【声劇台本】いきなりラストバトル9
- 2020.12.16
- ボイスドラマ(10分)
■シリーズシナリオ
〈1話目へ〉 〈2話目へ〉 〈3話目へ〉 〈4話目へ〉
〈5話目へ〉 〈6話目へ〉 〈7話目へ〉 〈8話目へ〉
■関連シナリオ
〈僕は結婚したくない〉
■概要
人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、学園、ファンタジー、コメディ
■キャスト
蓮(れん)
茉奈(まな)
千金良 イノリ(ちぎら いのり)
青手木 シオ(あおてぎ しお)
■台本
蓮「ぐっ……」
バタリと倒れる蓮。
蓮「バカな……。毒だと……? いや、あり得ない。じゃあ、どうやって……? うう……ダメだ。意識が遠のく……。ここまでか」
蓮(N)「薄れていく意識の中で、どうしてこうなったかをぼんやりと考える。それはほんの2時間前の出来事から始まったんだ」
学校のチャイムが鳴る。
下校する生徒たち。
茉奈「じゃあ、蓮ちょん。あとから晩御飯作りに行くね」
蓮「ああ。なんで、当然かのように言ってるのかわからねえけど、お断りだ」
茉奈「やっぱりさー、寒くなってきたから鍋がいいかな?」
蓮「頼むから、俺の話を聞いてくれ」
茉奈「私はバナナときゅうり買っていくから、蓮ちょんは牛乳とキムチを用意しておいてね」
蓮「……鍋って言ったよな?」
茉奈「ふふふ。鍋パーティ、楽しみだなー。じゃねー」
茉奈が走り去っていく。
蓮「……闇鍋でもする気か? まあ、キムチって言ってたから、キムチ鍋の用意でもしておくか……」
場面転換。
自動ドアが開き、スーパーから蓮が出てくる。
蓮「……しまった。買い過ぎたな。残り125円はさすがにヤバいか? まあ、今月は残り物でなんとかするしかないな」
トボトボと蓮が歩いていると、イノリが走ってくる。
イノリ「青手木、今日だけはダメだ! 諦めてくれ」
シオ「私がイノリさんのことで諦めるのは、人生を諦めたときだけです」
イノリ「重すぎる! いや、別に食べないって言ってるわけじゃない! 明日に……」
蓮「ん?」
イノリ「あっ!」
ドンと蓮とイノリがぶつかり、蓮が持っていた買い物袋が散らばる。
イノリ「あ、ごめん……」
蓮「あ、いえ。こっちもよそ見してたのが悪かったです」
シオ「早く拾った方がいいと思う」
蓮「え?」
車が通り、買ったものを潰していく。
蓮「あああーー! 食料がーー」
場面転換。
蓮「……すいません。お茶しかなくて」
イノリ「ああ、いや、気にしないで。こっちが悪いんだし」
シオ「(お茶をすすって)……薄い」
イノリ「青手木、お前が味について意見をするな。味がついた液体が出た時点で感謝するべきだ!」
蓮「あの……ホント、弁償とかいいですから」
イノリ「いや、食べ物をダメにしてしまった絶望感は、僕も痛いほどわかる。本当は弁償させてもらいたいんだけど、あいにく、僕は貧乏なんだ!」
蓮「いや、胸を張られても……」
イノリ「だから、なにか、労働で償わせてほしい。家事なら自信あるんだ」
シオ「私もお手伝いします」
イノリ「頼むから止めてくれ。償うどころか、損害が増すだけだ」
蓮「そう言われても……別に家事で困ってることはないですし……」
イノリ「えっと、なんでもいいんだけど……。例えば宿題を代わりにやるとか」
シオ「イノリさんがやると、間違いが多くて、この人が逆に怒られることになると思いますが」
イノリ「……ですよね」
蓮「いや、ホントに気にしないで……」
シオ「償ういい方法があります」
イノリ「なんだ?」
シオ「代わりの食事を用意すればいいんです」
ドンとお重をテーブルに置くシオ。
蓮「おお、美味しそう!」
シオ「よかったら、どうぞ。本来はイノリさんの為に作ったものだけど。イノリさんの罪は私の罪だから、私が償う」
蓮「じゃ、じゃあ……少しだけ……」
イノリ「はっ! ダメだ!」
バシッと蓮の手を叩くイノリ。
食べ物が床に落ちる。
シオ「イノリさん、食べてもらわないと、償いになりませんよ?」
イノリ「いや、これ以上、罪を重ねさせないでくれ」
蓮「え、えっと……」
イノリ「あ、ごめん。これはちゃんと食べるから」
蓮「いや、そうじゃなくて……」
床に落ちたものを食べるイノリ。
イノリ「あ、しまった。つい、反射で食べてしまった……。今日は月見里さんの手料理が食べられるから、極限の空腹で行くはずだったのに」
シオ「よかったら、残りもどうぞ」
イノリ「いやいや、なんか趣旨が変わってるぞ。……ってか、ヤバい! 約束の時間が! ごめん、君! 必ず何か償いをするから、今日はこれで失礼する」
シオ「私も行きます」
イノリ「なんでだよ!」
シオとイノリが蓮の家から出ていく。
蓮「……なんか、騒々しい人たちだったな。って、料理置いて行っちゃったな。どうしよう? 返しにいくにしても、家もわからないしな。……まあ、くれるって言ってくれたし、材料もダメになったし……」
ごくんと唾を飲む蓮。
蓮「すごく美味しそうだな。ちょっと、味目を……」
蓮がシオの料理を食べる。
蓮「ぐっ……」
バタリと倒れる蓮。
蓮(N)「というわけなのだが……やっぱり、不審な点はなかったはずだ。第一、あの人が食べたときはなんともなかった。それに落とした料理は俺がランダムで選んだものだから、あれだけ毒を抜くなんてことはできないはずだ。それに……一体、なんの目的で俺を狙う? まさか、あいつの刺客か? うう……ダメだ。本気で意識が……」
バンとドアが開く。
茉奈「蓮ちょん、イチャイチャしに来たよ!」
蓮「いや、なんでだよ……」
茉奈「あれ? なにしてんの?」
蓮「死にかけてる」
茉奈「え? マジで? どうすればいい? とりあえず、人工呼吸しとく?」
蓮「……救急車呼んでくれ」
蓮(N)「こうして、またしても茉奈のおかげで命拾いした。それにしても一体、なんだったんだ? この事件は今考えても謎が解けていない、迷宮入りの事件になったのだった」
終わり。
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