【声劇台本】西田家の受難 クリスマスと不思議な旅
- 2020.12.24
- ボイスドラマ(10分)
◆シリーズ一覧
<シュークリーム事件> <西田怪談> <留年未遂事件>
<幼馴染の謎の行動> <アウトドアの恐怖> <ご馳走>
■概要
人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
西田 正志(17) 長男
高坂 陽菜(17)幼馴染
西田 清 (17) 二男・正志の双子の弟
西田 総士(14) 三男
■台本
正志と陽菜が並んで歩いている。
陽菜「ねえ、正志。そろそろクリスマスだね」
正志「あ? ああ、そういえばそうだな」
陽菜「クリスマスっていえば、何を連想する?」
正志「うーん。戦争かな」
陽菜「……なんでよ」
正志「いや、ほら、クリスマスってさ、いつもより晩飯が豪華になるだろ? 兄弟同士で取り合いになるんだよ。結構、流血沙汰になるんだよなぁ……」
陽菜「さ、殺伐としてるのね……」
正志「陽菜のとこは違うのか?」
陽菜「違うわよ。私ん家、兄弟いないし。それに、普通の家じゃ、クリスマスは楽しいイベントなのよ」
正志「ふーん」
陽菜「そ、それよりさ。クリスマスっていえば……ほら、恋人の日って感じがしない?」
正志「つってもなー。別に恋人いないし」
陽菜「だよね。それでさ、もし、私から何かプレゼントがもらえるって言ったら何がほしい?」
正志「んー? いいよ。プレゼントなんて。悪いし、プレゼントって年でもねーしさ」
陽菜「例えばよ、例えば。なんでも一つだけプレゼントを貰えるとしたら、何がいい? 年に一回だけのチャンスだよ?」
正志「そうだなぁ……」
陽菜「ごくり……」
正志「異世界転生してみたいな」
陽菜「は?」
正志「ほら、今、流行ってるみたいだぜ、異世界転生。俺が行くなら、近未来系がいいな。すげー科学とか発達してるとこがいいな」
陽菜「あんたバカなの?」
正志「今更なんだよ」
陽菜「そんなのプレゼントできるわけないじゃない! バカ!」
正志「いや、お前がなんでもいいって言ったんだろうが」
陽菜「話の流れを考えなさいよ! なんのための前フリをしたと思ってるのよ、バカ!」
正志「前フリってなんだっけ?」
陽菜「ここは普通、恋人が欲しいって言うところでしょ!」
正志「いいよ。悪いし」
陽菜「悪くない!」
正志「はあ……。異世界に行ってみてえなぁ。空飛ぶ車とか、最高だと思わねえ?」
陽菜「知らないわよ」
正志「何怒ってるんだよ……って、うお!」
ツルっと滑って、正志がひっくり返る。
そして、ゴンと頭を打ち付ける。
正志「痛ってー! なんでこんなところにバナナの皮が……って、あれ? 陽菜?」
ヒューっと頭上を何かが通過していく。
正志「ん? なんだ? って、うおっ! 車が空を飛んでる! それに、なんか道路も色々光ってるぞ! すげー、なんだここ! ……はっ! まさか、異世界に転生したのかっ!」
清「正兄ぃ、何やってんの、こんなとこで」
正志「ん? あれ? 清? お前もこっちの世界に転生したのか?」
清「……何言ってんの? さっさと帰るよ」
正志「お、おう……。(独り言)どういうことだ? もしかして、この世界の俺と入れ替わった系なのか?」
正志と清が歩く。
正志「なあ、清。お前は空飛ぶ車には乗らないのか?」
清「……いや、俺、まだ学生なんだけど」
正志「あ、そっか。……あっても乗れないんじゃ意味ねーな……」
場面転換。
ウィーンと自動ドアが開く。
正志「おお! 自動ドアだ! いいのか!? 家に自動ドアなんてつけていいのか! 贅沢すぎるだろ!」
清「……なに言ってんの? 早く入るよ」
正志「お、おう……」
バンと正志が見えない壁にぶつかる。
正志「うおっ! いてぇ! なんだ? 見えない壁があるぞ……?」
清「正兄ぃ。また、登録消しちゃったの? 何回やれば気が済むんだよ。ほら、もう一回、網膜登録しなよ」
正志「お、おう……」
ピピっと音がしてウィーンとドアが開く音。
正志「なんか、未来感があっていいな」
場面転換。
正志「なあ、総士。そろそろ、飯の準備しなくていいのか?」
総士「ん? ……まだ、飯の時間まで30分あるじゃん」
正志「いや、だから、そろそろ準備……って、お前、まさか晩飯手抜きをする気か! 許さんぞ! こっちに来て初めての飯なんだから、俺はかなり期待してるんだ」
総士「きよ兄ぃ。なんか、兄貴、変なんだけど」
清「いつもそんなんじゃないか」
総士「そうなんだけど、ウザ絡みしてくるんだよ」
清「早く食べたいってことじゃないの? 正兄ぃのだけ、用意してやったら?」
総士「面倒くせぇ」
場面転換。
正志「なんだ、この機械?」
総士「……なんの遊び? フードプロフェッサーだけど」
正志「どう使うんだ?」
総士「……はあ。ここに、素材の粉を入れて、料理を選択して、ボタンを押す。そうすれば、選んだ料理を作ってくれる。……これで満足?」
正志「すげーー! さっそくやってくれ」
総士「きよ兄ぃ。兄貴、キモイんだけど」
清「いつもだろ」
総士「まあ、そうなんだけどさー」
ピッとボタンを押す。
場面転換。
正志「なあ、総士。なんだこれ?」
総士「晩飯」
正志「ふざけんなー! なんだよ、ご飯に味噌汁に、卵に焼き魚って! 普通過ぎんだろー! もっと、こう! ステーキとか寿司とか、焼き肉とか、色々あるだろー」
総士「んな、高い素材あるわけねーだろ。食いたいなら、自分で素材買ってきなよ」
正志「むむむ……。異世界でも貧困の差別を受けることになるとは……」
正志(N)「それから一週間、この世界で過ごしたけど、正直言って、前の世界と何も変わらない生活だとわかった。まあ、ちょっとは珍しいものもあるけど、見慣れると感動も薄くなる。異世界って言っても、あんまり面白くないな……」
場面転換。
清「正兄ぃ、そろそろ起きなよ。昼飯冷めちゃうけど」
正志「ああ……今行く。ふぁーねむぃ。って、うお!」
ズルっと滑り、階段から転げ落ちる正志。
場面転換。
正志「いてて!」
陽菜「大丈夫?」
正志「あれ? 陽菜? って、まさか……戻ってきたのか?」
陽菜「何言ってるの? 頭でも打った?」
正志「ああ、二回程な。それより、陽菜。プレゼントは、異世界転生は無しだ。思ったより面白くなかった」
陽菜「……病院行く?」
正志「やっぱり、異世界より、過去に戻りたいな。過去に戻ってやり直したい」
陽菜「だから、プレゼントできるものにしなさいよ。例えば、彼女が欲しいとか」
正志「いいよ、悪いし」
陽菜「いいから、彼女が欲しいって言いなさい!」
正志「ちょ、待て! 押すなって……うわっ!」
再び転び、頭を打つ正志。
正志「あれ? ここって……」
陽菜「何ボーっとしてるの? 早く行くわよ」
正志「あ、ああ……。(つぶやくように)まさか……」
正志と陽菜が並んで歩いている。
陽菜「ねえ、正志。そろそろクリスマスだね」
正志「戻るって、10分前かよ!」
終わり。
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