【声劇台本】いきなりラストバトル3
- 2019.05.15
- ボイスドラマ(10分)
■概要
主要人数:2人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、学園、コメディ
■キャスト
蓮
焚戌
その他
■台本
蓮(N)「腐れ縁。それは切ろうと思っても、切ることができない、厄介な縁。中には腐れ縁を悪くないと思う人もいるかもしれないが、俺は断然、拒否したい派だ。過去に二度、俺ははた迷惑な連中に人生を棒に振れと脅されてきた。三度目はないだろう。そう思っていたが、世間にはこういうことわざがある。二度あることは三度ある……」
町中。
人々が行き交い、その中でティッシュを配っているお姉さんがいる。
お姉さん「駅前のコンタクトレンズのお店、十二支堂です」
蓮がティッシュを受け取る。
お姉さん「ありがとうございます。すぐ近くですので、ぜひ、寄って下さいね」
蓮「あ、はい。今度、寄らせてもらいます」
蓮が歩いていく。
蓮「……可愛い人だったな」
焚戌「ど、どうも、初めまして。焚戌ですぅ」
蓮「……」
蓮(N)「ティッシュ配りのお姉さんから受け取ったティッシュから、突如、手のひらサイズの犬のような形をしたやつが現れた」
蓮「ま、た、お前ら、かっ!」
焚戌「えっと、おめでとうございます。あなたは、なんと……」
蓮「勇者に選ばれたんだろ。あと、それ、カンペ見ながら言うほどのことか? 覚えろよ」
焚戌「えええ! な、なんで知っているのでしょう? ボク、ビックリしました」
蓮「まあ、三回目だからな。それより、勧誘はメールじゃなかったのか?」
焚戌「あ、勧誘の仕方は、各担当者が決められるんですぅ」
蓮「ふーん。確かに、メールとか本とか、そいつらしいアプローチだったな」
焚戌「ボクの場合は、ちゃんと真心込めて、勧誘させていただいてますぅ」
蓮「いい心がけだけど、配ってたのは、あのお姉さんじゃねえか」
焚戌「では、説明させていただきますね」
蓮「話を聞かないのは、全員共通してるな。俺は引き受ける気はないぞ。他を当たれ」
焚戌「え? そんな……引き受けてくれるから、受け取ってくれたんじゃないんですかぁ?」
蓮「ち、ちげーよ。俺は、その……ティッシュが欲しかっただけだ」
焚戌「そうなんですかぁ? おかしいですねぇ。ボクが現れる条件は、目が悪くもないのに、コンタクトのお店の広告を受け取った、かつ、配っているお姉さんが可愛いから思わず受け取ってしまった人の前に出てくるというものだったのですが……」
蓮「うるせーよ! なんで、そんな限定的な条件なんだよ! それに勇者を引き受けることが条件に入ってねーじゃねーか!」
焚戌「能力の発動の仕方なのですが……」
蓮「だから、勝手に話を進めるな。頼むから他の人のところに行けよ」
焚戌「ですが……」
蓮「ほら、見ろ。他の人もティッシュ受け取ってるだろ。あの人のところに行けよ」
焚戌「いえ、あの人はちゃんとコンタクトに興味があって、受け取ってますから」
蓮「……えっと、いるだろ? 俺以外にも、邪な気持ちで受け取った奴」
焚戌「いえ、あなたが初めてですぅ」
蓮「ぎゃー! 恥ずかしい!」
焚戌「ちなみに、三日前からこのティッシュを配っていますが、あなたが最初なんですぅ」
蓮「もうやめて、俺の精神的なライフはゼロよ」
焚戌「ということですので、お願いしますぅ。あなたの人生を犠牲にして、世界を救ってくださいですぅ」
蓮「低姿勢で好感は持てるけど、言ってることは最低だよな」
焚戌「どうして、引き受けてくれないですかぁ!」
蓮「どうして、引き受けてもらえると思ってるんだよ!」
焚戌「うう……。引き受けてもらえないなら、ボク、死にます!」
蓮「そうか」
焚戌「止めるなら、今ですよ?」
蓮「いや、止めないよ」
焚戌「本当に、やっちゃいますよぉ?」
蓮「おう、頑張れ」
焚戌「人でなし! こんないたいけな可愛らしい子犬を見捨てるっていうんですか!」
蓮「自分で言ってる時点で、全然、いたいけじゃねえ」
焚戌「わかりました。話し合いましょう。ボクがあなたを、ちゃんとした人間になれるように、教育いたしますぅ」
蓮「おい、死ぬ話はどうした」
焚戌「ボクのことは、先生と呼んでください」
蓮「なんか、俺の地位、下がってないか?」
焚戌「では、さっそく、勇者としての特訓を始めたいと思いますぅ」
蓮「……いつの間にか、勇者を引き受けることになってるぞ」
焚戌「まずは魔王を探して戦いますぅ」
蓮「いきなり、ラストバトルじゃねーか」
焚戌「魔王も目覚めたばかりのはずなので、今のうちに倒すといいですぅ」
蓮「そういえば、毎回、魔王側ってどうなってるんだ?」
焚戌「どういうことでしょう?」
蓮「ほら、俺、前の二回、すぐにお前らを封印してるだろ? 魔王側って、目の前ですっと消えるみたいな感じなのか?」
焚戌「……さあ、わからないですぅ」
蓮「わからないのかよ!」
焚戌「いいじゃないですか、そんなの」
蓮「お前ら、結構、雑だよな。そんなんじゃ、受けて貰えるものも、受けて貰えないぞ」
焚戌「その心配はありません。もう、受けて貰えましたから」
蓮「俺のことを言ってるなら、間違いだぞ。俺は勇者なんかにならないからな」
焚戌「あの……どうして、そんなに嫌なんですかぁ?」
蓮「無償で、しかも自分の寿命を減らすんだぞ。誰が引き受けるんだよ」
焚戌「なるほどですぅ。ボクにいい考えがありますよぉ」
蓮「嫌な予感しかしないが、言ってみろ」
焚戌「召喚をするから、寿命が減るんです」
蓮「そうだな」
焚戌「なら、召喚しなければ、寿命は減りません」
蓮「まあ、そうだけど、召喚しないで、どうやって魔王に勝つんだよ」
焚戌「グーで殴るんですぅ」
蓮「物理かよ! 大体、俺、運動神経がないから、そういうのは無理だ」
焚戌「わかりましたぁ。では、こうしましょう。魔王が油断しているときに、後ろからバットで殴るんですぅ」
蓮「それ、勇者がやることじゃないよな」
焚戌「正義のためなら、何をしてもよいのですぅ。人間の世界にはこういう格言があると聞きました。『勝てばよかろうなのだ』」
蓮「それ、悪役の台詞な」
焚戌「では、引き受けていただけるということで、正式に契約を……」
蓮「どこをどう聞いたら、引き受けるという話になるんだよ」
焚戌「どうして、引き受けてくれないですかぁ!」
蓮「待て、話がループに入った。もう、終らせよう」
焚戌「引き受けてくれるってことですかぁ?」
蓮「なあ、魔王を倒した後、どうやって封印するんだ?」
焚戌「その手には乗らないですぅ。倒した後に、教えますよぉ」
蓮「ちっ!」
焚戌「さあ、諦めて、勇者になるんですよぉ」
蓮「今までで一番タチが悪いな」
焚戌「ふふふ。ボクの勝ちのようですねぇ」
蓮「うーん。今までの流れだと、本の場合は閉じる。メールの場合は消す。ティッシュの場合は……使う、とかか?」
焚戌「そそそそそ、そんなわけないですぅ! 外れですよぉ! だから、絶対に開けたらだめで……」
バリっという、ティッシュを開ける音。
蓮(N)「こうして、俺は三度目の危機を乗り越えることができた。これで、世界を救ったのは三度目だ。頼むから、もう現れるなよ。世界を救うのは、もうこりごりだ」
終わり
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