【声劇台本】いきなりラストバトル9

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■関連シナリオ
〈僕は結婚したくない〉

■概要
人数:4人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、学園、ファンタジー、コメディ

■キャスト
蓮(れん)
茉奈(まな)
千金良 イノリ(ちぎら いのり)
青手木 シオ(あおてぎ しお)

■台本

蓮「ぐっ……」

バタリと倒れる蓮。

蓮「バカな……。毒だと……? いや、あり得ない。じゃあ、どうやって……? うう……ダメだ。意識が遠のく……。ここまでか」

蓮(N)「薄れていく意識の中で、どうしてこうなったかをぼんやりと考える。それはほんの2時間前の出来事から始まったんだ」

学校のチャイムが鳴る。

下校する生徒たち。

茉奈「じゃあ、蓮ちょん。あとから晩御飯作りに行くね」

蓮「ああ。なんで、当然かのように言ってるのかわからねえけど、お断りだ」

茉奈「やっぱりさー、寒くなってきたから鍋がいいかな?」

蓮「頼むから、俺の話を聞いてくれ」

茉奈「私はバナナときゅうり買っていくから、蓮ちょんは牛乳とキムチを用意しておいてね」

蓮「……鍋って言ったよな?」

茉奈「ふふふ。鍋パーティ、楽しみだなー。じゃねー」

茉奈が走り去っていく。

蓮「……闇鍋でもする気か? まあ、キムチって言ってたから、キムチ鍋の用意でもしておくか……」

場面転換。

自動ドアが開き、スーパーから蓮が出てくる。

蓮「……しまった。買い過ぎたな。残り125円はさすがにヤバいか? まあ、今月は残り物でなんとかするしかないな」

トボトボと蓮が歩いていると、イノリが走ってくる。

イノリ「青手木、今日だけはダメだ! 諦めてくれ」

シオ「私がイノリさんのことで諦めるのは、人生を諦めたときだけです」

イノリ「重すぎる! いや、別に食べないって言ってるわけじゃない! 明日に……」

蓮「ん?」

イノリ「あっ!」

ドンと蓮とイノリがぶつかり、蓮が持っていた買い物袋が散らばる。

イノリ「あ、ごめん……」

蓮「あ、いえ。こっちもよそ見してたのが悪かったです」

シオ「早く拾った方がいいと思う」

蓮「え?」

車が通り、買ったものを潰していく。

蓮「あああーー! 食料がーー」

場面転換。

蓮「……すいません。お茶しかなくて」

イノリ「ああ、いや、気にしないで。こっちが悪いんだし」

シオ「(お茶をすすって)……薄い」

イノリ「青手木、お前が味について意見をするな。味がついた液体が出た時点で感謝するべきだ!」

蓮「あの……ホント、弁償とかいいですから」

イノリ「いや、食べ物をダメにしてしまった絶望感は、僕も痛いほどわかる。本当は弁償させてもらいたいんだけど、あいにく、僕は貧乏なんだ!」

蓮「いや、胸を張られても……」

イノリ「だから、なにか、労働で償わせてほしい。家事なら自信あるんだ」

シオ「私もお手伝いします」

イノリ「頼むから止めてくれ。償うどころか、損害が増すだけだ」

蓮「そう言われても……別に家事で困ってることはないですし……」

イノリ「えっと、なんでもいいんだけど……。例えば宿題を代わりにやるとか」

シオ「イノリさんがやると、間違いが多くて、この人が逆に怒られることになると思いますが」

イノリ「……ですよね」

蓮「いや、ホントに気にしないで……」

シオ「償ういい方法があります」

イノリ「なんだ?」

シオ「代わりの食事を用意すればいいんです」

ドンとお重をテーブルに置くシオ。

蓮「おお、美味しそう!」

シオ「よかったら、どうぞ。本来はイノリさんの為に作ったものだけど。イノリさんの罪は私の罪だから、私が償う」

蓮「じゃ、じゃあ……少しだけ……」

イノリ「はっ! ダメだ!」

バシッと蓮の手を叩くイノリ。

食べ物が床に落ちる。

シオ「イノリさん、食べてもらわないと、償いになりませんよ?」

イノリ「いや、これ以上、罪を重ねさせないでくれ」

蓮「え、えっと……」

イノリ「あ、ごめん。これはちゃんと食べるから」

蓮「いや、そうじゃなくて……」

床に落ちたものを食べるイノリ。

イノリ「あ、しまった。つい、反射で食べてしまった……。今日は月見里さんの手料理が食べられるから、極限の空腹で行くはずだったのに」

シオ「よかったら、残りもどうぞ」

イノリ「いやいや、なんか趣旨が変わってるぞ。……ってか、ヤバい! 約束の時間が! ごめん、君! 必ず何か償いをするから、今日はこれで失礼する」

シオ「私も行きます」

イノリ「なんでだよ!」

シオとイノリが蓮の家から出ていく。

蓮「……なんか、騒々しい人たちだったな。って、料理置いて行っちゃったな。どうしよう? 返しにいくにしても、家もわからないしな。……まあ、くれるって言ってくれたし、材料もダメになったし……」

ごくんと唾を飲む蓮。

蓮「すごく美味しそうだな。ちょっと、味目を……」

蓮がシオの料理を食べる。

蓮「ぐっ……」

バタリと倒れる蓮。

蓮(N)「というわけなのだが……やっぱり、不審な点はなかったはずだ。第一、あの人が食べたときはなんともなかった。それに落とした料理は俺がランダムで選んだものだから、あれだけ毒を抜くなんてことはできないはずだ。それに……一体、なんの目的で俺を狙う? まさか、あいつの刺客か? うう……ダメだ。本気で意識が……」

バンとドアが開く。

茉奈「蓮ちょん、イチャイチャしに来たよ!」

蓮「いや、なんでだよ……」

茉奈「あれ? なにしてんの?」

蓮「死にかけてる」

茉奈「え? マジで? どうすればいい? とりあえず、人工呼吸しとく?」

蓮「……救急車呼んでくれ」

蓮(N)「こうして、またしても茉奈のおかげで命拾いした。それにしても一体、なんだったんだ? この事件は今考えても謎が解けていない、迷宮入りの事件になったのだった」

終わり。

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