【声劇台本】ウサ耳メイドにご注意を! 1話
- 2020.10.25
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人
時間:10分程度
■ジャンル
ボイスドラマ、異世界、コメディ
■キャスト
宇佐美 冥土
宮下 鏡花
天使
店長
その他
■台本
男「はあ、はあ、はあ」
男が路地裏を走っている。
男「(立ち止まって)くそ、行き止まりか!」
冥土がやってくる。
冥土「諦めろ。貴様を強盗の容疑で逮捕する」
時間経過。
警察署内を歩いている冥土。
そこに鏡花がやってくる。
鏡花「宇佐美くん。また、お手柄だったみたいね」
冥土「あ、鏡花さん」
鏡花「管内で長年追ってた、窃盗団を一網打尽なんて、快挙じゃない」
冥土「……単に運が良かっただけだ」
鏡花「謙虚なのはいいけど……。でも、その後の表彰式をサボったのはいただけないわね。また出世を逃すわよ」
冥土「……出世は興味ないんでね」
鏡花「はあー。勿体ないわね。能力が高い上に、キャリア組で、実績も多くあげてきてるのに、本人に出世欲がないなんて」
冥土「……だから、手柄は鏡花さんにやるって言ったんだ」
鏡花「何言ってるのよ。他人の評価で上に行っても、なんも面白くないじゃない」
冥土「鏡花さんらしいな」
鏡花「あとさあ、宇佐美くん。もう少し愛想よくしたら? せっかくのイケメンが台無しよ。へらへらしろとは言わないけど、もう少し、感情を表に出したら?」
冥土「そういうの性に合わないんで」
鏡花「せっかく、メイドって可愛い名前なのに。ほら、笑ってみなさい」
冥土「全然、可愛くない……。冥土の土産の冥土だ。なんでこんな名前にしたのか、親の頭を疑う」
鏡花「とにかく、手柄をあげたなら、ちゃんと表彰も受けること! 上にも下にも敵を作るわよ」
冥土「はあー……。面倒だな」
鏡花「あと、もう少し愛想よくする! 警察は市民の味方でもあるんだからね!」
冥土「……もっと面倒だ」
街中を歩く冥土。
ビルの中に入っていく。
冥土「愛想よく……か。どちらかというと、俺は愛想よくするんじゃなくて……」
ドアを開ける冥土。
メイド「おかえりなさい、ご主人様!」
メイドが出迎えてくれる。
冥土「愛想よくされる方が合っている」
場面展開。
メイド「宇佐美様、何になさいますか?」
冥土「いつもので」
メイド「はい! 喜んで!」
冥土「ふっ……」
冥土(N)「この空間は本当に癒される。荒んだ世界に生きる俺にとっては特に……」
回想。
鏡花「せっかく、メイドって可愛い名前なのに。ほら、笑ってみなさい」
冥土(N)「昔から親の期待が大きかったせいか、勉強漬けで真面目に生きてきた。そして、警察官になってからは、人を癒すどころか、追い詰め、捕まえてきた。そんな生き方をもう二十年以上続けてきたんだ。今更、愛想よくって言われても……どうすればいいのか、正直わからない。もし、違う生き方だったのなら……」
メイド「お待たせしました! 萌え萌えランチセットです!」
冥土(N)「この子たちのように、人を癒す側になれたんだろうか……」
場面展開。
メイド「行ってらっしゃいませー。またのお帰りをお待ちしてますー」
冥土が店から出て、歩き始める。
男2「おい、お前、宇佐美だな? 悪いが死んでもらうぞ」
銃を構える男2.
冥土「……人に恨まれることに思い当たることが多すぎて、どれのことかわからんな」
男2「お前が兄貴を捕まえたせいで、せっかく作り上げた組織は崩壊だ! あれだけの窃盗団、作り上げるのに、どれだけ苦労したか、わかってるのか!」
冥土「随分と身勝手な話だ。今度は兄貴とやらと一緒に、刑務所生活に苦労するんだな」
男2「く、来るな!」
冥土「お前の方から来ておいて、来るな、か。とことん身勝手だな」
男2「うわー!」
バンと銃声が響き渡る。
冥土「うっ! 撃ちやがった……。ん? 当たらなかった、のか?」
天使「いえ。当たりも当たり。大当たりで即死でしたよ」
冥土「……変わったコスプレだな。どこの店の子だ?」
天使「いえいえ。コスプレじゃないですよ。本物の天使でーす!」
冥土「ここはどこだ? 病院には見えないんだが」
天使「えーっとですね。天国と地獄の間で、時空の狭間でもあります」
冥土「……俺は死んだのか?」
天使「あれ? 理解が早いですね。もっと慌てるかと思いました」
冥土「何もない空間に、天使の格好の人がいたら、なんとなくな。銃で撃たれた後だし」
天使「理解してくれて助かりますー。説明する手間が省けました」
冥土「で? わざわざ、天使が、死んだ人間に何の用だ? 転生でもさせてくれるのか?」
天使「あれー? 意外ですー。そういうこと、知ってるんですねー。そういうのとは縁遠いような雰囲気ですけどー」
冥土「ああ。お気に入りのメイドが、そういう小説とか漫画とかが好きらしくてな。色々と話を聞いてるうちに詳しくなったんだ」
天使「へー。なるほどですー。ますます、説明しなくて済むので、助かります―」
冥土「……ってことは」
天使「はいー! おっしゃる通り、宇佐美さんは転生できますよー」
冥土「死んだら、誰でもできるものなのか?」
天使「いえいえー。宇佐美さんは徳の低い人間……つまり、悪人をたくさん捕まえたので、転生ポイントに到達しましたー。いいことするというのは、大事ですよねー」
冥土「……なるほどな」
天使「それで転生できるんですが、何か、希望とかありますか?」
冥土「条件を出せるのか? どんな条件があるんだ?」
天使「えーとー。説明するの面倒なので、とりあえず、言ってみてくださいー。それに対して、可能かどうか答えますのでー」
冥土「……転生ってことは、俺は違う人間になるってことだよな?」
天使「はいー」
冥土「例えば、転生後の職業を選ぶことは可能か?」
天使「できますよー」
冥土「……じゃ、じゃあ、その……メイドになりたい……」
天使「そんなんでいいんですかー? 金持ちになりたいとか、すごい能力を得たいとかじゃなくてですかー?」
冥土「ああ。……今度の人生は……人を傷つけるんじゃなくて、癒す側になりたい……」
天使「わかりましたー。では、宇佐美さんがいたところと似た世界にしますねー」
冥土「助かる」
天使「はいー! では、行ってらっしゃいませー」
場面転換。
店長「君のことは、天使様から聞いてますよ。さっそく、今日からこのお店で働いてもらいますね」
冥土「……」
店長「ああ、天使様のことをなぜ知ってるかってことですか? 天使様は割とこの世界に転生者を送ることが多いんですよ。なので、割と接することが多いんです」
冥土「……」
店長「わかっているかと思いますが、今回、君の記憶はリセットされてないようです。で、このお店で働けるようにってことで、年齢もそれに合った年齢になっています。天使様のいう話だと、8歳くらい若返った感じですかね」
冥土「……」
店長「あ、そんなに緊張しなくていいですよ。お仕事はゆっくりと覚えていけばいいですから。今日は体験入店って感じでいいですよ」
冥土「……」
店長「あ、そのうさぎ耳ですか? 天使様がサービスでつけてくれたみたいですよ。メイドに合うようにって。なので、君は獣人になったって感じですね。たぶん、そのうさぎ耳以外は人と変わらないとは思いますが」
冥土「……」
店長「それじゃ、さっそく、お店に出てみましょう」
場面転換。
カランカランとドアが開き客が入ってくる。
店長「おかえりなさい、ご主人様!」
冥土「……」
店長「ほら、君も」
冥土「……い、いらっしゃいませ、ご主人様」
店長「うーん。まだ、固い感じがするけど、これから慣れていけばいいからね」
冥土「……っていうか」
冥土(N)「男のままかよ」
終わり
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