【シナリオ】魔王と勇者は忙しい
- 2019.04.18
- ボイスドラマ(10分)
■概要
主要人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、コメディ
■キャスト
グドラス 魔族総司令
魔王・勇者
ソフィア 魔王の憧れの人間
その他
■台本
グドラスが部屋に入ってくる。
そして、立ち止まる。
グドラス「魔王様。ご命令通り、人間どもの町、ホープスへの侵略準備ができました」
魔王「ご苦労だったな。魔族総司令グドラスよ。では、侵略のプランを聞かせてもらおう」
グドラス「はっ! まずは人間どもが逃げられぬよう、周りを魔物たちで囲みます。その後……」
ホープスの町。
人間たちが道を行き交い、賑わっている。
そんな賑わう道を、ソフィア(17)が歩く。
男1「やあ、ソフィアちゃん。買物かい?」
ソフィア「ええ。今日は孤児院で子供たちの合同の誕生日会があるの」
男1「へえ、そりゃ準備も大変そうだ。よし、じゃあ、リンゴ三十個、孤児院に届けておくよ。俺からの誕生日祝いだ」
ソフィア「そんなっ! 悪いですよ。お金払います」
男1「いや、いいんだよ。その代り、今度はゆっくりうちの店に寄ってくれ」
ソフィア「ありがとうございます! それではお言葉に甘えさせていただきますね」
男1「いやあ、ソフィアちゃんのその笑顔が見れただけで、十分だよ」
ソフィア「(照れて)そんな、からかわないでください。それじゃ、今度はゆっくり寄らせてもらいますね」
ソフィアが歩き出す。
少し歩くと、また声をかけられる。
男2「やあ、ソフィアちゃん。そんなに急いで、どこに行くんだい?」
ソフィア「こんにちは。今日は孤児院で誕生会があるんです」
男2「へえ、そりゃいいね。じゃあ、何かプレゼントでも用意しようかな」
ソフィア「そ、そんな! 悪いですよ!」
男2「いやあ、いいんだよ。その代り、今度、一緒にどこかに……」
その時、悲鳴が聞こえ、街中が大騒ぎになる。
男3「みんな、逃げろー! 魔物だ! 魔物が攻めてきたぞー!」
ソフィア「魔物? そんなっ!」
男2「あわわわ!」
ソフィア「いけない! 子供たちを避難させなくっちゃ」
ドスンドスンと足音を立てて、巨大な魔物、サイクロップスが現れる。
男2「ひええ! さ、サイクロップスだ! ソフィアちゃん、逃げるんだ!」
サイクロップスの脇をバサバサと飛ぶグドラス。
グドラス「サイクロップス、止まれ。どうやら、その娘が狙いのソフィアという人間だ」
ソフィア「……え?」
グドラス「娘。我々と一緒に来てもらうぞ」
ソフィア「どうして私を?」
グドラス「答える義理はない。サイクロップス、その娘を捕まえろ。握り潰すなよ」
サイクロップスが咆哮を上げて、ソフィアに手を伸ばす。
だが、サイクロップスが攻撃され、大きな音を立てて倒れる。
グドラス「サイクロップスを吹き飛ばしただと? 何者だ?」
勇者「ふふ……。何者だ、だと? 愚問だな。この勇者、ジークフリード、魔物ごときに名乗る名などない!」
グドラス「……な、なんだかよくわからないが、我々魔族に逆らうなど失笑だな。命を取られる前に消えるがよい」
勇者「ふん。それはこちらの台詞だ。俺にボコボコにされる前に、尻尾を巻いて逃げた方が賢明だぞ。……おっと、本当に逃げるなよ。ソフィアちゃんに格好いい姿を見せるんだからな」
ソフィア「……え?」
グドラス「どうやら、馬鹿は死ななくては治らないらしい。いいだろう。地獄で後悔しろ、小僧!」
グロラスが魔法を唱えるが、勇者があっさりと弾く。
グドラス「ば、馬鹿な……。魔族総司令である私の魔法を弾き返しただと?」
勇者「それじゃ、今度はこっちから行くぜ。闇を切り裂く、闇の力を思い知るがいい」
グドラス「くっ!」
勇者「くらえっ! スーパーダークネスグレイテストファングファイナルストラッシュ!」
グドラス「ぐあああああああ!」
グドラスが吹き飛ばされる。
ソフィア「……すごい」
グドラス「く、くそ……。貴様、本当に何者だ? この力は……一体、どういうことだ?」
勇者「ふん。何度も言わせるなよ。この勇者、サイラス、魔物に名乗る名はない」
グドラス「こんなふざけた奴にやられるとは……。勇者とやら、今度会ったときは八つ裂きにしてくれる。覚えていろ!」
グドラスが飛び去っていく。
勇者「ふふっ! ソフィア嬢、怪我はしてないかい?」
ソフィア「ありがとうございます!」
勇者「はわわわわわわっ!」
ソフィア「助けていただいて、感謝します。お礼をさせてください。そうだ! うちに来てくれませんか? ささやかですけど、何かお礼を……」
勇者「あわわわ! い、いきなり家にご招待? これは急展開! そんなシチュエーション、想定してなかったぞ!」
ソフィア「あの……勇者様?」
勇者「は、はい! あの……その、ま、まずはお友達からお願いします!」
ソフィア「は、はあ……」
勇者「えっと、あの……今度、デートしてください!」
そう言うと同時に、勇者が走り出す。
ソフィア「待ってください! お名前だけでも」
勇者「僕は、まお……マオルですぅー!」
走り去っていく勇者。
グドラスが部屋に入ってくる。
そして、立ち止まる。
グドラス「申し訳ございません、魔王様。侵略は失敗いたしました」
魔王「……何があった?」
グドラス「勇者と名乗る、変な格好をした奴に邪魔されました……」
魔王「いや、格好いいだろっ!」
グドラス「……は?」
魔王「いや、なんでもない。それより、魔族総司令ともあろう、貴様が退けられるとは……」
グドラス「あんな、間抜けな技名にやられるなんて、一生の不覚です……」
魔王「お前、減給な」
グドラス「え?」
魔王「魔族総司令グドラスよ。次の襲撃の準備を開始するのだ」
グドラス「御意。それでは、失礼いたします」
魔王「待て、グドラスよ。貴様に一つ、頼みたいことがある」
グドラス「なんでございましょう?」
魔王「人間たちを征服するためには、我々はもう少し人間に対して知らなければならない」
グドラス「……敵を知れば、百戦怪しからず、でございますね」
魔王「そうだ。だから、人間の調査を命令する」
グドラス「承知いたしました。……では、人間を浚い、様々な実験を……」
魔王「そうではない! 知るべきは人間の生態ではなく、感情だ。感情は実験で得られるものではない」
グドラス「では、どのように?」
魔王「人間のことは人間から知る。書物だ。人間が書した書物を手に入れてもらいたい」
グドラス「なるほど。さすが魔王様」
魔王「これから言うタイトルの本だ。間違えるなよ」
グドラス「御意。して、なんというタイトルでしょうか?」
魔王「『ドキドキ、女の子のデートの誘い方』だ」
グドラス「……」
魔王「さあ、行け! 魔族総司令グドラスよ!」
グドラス「ぎょ、御意……」
グドラスが部屋から出て行く。
魔王「くくくく……ははははは! 待っててね、ソフィアちゃん! 必ず君と付き合って見せるからね!」
終わり
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