坊(N)「時が経つのは早く、僕が最初にウッちゃんに挑んでから、1年が経った」

ター坊「ウッちゃん。約束を果たしてもらいにきたよ」

ウッちゃん「……その台詞、365回目だ」

ター坊「うりゃああああ!」

ウッちゃん「ふん!」

ター坊「ぶえっ!」

  ター坊が倒れる。

ウッちゃん「……もういいだろ。お前、死ぬぞ」

ター坊「嫌だ! 絶対に諦めない」

ウッちゃん「いい加減に……」

温羅「ああ、いい加減に止した方がいいな」

ウッちゃん「親父……」

温羅「彼の気持ちは本物だ。お前も、わかってるんだろ?」

ウッちゃん「でも、私より強い男じゃないとダメだって言ったのは親父だろ?」

温羅「彼は強い。お前よりずっと強い心を持っている」

ウッちゃん「親父……」

温羅「そもそも、その考え方が古いのかもしれん。時代は動いている。我々もまた、変わらないといけないのかもしれん」

ウッちゃん「……」

温羅「お前自身の心に従え。お前は5代目温羅だが、一人の女でもある」

ウッちゃん「……親父。私、こいつを信じたい。ずっとこいつと一緒にいたい」

温羅「ははは! まさか、鬼と人が手を取り合える時代が来るとはな」

ター坊「ウッちゃん……」

ウッちゃん「約束通り、祝言、挙げてくれるか?」

ター坊「もちろん!」

ウッちゃん「幸せにしてくれよな、ター坊。………いや、桃太郎」

ター坊(N)「こうして、僕とウッちゃんは祝言を挙げることになった。僕は人間と鬼との橋渡しをしたことで、有名になる。話に尾ひれがついて、僕が鬼を退治したことになったという話になったみたいだけど……」

終わり

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