【声劇台本】サルとカニの喧嘩
- 2019.06.27
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:2人~4人
時間:10分程度
■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、童話、シリアス
■キャスト
はっちゃん カニ
モンタ サル
ナレーション
長老
臼
その他
■台本
ナレーション「昔々、あるところに仲良しのサルとカニがおりましたとさ。それはそれはとても仲良しで、いつも何をするにも一緒にやっていたそうな……」
ジョキン、ジョキンとハサミで毛を切る音。
はっちゃん「モンタくん、終わったよ」
モンタ「サンキュー、はっちゃん。いやー、すっきりしたぁ」
はっちゃん「ふふふっ! でも、モンタくんくらいだよ。頭の毛を切って、なんていうお猿さんは」
モンタ「最近のサルは身だしなみもちゃんとしなくっちゃな。それに、そうは言うけどさ、こうしてちゃんと切ってくれるのは、カニの中でもはっちゃんくらいだし」
はっちゃん「お互い、変わってるのかもね」
モンタ「かもな。だから、こうして一緒にいられんのかも。俺、はっちゃん以外のカニなんかはつまんなくてさー」
はっちゃん「はははは。僕も、モンタくん、見てて飽きないよ」
モンタ「さてと、そろそろ、森にでも行って、食いもん、探してこねえとな」
はっちゃん「最近、森で食べるものが少なくなってるって聞いてるけど、大丈夫なの?」
モンタ「今年は雨が少なくって、全然、果物がとれねぇんだ。その日の日の食べるもんも、ままならねえ」
はっちゃん「食べ物探すの手伝おうか?」
モンタ「いや、悪いって。今も、毛を切ってもらったばっかりだしさ」
はっちゃん「僕だって、モンタくんの毛を切るの楽しんでやってるし。それに約束でしょ? 辛いことも楽しいことも半分こっこだって」
モンタ「そうだな。じゃあ、手伝ってもらおうかな」
はっちゃん「うん! 行こう行こう!」
場面転換。
森の中を歩く、モンタとはっちゃん。
はっちゃん「うーん。噂に聞いてたけど、酷いね。上が見れなくても、わかるよ。落ちてる葉っぱは枯れてるのばっかりだし、虫もほとんどいない」
モンタ「ほとんど実が成らないから、みんなで取り合いさ。ま、こればっかりは見つけたもん勝ちだからな」
はっちゃん「ごめんね。手伝うって言っておきながら、全然役に立ってないね」
モンタ「んなことねえよ。こうして、話し相手になってくれるだけで、随分と気が紛れるってもんだ。これ、一人だと、絶望的な気分になるぞ」
はっちゃん「あーあ。毎年、たくさん実がなる木でも、近くにあればいいのにね」
モンタ「ははっ! そんな木があれば、サイコーだな」
そのとき、ギュルルルとモンタの腹が鳴る。
モンタ「あー、腹減った。これ以上、動いたら余計腹減るから、今日は帰ろうぜ」
はっちゃん「うん……」
モンタ「じゃあ、な」
モンタが行っています。
はっちゃん「……」
場面転換。
砂浜を歩く、はっちゃん。
はっちゃん「今日こそは、何かモンタくんが食べられそうなもの、見つけないとなぁ」
男の子「うーん。まいったなぁ」
はっちゃん「どうかしたんですか?」
男の子「えっとね、釣り糸が絡まっちゃって」
はっちゃん「僕が切ってあげましょうか?」
男の子「え? ホント? ありがとう!」
場面転換。
走るはっちゃん。
はっちゃん「おーい、モンタくーん」
モンタ「ん? 遅かったな、はっちゃん」
はっちゃん「見て見て! 大きなおにぎりもらっちゃった」
モンタ「おおっ! すげーな。どうしたんだ?」
はっちゃん「人間の男の子のお手伝いしたら、もらったんだ。だから、はい。モンタくんにあげる」
モンタ「は? 何言ってんだよ。はっちゃんがもらったもんだろ? はっちゃんが食べれよ」
はっちゃん「いいんだよ。えっと……僕はもう食べたから」
モンタ「いやいや。2つともはっちゃんが食べろって。はっちゃんだって、このところ、ほとんど食べてないんだろ?」
はっちゃん「いつも言ってるでしょ。辛いことも楽しいことも半分こっこだって」
モンタ「……サンキュー。じゃあ、もらうよ。さっそくいただきまーす」
モンタががつがつとおにぎりを食べる。
モンタ「ふー。美味しかった。じゃあ、俺からははっちゃんに柿のプレゼントだ」
はっちゃん「ええ! 柿、見つけたの?」
モンタ「昨日、帰るときに偶然な。はっちゃん、柿、好きだったろ?」
はっちゃん「いいよいいよ。せっかくの果物なんだから、モンタくんが食べなよ」
モンタ「おいおい。辛いことも楽しいことも半分こっこじゃねーのかよ?」
はっちゃん「……ありがとう。じゃあ、もらうね」
モンタ「あれ? 今、食わないのか?」
はっちゃん「家で少しずつ、味わって食べたいんだ」
モンタ「そっか。はっちゃんらしいな」
場面転換。
フクロウの鳴き声。
ざくざくと土を掘る音。
はっちゃん「よし! この穴に柿を入れて、埋めるっと。ふふふっ。立派に育ってね」
場面転換。
水を流すはっちゃん。
はっちゃん「早く芽を出せ、柿の種。早く出さないと、ハサミでちょん切るぞ!」
場面転換。
水を流すはっちゃん。
はっちゃん「ふふふ。早く木になれ、柿の種。早くならないと、ハサミで切っちゃうぞ!」
場面転換。
はっちゃん「はあ……」
モンタ「最近、疲れてるみたいだけど、どうかしたのか?」
はっちゃん「う、ううん! 何でもない」
場面転換。
風がビュービュー吹いている。
はっちゃん「僕が一晩中、君を守ってあげるからね。だから、台風に負けちゃダメだよ、柿の苗」
場面転換。
盛大なくしゃみをするはっちゃん。
モンタ「大丈夫か、はっちゃん」
はっちゃん「風邪ひいたみたい。今日は帰ってねるね」
モンタ「……わかった。無理するなよ」
場面転換。
ごほごほと咳をするはっちゃん。
はっちゃん「ふふふ。もうすぐだ。もうすぐ、実が成るはずなんだ……」
バタンと倒れるはっちゃん。
バンと扉を開くモンタ。
モンタ「はっちゃん! 大丈夫か!」
はっちゃん「ああ、モンタくん。大丈夫だよ。ただの風邪だってさ」
モンタ「ビックリさせるなよ。急に倒れたって聞いたからさー」
はっちゃん「ごめんごめん。でもね、驚くのはこれからだよ」
モンタ「ん? どういうことだ?」
はっちゃん「ちょっとついてきて」
場面転換。
モンタ「うわー! すげー!」
はっちゃん「ふふふ。驚いた? 柿の木だよ」
モンタ「もしかして、最近、疲れてたのは、これを育ててたからか?」
はっちゃん「えへへへ。そう。でね、そろそろ実がなる頃だと思うんだ。僕、木に登れないからさ、モンタくんに取ってきてもらおうと思って」
モンタ「お安い御用だ。一個でいいか?」
はっちゃん「ううん。二個取ってきて。僕とモンタくんの分」
モンタ「何言ってんだよ、これ、はっちゃんが育てた柿の木だろ?」
はっちゃん「辛いことも楽しいことも、半分こっこだよ」
モンタ「……はっちゃん。わかった、じゃあ、行ってくるぜ」
モンタが木に登る。
はっちゃん「どう? 柿、成ってる?」
モンタ「おう、たくさん成ってる……」
はっちゃん「どうしたの?」
モンタ「うめえ! この柿最高!」
はっちゃん「ええ! 食べちゃったの!」
モンタ「うめえ! うめえ! こりゃ最高!」
はっちゃん「モンタくん! 一緒に食べようって約束じゃないか!」
モンタ「うっせえ! こんなに美味いんだ! 全部俺が食う!」
はっちゃん「ひどいよ! そんなの、酷いよ!」
モンタ「うっせえ! お前はこの渋柿でも食ってろ!」
モンタがはっちゃんに柿を投げる。
その柿がはっちゃんに当たる。
はっちゃん「ああっ! うーん……」
はっちゃんが倒れる。
場面転換。
臼「はっちゃん。話は全部聞いたよ。俺たちが、モンタを懲らしめてやる」
はっちゃん「う、うう……。僕、せっかくモンタくんの為に、頑張ったのに……」
栗「大丈夫。はっちゃんの仇はちゃーんと取ってやるからさ」
はっちゃん「ありがとう……」
場面転換。
フクロウが鳴いている。
はっちゃん「……」
そこに長老がやってくる。
長老「八よ。モンタのやつは、臼たちが懲らしめてくれたみたいだぞ。しばらくは、怪我で動けないだろう」
はっちゃん「……そうですか」
長老「嬉しくないのか?」
はっちゃん「長老様、不思議なんです。モンタくんが、どうしてあんなことしたのか」
長老「……」
はっちゃん「モンタくんが僕を裏切るなんて……。うう……僕はただ、モンタくんと一緒に柿が食べたかっただけなのに……」
長老「柿? 八よ、柿はな……」
場面転換。
必死に走るはっちゃん。
ガラッと扉を開けるはっちゃん。
はっちゃん「モンタくん!」
モンタ「はっちゃんか。なんだ? 怪我した俺を笑いに来たのか?」
はっちゃん「ごめん!」
モンタ「ああん? なんだ、急に?」
はっちゃん「僕、知らなかったんだ! モンタくんが僕の為に、あんなことしてくれたって。なのに、僕は……」
モンタ「な、なんのことだよ……」
はっちゃん「あの柿、全部、渋柿だったんでしょ?」
モンタ「……」
はっちゃん「長老様に聞いたんだ。柿の実がちゃんと成るには、時間がかかるって」
モンタ「違う。全部、美味しい柿だった」
はっちゃん「モンタくん……。ごめん。辛いことも半分こっこって言ったのに……。モンタくんに全部、背負わせちゃった」
モンタ「……はっちゃん」
はっちゃん「ごめんね、モンタくん。君を信じれなくて……。友達失格だよね」
モンタ「そうだな」
はっちゃん「……」
モンタ「だから、柿で手を打ってやる」
はっちゃん「え?」
モンタ「来年、ちゃんと柿を分けてくれたら許す。もちろん、食べるのは、二人で、だ」
はっちゃん「モンタくん……」
モンタ「あともう一つ! 今度は俺にも柿の世話を手伝わせろ!」
はっちゃん「で、でも……」
モンタ「いつもお前が言ってるだろ。嬉しいことも辛いことも半分こっこだって」
はっちゃん「う、うん!」
ナレーション「こうして、サルとカニの喧嘩は終わり、その後は仲良く暮らしましたとさ。めでたしめでたし」
終わり
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