【声劇台本】西田家の受難 アウトドアの恐怖
- 2020.10.25
- ボイスドラマ(10分)
◆シリーズ一覧
<シュークリーム事件> <西田怪談> <留年未遂事件> <幼馴染の謎の行動>
■概要
人数:5人
時間:10分程度
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
西田 正志(17) 長男
西田 清 (17) 二男・正志の双子の弟
西田 総士(14) 三男
西田 隆 (5) 末っ子
ミラ (3) 猫
■台本
正志(N)「今年はまあ、色々あって夏休みは大人しく家でずっと過ごした。仕方がないことだしてとしても、家の中にずっといるというのはストレスが溜まるものだ」
清「正兄ぃ、毎年、夏休みでも家から出ないじゃん」
正志「清、心の声を読むのは止めろ」
清「で、なに? 今度は何を企んでるの?」
正志「企んでるとか、人聞きの悪い言い方するな。いや、考えてみたらさ、今年ってなにもしてなかったなーって思ってさ」
清「いつものことじゃない?」
正志「うるさいな……。とにかく、今年こそはなんか思い出を作りたいんだよ! せっかくの連休なんだからさ。隆もそう思うよな?」
隆「え? なーに?」
正志「隆も、どこか遊びに行きたいよな?」
隆「いきたーい!」
総士「兄貴の悪だくみに隆を巻き込むなよ」
正志「総士、お前まで……。いやいや、みんな聞いてくれ。せっかくの休みなのに、ダラダラと家の中で過ごしてていいのか?」
清「いいのかって言われてもな……」
正志「そこで俺は考えた。キャンプをしよう!」
清・総士「は?」
地面にくさびを打ち込む音。
正志「ふう。よし、テント、設営完了だ!」
ミラ「にゃーん!」
正志「おい、ミラ! テントで爪を研ぐなよ! おい、隆、ミラを頼む」
隆「はーい!」
総士「なあ、兄貴、ホントに飯って、鍋で作るのか? 飯くらい炊飯器でよくね?」
正志「ダメだ! キャンプっぽくないだろ!」
清「とかいいながら、正兄ぃ、鍋での炊き方知ってんの?」
正志「清。お前をご飯係に任命する!」
清「はいはい……」
総士「それにしても、まさかきよ兄ぃも付き合うなんて思わなかったな」
清「まあ、暇だからね。家でダラダラ過ごすのも時間が勿体ないっていうのもあるし」
正志「よーし! 俺はカレーを作るか。キャンプと言ったら、カレーだよな!」
総士「いや、キャンプと言ったら、焼き肉じゃね?」
正志「……肉買う金ねーだろ。ってことで、カレーだ」
清「総士、手伝ってやってくれ」
総士「え? けど、俺、作り方知らねーよ」
清「ネットで調べろ。いいか! 絶対に、そのレシピ通りに作るんだぞ! 正兄ぃがアレンジしようとしたら、必ず止めるのが、お前の仕事だ」
総士「わ、わかった」
清「頼んだぞ、今日の晩飯はお前にかかってると言って過言じゃないからな」
遠くから、子供の声がする。
子供「ねえ、あーそーぼー」
正志「ちっ! せっかくのキャンプなのに、台無しだな……」
清「まあ、いくら穴場だって言っても、他に人はいるもんだよ。……逆に、こんなときだから、穴場の方が人気なんじゃない?」
正志「おお!」
総士「さすが、きよ兄ぃ」
子供「あーそーぼー」
正志「隆、遊んでやれ」
隆「えー、ボクもキャンプしたーい」
正志「大丈夫だ。夜になったら、嫌でも参加することになるんだからな」
隆「ぶう……」
清「隆、すまんが、頼む」
隆「はぁーい……」
隆が歩いて行く。
総士「兄貴、火、着いたぜ」
正志「おお! 総士、でかした。さっそく、カレー作るぞ」
少しの間。
カレーを食べる4人。
正志「うまい!」
総士「なんでだろうな。外で食べてるってだけで、なんかうまく感じる」
隆「ボク、カレーだいすきー」
清「初めて鍋で炊いたけど、うまくいくもんだな」
正志「これぞ、キャンプって感じだよなー。どうだ? 俺の提案も、たまにはいいもんだろ?」
総士「うう……悔しいが同意だ」
清「右に同じく……」
正志「にしても、ちょっと暗いな……」
清「まあ、電気がないからね。自然の中なら、これが当然だよ」
正志「そっか。でも、その代わり、星がいつもよりきれいに見えるな」
総士「あ、それ、俺も思った」
正志「自然っていいな。キャンプ、最高!」
少しの間。
正志「おい……。総士、キャンプなのに、スマホすんなよ。気分、台無しだろ」
総士「いや、暇なんだよ、することないし」
正志「自然を楽しめよ。星が綺麗とかさっき言ってただろ」
総士「一時間も見てりゃ、さすがに飽きる」
隆「ふぁー」
清「隆、そろそろ眠いのか?」
隆「う、うん……」
清「よし、じゃあ、寝るか」
正志「俺たちも寝るか」
総士「早くね?」
正志「することないなら、寝るしかないだろ」
テントの入り口のチャックを閉める。
正志「よし、これで準備オッケーだな」
総士「なあ、ここで四人は狭くないか?」
隆「はっくょっ!」
清「隆、寒いのか?」
隆「う、うん……」
清「寝袋だけだとさすがに寒いか。……もう秋だしな。正兄ぃ。俺、隆を連れて戻るわ」
正志「は? ここに来て帰るとか、あり得んだろ! キャンプは寝るのも楽しいのに!」
清「隆が風邪ひいたらどうするんだよ」
正志「うっ!」
清「さ、隆、帰るよ」
隆「ええー。ボク、ここで寝たい」
清「大丈夫だ。また明日の朝、来よう。な?」
隆「う、うん……わかった」
清「じゃあ、俺たち、先に帰るから。二人もあまり無理するなよ」
正志「ああ……」
少しの間。
総士「なあ、兄貴。起きてる?」
正志「ああ……」
総士「やっぱ、寝れないな」
正志「だな。総士、怖い話でもしろよ」
総士「いや、なんで怖い話なんだよ」
正志「夏と言えば、怖い話だろ」
総士「今、秋だよ……」
正志「いいから、しろよ」
総士「……ネットで読んだ話なんだけど、俺たちみたいに季節外れに一人でキャンプしてた時の話」
正志「おお、いいな。この状況にピッタリだ」
総士「やっぱり、その人も夜にすることがなくなって、早めに寝ようとしてたんだって。けど、眠れなくて、テントの中で何度も寝がえりしてたら、テントの外で何かが動く気配がするのに気付いたんだ」
正志「……それで?」
総士「山奥だったから、他に人もいないはずだったから、おかしいなって思ったんだ。よくよく観察してたら、その何かは、テントの周りをグルグルと回ってるみたいなんだ。まるで、中にいる人間を値踏みするように」
正志「……」
総士「その人は、外に出て確かめようかと思ったらしいんだけど、何か嫌な感じがしたらしい。出たらヤバいって。それは影がどうみても人間でも動物でもなかったって。妖怪かなにかにしか見えなかったって」
正志「(唾を飲み込み)で?」
総士「そして、寝たらヤバいとも感じたらしい。だから、必死で寝ないようにしてたんだ。そしたら……」
外でガサっと音がする。
正志「お、おい! 今のなんの音だ?」
総士「きよ兄ぃが戻ってきた、とか?」
正志「清か?」
また、ガサっと音がする。
正志「ひいぃ!」
総士「正兄ぃ。ちょっと、外見てきてよ」
正志「お前が行け!」
総士「ここは長男の仕事だろ!」
ガサっと音がする。
総士「ひぃい!」
正志「お、おい、総士。結局、その人、どうなったんだ?」
総士「息をひそめて、朝までずっと起きてたって。朝になったらいなくなったらしい」
正志「……俺たちもその作戦でいこう」
総士「ああ……」
少しの間。
雀の鳴く声。
正志「(寝息)」
総士「(寝息)」
テントのチャックが開く音。
清「おはよう」
正志・総士「うわああー!」
清「な、なに! 急にでかい声出して?」
正志「……そ、外になにかいなかったか?」
清「外に? いや……ミラくらいしかいないけど」
ミラ「にゃー」
正志「おい……総士。まさか……」
総士「ああ。完全にミラの存在を忘れてた」
清「それより、正兄ぃ。どう? 家の中庭で一晩、キャンプした感想は」
正志「……疲れた」
総士「同じく……」
正志(N)「やっぱり、俺にはこういうアウトドアは似合わない。家で大人しくしてるのが一番だな」
終わり
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