【声劇台本】西田家の受難 暗闇の犯行
- 2021.07.05
- ボイスドラマ(10分)
■シリーズシナリオ
<シュークリーム事件> <西田怪談> <留年未遂事件>
<幼馴染の謎の行動> <アウトドアの恐怖> <ご馳走>
<クリスマスと不思議な旅> 〈初恋の約束〉 〈初夢とおみくじ〉
〈睡眠不足?〉 〈日本の変わった文化〉 〈休日の過ごし方〉
〈海水浴場〉
■概要
主要人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、日常系、コメディ
■キャスト
西田 正志(まさし)(17) 長男
西田 清 (きよし)(17) 二男・正志の双子の弟
西田 総士(そうし)(14) 三男
西田 隆 (たかし)(5) 末っ子
■台本
セミの鳴く声が響く。
場面転換。
正志の部屋。
正志がガバッと起き上がる。
正志「暑ぃ……」
場面転換。
ガチャリとドアを開け、正志がリビングに入って来る。
正志「ふあー(欠伸)」
清「あれ? 正兄ぃ。昼前なのに起きてくるなんて、珍しいね」
正志「暑くて、寝てらんねえ」
正志がリモコンのボタンをピッピッピと押す音と、エアコンのゴーっという音。
正志「あー、涼しい」
清「正兄(まさに)ぃ。温度下げ過ぎ」
正志「いいじゃねーか。もう少し涼んだら戻すって」
ガチャリとドアが開いて、総士が入って来る。
総士「ただいまーって、あれ? 兄貴、休みなのに、昼前に起きてるって珍しいな」
正志「……どいつもこいつも。それじゃ、俺が休みの日はダラダラ過ごしてるみてーじゃねーかよ」
清「実際、そうじゃないの?」
正志「……」
総士「あー、腹減った。きよ兄ぃ、飯って残ってる?」
清「ああ。冷蔵庫に昨日の残りのコロッケが入ってるはず」
総士「ん。じゃあ、レンジでチンして食うか」
正志「おいおい、総士。シャワー浴びてからにしろよ。汗くせーぞ」
総士「食ったら、浴びるって」
総士が歩いて冷蔵庫の前まで行き、開く。
総士「コロッケ、コロッケ……。あれ? ねえ、きよ兄ぃ。なんか、冷蔵庫にケーキあるんだけど?」
正志「え? マジで?」
清「今日の晩飯食った後に、みんなで食うって母さんが言ってたから、そのまま置いておいて」
総士「ほーい」
正志「あ、俺、先に食いたいな」
清「ダメだって。どうせ、先に食っておいて、後からみんなが食べてるの見て、ズルいとか子供みたいなこと言い出すんだから」
正志「……んなこと言わねーって」
清「とにかく、ダメなものはダメだって」
正志「ちぇっ!」
総士「えっと、コロッケは、と……あったあった」
総士が電子レンジのところへ歩く。
ガチャリとレンジを開けて、コロッケを入れる。
総士「2分、くらいでいいかな」
ピッピと操作して、温め開始のボタンを押す。
ブーンというレンジの温める音。
正志「あ、総士。ケトルでお湯沸かして。俺、カップ麺にする」
清「……正兄ぃ。暑いって言ってなかった?」
正志「エアコンがガンガン効いた中で食う、カップ麺が好きなんだよ」
清「……」
総士「ったく、自分でやれよ」
総士がケトルを持って、水を入れる。
そして、ケトルをセットして、スイッチを押す。
清「……あ、総士、ちょっと待って」
総士「え?」
バンと音がして、電子レンジとエアコンの音が消える。
総士「あれ? レンジ、止まった?」
清「……電気、使い過ぎ。ブレーカー落ちたんだよ」
正志「……」
場面転換。
隆「ごちそうさまでした!」
清「綺麗に食べれたな。偉いぞ、隆」
隆「えへへ」
正志「……じゃあ、ケーキ食おうか」
総士「俺、持ってくるよ」
正志「あ、いや、いい。俺が用意する」
総士「え? そう? じゃあ、よろしく」
正志「清、お前、甘いもの食べるときはコーヒー飲むんじゃないのか?」
清「ん? ああ、そうだね。お湯沸かすかな」
清が歩いて、ケトルを持って、水を入れる。
そして、ケトルをセットして、ボタンを押す。
正志「俺はホットミルクにしようかな。総士いれてくれ」
総士「ホットミルクって珍しいな。って、自分でやれよ」
正志「いいじゃねーか。あ、隆。エアコンの温度下げてくれ」
隆「はーい!」
隆がピッピッピっとリモコンを操作する。
総士が電子レンジを開けて、コップを入れ、温めのボタンを押す。
清「あ……」
バンとブレーカーが落ちる音。
隆「うわー! まっくら!」
場面転換。
清「……つまり、暗闇に乗じて、誰かがケーキを一個食べたってこと?」
正志「……そうなるな」
総士「どう考えても、兄貴でしょ。ケーキに一番近かったんだから」
正志「いや、ブレーカーを入れに行ったのは俺だぞ。逆にケーキの近くにいた時間は一番少ないっての」
総士「お、俺じゃないぞ!」
清「俺もそんな姑息なことはしないよ」
正志「隆のわけもないしな」
総士「……まさか、またミラか?」
正志「あ、そうかもな」
清「いや、それはあり得ない」
正志「なんでだよ?」
清「ミラがそんなにきれいに1個を食べきると思う? ミラが食べたなら、残骸が残ってるはずだよ」
総士「じゃあ、一体、誰が……?」
正志「まあ、いいじゃねーか。家族を疑うなんて、不毛なことは止めよーぜ」
清「……」
総士「けど、1個足りないんだぞ? 誰か食えなくなるけど、どうするんだ?」
正志「今回は俺が諦めるよ」
総士「え? 兄貴、何言ってんだよ? なんか変なもんでも食ったか?」
正志「いやいや。長男としては当たり前のことだって」
清「……」
総士「なんか、怪しいな」
正志「おいおい。いらないって言ってるんだぞ。怪しいも何もないだろ」
総士「そりゃそうだけど……」
正志「あ、そうだ。その代わり、みんなの一口ずつくれよ。それで、どうだ?」
総士「……まあ、一口なら」
清「待った」
正志「な、なんだよ?」
清「ケーキを食べた犯人は正兄ぃだ」
正志「な、な、何言ってんだよ! 俺は停電になってからすぐにブレーカーを入れにいったんだぞ! ケーキを食う時間はなかったって!」
清「……そう。そこが罠だったんだ」
総士「どういうこと?」
清「正兄ぃに、見事に誘導されたんだ。犯人は停電の時にケーキを食べたんだって、ね」
正志「……」
清「停電になる前。ケーキの数を確認した人間はいない。正兄ぃ以外は……ね」
総士「え?」
清「つまり、停電になる前にもう、ケーキを食べてたんだ。その証拠に、総士がケーキを用意すると言ったとき、正兄ぃが、自分でやると言い出した」
総士「……そういえば」
清「正兄ぃは、今日の昼前にブレーカーが落ちるのを見て、今回の犯行を思いついた」
正志「……」
清「改めて考えてみたら、ケトル、電子レンジ、エアコンをつけるように誘導したのは正兄ぃだ」
正志「うっ!」
総士「け、けど、なんで、そんなことを? さっき、兄貴も言ったように、兄貴はケーキを辞退したんだぜ?」
清「そこも、正兄ぃにしては巧妙だった。そうすることで、俺たちに今回の犯人じゃないと心理的に思わせたんだ」
正志「……」
清「だけど、本当の狙いは……一口を貰うこと」
総士「あっ!」
清「そう。既に1個食べた正兄ぃは、さらにみんなから一口を貰うことで得するんだ!」
正志「う、うう……」
清「どう? 俺の推理、間違ってる?」
総士「兄貴……。最低だな」
正志「うう……。うわー! ほんの、ほんの出来心だったんだー! 許してくれー!」
終わり。
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